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「出る杭でも打たれない」絵本作家五味太郎に聞く2~誰もが絵本みたいなものは描ける。でも絵本は描けない

佐藤智子プロインタビュアー、元女性誌編集者
撮影/ナカンダカリマリ http://nakari5.tumblr.com

●やりたい仕事で成功する人の仕事のしかた

著書378冊の絵本作家、五味太郎に聞く

「アイデアを得るために何かするってことはまずないよね」

どうとでもなる、どうにでもできる、変幻自在に生きる五味太郎氏。

自分の生き方を言い切る潔さがいい。

「絵本って、発明品なんだよね、その人の。それがないかぎり、作品としては存在し続けられないよね」

「何を言われて気にならないね。”お前バカか”と言われれば、バカな気もするし」

「俺の作品買ってください、買えませんと言われたら、“はい。さようなら”って感じ。寂しいなあと思いながら(笑)」

「自分の世界を人に文句をつけさせない人は臆病なんだよね、みんな」

「絵本をつくることに関しては、どうやら天才なんだよ、俺」

「自分の生理、体質、思考に忠実に生きると、“わがまま”になっちゃうんだよ」

「いろいろやってみるのは、“何が自分に合うのかな”っていう興味だよね」

「これは我慢の範囲、これはもう全然ダメねって取捨選択しているのね、自由に」

「描いてる途中に、“これ、どこの出版社がいいかな”と思うんだよ。俺の贅沢だよね」

「ラッキーっていう形は人生につきまとうよね、どうしても」

「絵本って、学んでたんじゃなくて、自分の中にあったんだろうね。リズムみたいなものがね」

「世の中、好きで得意でやっている人ってのは非常に少ないよね」

「”ニーズに合わせる”っていう大バカ野郎の考えがあるけど」

独創的な考えと直感的な行動力に裏付けされる五味語録。

楽しいことをやり続けている人の人生っていったい。

好きなことを見つけて、それを生業にして、

成功している人って、どんな発想を持っているのだろうか。

独自の視点が際立つ、驚きのアーティスト生活とは?

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Q 絵本をつくることになった、そもそもの始まりは? というのを、改めて聞きたいんですけど。まず、劇団に入って、旅公演をされたじゃないですか。で、ちょっとしっくりいかなかったと。でも、絵本をやったら、しっくりいったっていう、その「しっくりいかなかったこと」と「あ、自分に合ってるな」っていうことの感覚の違い? 世の中的には「どうも違う、どうも違う」と言いながら、ずーっと何年も続けている場合があるわけですよね。

A いや、だから、それは、自分にしっくり合うか合わないかってことは、もうガキの頃からやってないと。根性がつかないよ、それ。

Q 30歳ぐらいでやってもダメ?

A もうダメだろうね。

Q バッサリいきますねえ(笑)。

A 要するに、もう遅いっていう感じがあるよね。

Q でも、次世代にはつなげられるかもしれません。

A うんうんうん。ただね、あの、人間ていうのは自己肯定みたいな本能があるから、次世代につながらないように、やっぱり繰り返すんだろうけど。だから、伝統があるよね。自分の生理、あるいは体質、あるいは思考、それに割と忠実に生きるっていう、ここを今言葉で表現すると、結構、肯定的でいいんだと思うけど、これ、まとめると、「わがまま」っていうことになるわけだよ。

Q はあー、そうかあ。やりたいことをやるっていうのは、ある種の反発をされますね。

いろいろやってみる興味というのは、逆に言うと、「何が自分に合うのかな」っていう興味だよね。たとえば、ペンキ屋さんは面白いわけよ。ペンキ屋さんって、色塗るの大好きだから塗ってるんだけど、「この匂いがきついな」ってなるじゃない? でー。「この人間関係ってほんと、くだらねえな」みたいの、あるわけ。旅に行ってもさ、飲んでると、おやじが出てきて「お前、なんか、意見言え」とかさ。

