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ヌートバー同様母への思いを胸に代表チームを変更したストローマンが狙う松坂大輔以来の快挙

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
母のためプエルトリコ代表に鞍替えしたマーカス・ストローマン投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ストローマン投手の好投でプエルトリコ代表が快勝】

 第5回WBCはプールAとプールBで日々熱戦が繰り広げられる中、現地時間の3月11日にマイアミとフェニックスで開催されるプールCおよびプールDも相次いで開幕した。

 先陣を切って行われたプエルトリコ代表対ニカラグア代表戦は、第3、4回大会で準優勝に輝いているプエルトリコ代表が9対1で快勝し、順調なスタートを切っている。

 大事な初戦の先発投手を託されたのは、前回大会では米国代表として出場しチームの初優勝に貢献したマーカス・ストローマン投手だ。球数制限ギリギリの65球を投げ、4.2イニングをフアン・モンテス選手に許したソロ本塁打のみの1安打1失点に抑える好投を演じている。

【前回大会同様選手全員が金髪にして意思統一】

 試合会場となったマーリンズの本拠地球場「ローンデポ・パーク」にはほぼ満員の3万5399人(収容数は3万6742人)が集結。両チームに熱い声援を送っている。

 悲願の初優勝を目指すプエルトリコ代表は前回大会から始まったチームの慣習を踏襲し、選手全員が金髪に染めて団結を深めている。今回は代表監督を務めるヤディアー・モリーナ氏も見事な金髪に染め上げている。

 またMLB公式サイトによると、選手たちに呼応して多くのファンも金髪にして応援に駆けつけたようで、AP電では192人のファンが金髪にしてプエルトリコ代表を応援したと報じている。

【史上3人目のチーム変更はヌートバー選手と同じ母への思い】

 さてストローマン投手は前述した通り、代表チームを変更して今大会に臨んでいる。

 MLB公式サイトで記録関連を専門に担当しているサラ・ラングス記者によれば、代表チームを変更してWBCに出場した選手は、ポール・ルトガーズ選手(オーストラリア代表と南アフリカ代表)、ブルース・チェン投手(パナマ代表と中国代表)に続き史上3人目だということだ。

 米国生まれ、米国育ちのストローマン投手が今回プエルトリコ代表に加わることができたのは、母親が同国出身だったためだ。そして同投手がプエルトリコ代表での出場を決めたのも、母への思いからだったようだ。

 ストローマン投手は米メディアに対し、以下のように話している。

 「母は自分にとって心臓であり、拠り所であり、親友であり、血液なんだ。誰よりも彼女を愛し、彼女がすべてだからこそ、いつだって彼女のために何かをしたいと思っている」

 ストローマン投手の言葉を聞いて、何か同様のエピソードを思い出さないだろうか。初の日系人選手として侍ジャパン入りを果たし、今や一大センセーションを巻き起こしているラーズ・ヌートバー選手とまったく同じ理由なのだ。

 「自分は母親っ子」と公言し、日本人の母の願いを叶えるべく少年時代から日本代表として戦いたい夢を抱き続けてきたヌートバー選手同様、ストローマン投手も今大会の活躍を母に届けたい一心で、プエルトリコ代表入りを選択したというわけだ。

【松坂投手に続き史上2人目の快挙を狙う】

 ちなみにストローマン投手は前回大会でMVPを受賞しており、今回もチームの初優勝とMVP受賞を成し遂げれば、母への最高のプレゼントになるはずだ。

米オッズメーカーの優勝オッズによれば、プエルトリコ代表は6番人気に止まっているが、過去2大会では大会中に勢いを掴み一気に決勝進出を果たしており、決して侮れるチームではない。

 仮にストローマン投手が2度目のMVP獲得ということになれば、第1、2大会でMVPを受賞した松坂大輔投手以来2人目の快挙となる。

 果たしてストローマン投手は、母への思いを成就させることができるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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