Q つまり、ペンキ塗りは面白いけど、匂いは嫌だとか、旅はいいけど、行った先で飲んでいるといろいろ言われるとか、いろんな好きの中にもいろんな要素があって、どこを優先、チョイスするかということですか。

A それも、俺のキャパの中で、「これはOK」、ま、これは、我慢が足りないわけじゃないんだ。「これは我慢の範囲」「これはもう全然ダメね」っていうのがあったときに、やっぱ自分で取捨選択しているんでしょうね、自由に。

Q それで、いろんな中で絵本っていうのはなんで残ったんですか。何が良かった?

A いや、だから結果なんだよ。

Q 何が一番、「あ、これが」と思ったんですか。

A つまり、他が嫌だったわけじゃ全然ないんだけど、「これはたまんないな」と思ったよね。

Q それは、何ですかね。

一人でやることでしょうね、やっぱし。それに気がついたってことよね。やっぱデザインは面白いけども、どうしても作業として最終的には。でも、この絵本だって、実のこと言えば、制作団体、企業、編集者がいてくれて成り立つ。具体的に言えば、製版の人がいて、印刷の人がいて、営業の人がいて、いろんな方にお世話になっているわけだけど、少なくともやる作業というのは、全く一人だっていう意味だよね。途中で「もしかして面白いかな」と思って、子どもの人形劇とか、舞台とかつくったり、映画つくったこととかあるけど、人がいっぱいいると、A型なのかな、やっぱり人のこと、気になるんだよな。

Q やっぱ、気にしちゃうっていう。一人でやるのがいいというのは、気ままな、自由にできるということですか?

A そうだね。時間的にもね。だから、逆にその反動として、わざと自分で縛りをつくりたいから、時々、展覧会やると、スタッフがいっぱいいてくれて、ワーっとやって、短期間で。それもまあ、結構良い展覧会できたから、まあ、2~3年しなくていいなっていうぐらいに。俺、たいがい「おい、野球やろうぜ」みたいなことを言うわけよ。

Q そうですよね。ユニフォームつくったんですよね。

A だけど、野球の団体をつくるのはいいんだけど、どこと試合をするかみたいのがあるじゃない? それがめんどくさい。「どうすればいいかな」と思って「あ、2個チームつくればいいんだ」って話になって(笑)。黒い洋服と白い洋服でつくって、俺のチームなんだよ、全部。それが試合やればいいなと。

Q 試合、いつでもできる、みたいな? すっごい、合理的。

A 最近、ちょっとサボって。なんだかめんどくさくなってきちゃったけど。そういうのだって、大変なんだよ。もう、ユニフォームを発注し、帽子を発注し、いざとなったら、「これはやっぱ中国製のほうが安いよね」って中国に連絡して。

Q それをやられているんですか。

A やったやったやった。だから、やろうと思えば、すぐできるんだけど。

Q アーティストの方で、自分は営業も運営も何もできないからじゃなくて、いろいろやりすぎるっていうか、気を遣いすぎるから、一人のほうがいいということですか。

A いや、そうじゃなくて、気を遣いすぎるけど、そんなに、ワイワイやっているのも好きじゃない。講演会みたいなものも、結局、話し始めると、全然いいのよ。こんな調子でしゃべっているわけ。へへへ(笑)。

Q 社交的ですよね。

なんと言われてもいいんだよ。「ああ、そうですか」って言うだけなんだよ。

Q あはは(笑)。

A 「社交的ですか」って言われれば、「あ、社交的です」みたいに。

Q 私からはそう見えるんだ、みたいな。

A だから、それも性格かもしれないけど、人に何を言われても別に気にならないのね。「お前、バカか」って言えば、ああ、バカみたいな気もするし。だから、絵本を描いていて、一番あれなのは、単純に「これ、くだらないよね」「うん、くだらないかもしれない」「これ、すっごいですよね」「うん、すごいかもしれない」と思っているわけ。

Q それなんです。五味先生の本を読んだら、人それぞれなんだなって思えるから。

A 人それぞれのファンがいてくれるから。今、ふっと思いついたのは、たとえば…。最初に会いにきて、失礼な話なんだけど。会ったときに、「ほんとに五味さんの本、くだらないですね」って言う人もいたのよ。

Q え~、ほんとに失礼な(笑)。

A 「ほめているんだろ?」って言ったら、「もちろん、ほめているんですよ」っていう話が平気なんだよ、俺は。

Q 腹が立ったりしないんですか。

A 全然ね。それで、「ここんとこわかんない」って、「ああ、そうかもしれない」と思うし。「わかりにくいよね」って、それも「そうかもしれない」と思う。

Q たとえば、「ちょっとわかりづらいですよ」って編集者の人に言われたら、直しはするんですか。

A 直さない、全然。「それはお前が悪いんだから」っていうわな。(笑)

Q (笑)。でも、デザイナー出身じゃないですか。デザイナーという仕事というのは、クライアント様がいるわけじゃないですか。

A それがあんまり得意じゃないということだよね。

Q ですね(笑)。

A 今もやっているけども、今ちょっとほら、偉いでしょ? 俺。

Q うふふ(笑)。すっごい偉いと思います。

A 「そうだよね」って、「これ、こうだよね」って言うと、「はい」って言って、「そうだよね。」「いや違うよね。じゃあ、やめようか」ってなるの、あるじゃない? だって、それは、俺がこういうふうに思っているのを向こうがそう思ってない場合は、やめたほうがいいよね。

Q いつぐらいから、自分のやりたいようにやれるようになりました?

A スタートの頃からだな。

Q えっ、だってまだ、駆け出しだったときは?

A うん。立場はバイトだよね、当然。そこで抑えていかなきゃ、それはしょうがないから、風景を見ているだけでしょ。

Q でも、最初の頃はね、編集者が「こういうふうに描いてください」とか。

A ないない。そんなの、はじめからないもん。そういう売り方しないもの、俺。はじめから、俺の作品を持っていって、「これ、買ってください」ってだけだよ。「買えません」って言うから、「はい。さようなら」って感じよ。「寂しいなあ」と思いながら。

Q じゃあ、この378冊は、すべて両想いということですか。自分がやった、自分がアクションを起こしたことに対して、「いいよ」って言ってもらえたってことですよね?

A そうそう、そうそう。だから、そういう人に割と早めに会えた幸せってすごいよね。最初に。3~4人に。だから、今、編集者って人には一目置いているわけ。

Q その編集者の人たちとちょっと意見が合わないとか、もめるということはなかったですか、今まで。

A いっぱいある。編集者もなんか言わないとバカだと思われるじゃない。

Q はは。全部OKだとね。ちゃんと、読んでんのかってなっちゃいますもんね。

A 編集者って全体的に窓際みたいなやつが多いんだよね。

Q へへへへ(笑)。そうなんですか。

A なんか要するに、「このまま”はい”って判子ついて上にいったら、バカみたいに思われちゃうな、一言、言わなきゃ」って思うじゃない。良心的に言ってくれる人もいるわけ。ただ、立場が違う、経験も違う。で、一番あれなのは、「五味太郎っていう人は、この作品から出たんだよね」っていう形のものをそのまま捉えてくれて、一番正しいのは「今、これを引き受けて、出版社がお金を出して、本にして、売って、印税を払う」っていう構造なんだよ、全体に。だから、簡単に言うと、ここでこれを、えっと、ラインに乗せて、会社の事業として外に、世の中に問うべきか問わないべきかというのはその人の判断なんだよ。俺の判断じゃないんだよ。だから、それはもう全然、お任せする。

Q だけど、やっぱり出版社の人たちも商業的に考えなきゃいけないから、売れない本は出せないから、やっぱり売れているんですよ。世の中が、五味先生を求めている。

A そうじゃなくて、その駆け出しのときに、「今の世の中からいったら、ちょっと違うかな。でも、行ってみよう」っていう判断をしてくれた人に会ってるんだよね、俺は。

Q 初期の頃?

A そうそう、そうそう。その根性を、「よし、わかった。もしこれが売れなかったら、私が責任とる」って言えるぐらいなキャパがある人々に会っているんだよ、僕は。

Q それが『きんぎょがにげた』(福音館書店)とかあの辺ですか。

A もちろんもちろん。だから、もう最初の頃に、『みんなうんち』(福音館書店)みたいなものっていうのは、福音館書店で。福音館書店っていうのは、それまでっていうのは、合意性という形で、みんなが賛成するって形のもので、出版の合否を決定するっていう出版会議っていうのも必ず持っていた。で、月刊誌もずっとつくっていたからね。その中で、10人の中で2対8だったんだよね。

Q どっちが2なんですか?

A 賛成、出そうっていうのが2で、8が反対。

Q それはどういう意味で反対だったんですか。教育的じゃないということ? どういう意味でダメだったんですか。

A ていうより、うんちを扱うにしては、もう少し扱い方がある。その辺はよくわからない、俺には。ただ、俺は面白いと思って、2人が面白いと思ったんだけど。その2人がとっても出したいと言って。だから、「私の裁量で」という形で。幼稚園に配布するような月刊誌で。7月、8月で渡しちゃうんだよね、夏休みだから。「この辺なら、あんまり問題を起こしそうにないから、8月号にやっちゃいましょう」って出たんだよ、あれ。

Q はああー。その8人の反対を押し切って、責任を持ってやってくれた。

A それぐらいに力のある方がいたっていう、ラッキーっていうことなんだよね。その方ともう一人の方が「絶対に推す。これは出すべきだ」って。だから、みんなにもいろんな意見があったってことは間違いないわけよ。

Q そのときに、もうちょっと、これをやわらかい表現にしてくれとか、そういう修正箇所はなく、そのまま。

A それも俺の中で「それはあるかな」と思ったけれど。判で押したように、すべてのものはキャンセルするんじゃあ全然ない。だから、「これはちょっとちっちゃくしたいな」とか合理的な問題があるよね。あるいはその、「ここはポンと飛びすぎているかなあ」俺も「どうかね?」って相談するような、まあ一緒にやっているんだよね、実際。

Q ちょっと話が戻っちゃいますけど、わがままをやってきたとして、相手を全く受け入れないわがままさじゃなくて、納得いくまで、ちゃんと話をしていくということができるってことですよね? いわゆるその、やりたいことをやって、もう誰も何も文句を言えないってわけじゃなくて、ちゃんとこう、話をしていくというか。

A 「それほど臆病じゃないよね」っていう言い方だよね。自分の世界を人に文句をつけさせない人は臆病なんだよね、みんな。アーティストってそういうの、多いよね。

Q 多いですよ。

A だから、それは、一つには、そういう生まれつきの性格みたいなの。簡単に言うと。出版社のあるリスクの中で彼らが判断しなくちゃいけないことなんだよね。ただ、その判断のとこについてはいろんなケースバイケースがあって、その判断については、俺の中では別に。「ここをすると、こうなんですけど」って言ってくる編集的な意見っていうのは、あんまり合理的じゃないのが多いんだよね。

Q はあー、なるほど。

A それもね、さらに言うとね、どんどん簡単になっちゃうんだけどね、この世界に、これが好きで得意でやっている人ってのは非常に少ないってことなのね。

Q えっ、絵本作家?

A いやもう、世の中全部が。

Q この世の中でね。はいはいはいはい。

A たとえば、気の毒に、バスの事故が起きてしまうということが、かなり頻繁に起こる世界。ずっと突き詰めていくとね、バスの運転手さんが、疲れようが疲れまいが、あんまり好きじゃないんだよね、バスの運転が。誤解を恐れずに言うと、好きなことをやっている、その実力が伴っている現場って、そんなに事故って起きないんだよね。

Q 確かに。

A なにしろ図式的に言えば、「頑張って、この世界を一個つくりました」ということがスッとわかる人っていうのは、「この世界をなんとかしてあげたい」って次に思う。俺もそうだよね、逆に言えば。

Q そうですね。だから、そういう生き方をみんなが、それぞれにできたらいいなあと。

A 絵本をつくるのが好きな人が、何日かかったかわかんないけど、五味太郎っていう人が、まだ新人で名前も知らないんだけど、なんかつくってきたんだなあっていうのを、「これをなんとか本にしてあげたい」って、「それを売るのは俺であり、営業の仕事なんだよね」っていう、こういう関係が、得意なことをやっていると、みんなわかるのよね。

Q そういう人たちの集団なんですね。

A 今クレームがついてくるってのは。あんまり得意じゃないんだけど、一応大学出て、出版社なんか受けて、運良く入ってしまった。でも、自分でもよくわかんないんだけど、あんまり、本ていうのはさほど好きじゃないとか。だから、たとえば編集会議なんかでゴタゴタいってて、帰りにどこ行くんだろうって。本屋さんにふっと寄るタイプの人なんだよ、本の好きな人は。「一応ちょっと見とかないと気になるなあ」っていうんで、駅前の本屋、ぐるっと行って、「ろくな本ねえな。あれ、これ、なんだろう」っていうタイプの、少なくとも10分、20分は過ごすタイプのやつが本をつくっているはずなんだよ。

Q はい。なるほどね。

A ところが、だんだん、今の形になると、たとえば、あんまり好きじゃないけども、会社をリストラされたから、東京に来てタクシーやっている。そうすると、やっぱりタクシーって、タクシーの好きなやつはいるんだよ。お客さんと「どうですか、お客さん、最近は」みたいなこと言いながら、ピッ、ピッ、ピッて最短距離行って、「ありがとうございます」って。そうじゃない人が「すいません」みたいなことをやる。お客さんの乗り降りも段取りがうまくないっていうのが、モタモタしている。

Q ただ一方で、好きなことははっきりわかって、やっているんだけどね、なかなか認めてもらえない、アーティストで。たとえば、個展をやっても誰も来てくれないとか。

A それは時の運だよね。

Q 自分が描きたい絵を描くけど、誰も見てもくれない、買ってもくれない。じゃあ、自分のやりたいことを突き詰めるのか、みんなが買ってくれるほうに寄せていくのか。世の中的にかわいいのが流行っていると、かわいくしてみるとかね。本当はグロテスクなのをやりたいけど、かわいくしてみるとか、そういうふうに、自分をこう、やりたいことをやっていって疲弊していって、人生的にもう疲れちゃうっていうのと、ちょっと相手に寄っていきながらでも自分を変えていくというのは、どうですか。必要ですか。

その人の人生だから、いいんじゃないの。どうでも(笑)。どうでもいいと思うよ。

Q 五味先生はこういうことはしてこなかったわけですよね?

A うーんと、してこなかったのかなあ。

Q なんかこう、自分を変えていって、やりたくないけどやってみようかなって感じで、変えていったこともあるんですか。修正していったりとか。

A 必要ないからね、あんまり。

Q でも、作品を読んでいると、私、思ったんですけど、結構、出版社によって変えられているような。この出版社は言葉が多い、この出版社は絵がカラフルとか。

A 逆なんだよね。描いてみて、一番いいのはどれかと考える。思いついて描き始めるでしょ。それで、描いてる途中に、「これ、どこの出版社がいいかな」と思うんだよ、俺。それが俺の贅沢だよね。

Q わあ、なるほどねえ。

A この軽いノリというか、つまり、俺はいろんなキャパがあるから、「これ、最近仕上がったから、ちょっとこっちへ電話してみよう」と思うわけ。ちょこっと電話してみて、「今、こんなのやってんだけどさ」って。たとえば、絵本館というのは、だいたいふざけたシリーズを(笑)、これ描いていると、「これ、絵本館かなあ」って思う。

Q はあ、ちゃんと自分の中でいろんな考えがあって。

A そうそう。だから、旅行行くみたいなもん。ぼんやりしているとき、「ちょっと気合入れてニューヨーク行こうかな」っていうのと同じ。それが俺の贅沢だよな。それが、長くやっているうちに出てきている。そうすると、それを選択。つまり、なんつったらいいの? 

Q わかりますよ。

A 自分の作業の相手みたいな感じ。

Q それを選んでいるってことですね。

A うーん。そういうことができるようになった。それも、初めからじゃないけども、だんだん傾向として。だんだん育っていくことだからね。まわりとかも。

Q でも、最初の福音館書店みたいに、圧倒的に「これはいいんじゃない」って思ってくれた人がバックアップしてくれていると、それが多数派になっていくわけですよね。

A だよね。だから、その出し方とかそういうことも。だって、今、俺が考えて俺が好きなことを、それこそ戦時中だったら、殴られるよな。そうでしょ? だから、時代ってある。つまり、需要供給になっちゃうわけ、今度は。

Q そういう意味ではいい時代。だって、五味先生がお生まれになったのって、ちょうど、終戦後ですよね。1945年8月20日生まれ。

ラッキーっていう形は人生につきまとうよね、どうしても。だから、ものすごく低音の魅力で歌っても、今はあんまり。今はハイトーンだからの時代だから。やっぱり、いるんですよ。カラオケなんかいくと、しびれるよ、ほんとに低いので。でも、「うーん、ちょっと遅かったね」って感じだよな。

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Q 一番最初の絵本が1970年ぐらいですよね。でも、時代的には、五味先生の絵本、あまりにもおしゃれすぎませんか?

A いや、っていうより、俺が気楽なスタートを切れたのは、その前の絵本知らないんだよ、全然。いわゆる児童書ってやつ。

Q 読んだこともなかった。

A そう。全然知らないの。だから、福音館書店も知らなかったの、全然。だから、ある人が教えてくれただけで。

Q よく知らないけど。

A 何も知らないの。

Q じゃ、どういう話で仕事が来たんですか?

A 来ないよ。最初、自分で描いたの。絵本みたいなもの、なんとなくそういうのをやってみたら、友達が「こういうの、売り込んだほうがいいんじゃないの」とか。いろんなやつがいるんだよ。そういうのも「へええ」みたいな感じで。

Q じゃ、とりあえず作品をざあーっと描いてみて。絵を描いたんですか、最初。

A こういうの、おもしろいなと思って絵を描いたわけ。だから、絵本って、学んでたんじゃなくて、なんか自分の中になんかあったんだろうね。リズムみたいなものがね。

Q それを福音館書店に持っていって、そうなったということ。

A うん。

Q 五味先生のインタビュー記事によく、「いつの間にか絵本作家になったんだよね」って言われているんですけど、私の知り合いだけでも、絵本作家になりたくて、絵本作家講座みたいなのに通っている人が3人くらいいるんですよ。

A それはなんないね、絶対にさ。

Q そんなあ、すっぱりと言わないでください(笑)。

A なんないと思う。

Q よく聞くのが、ほんとに絵本が好きで読んでいた人とか、子どもが好きな人、あとは自分の子どもに読み聞かせているうちに、ああ、絵本を一生に一回は描きたいって。

絵本みたいなものは描ける。でも、絵本は描けない。

Q その違いを教えてください。

A だって、全部、発明、発見でしょ? 絵本って。形からもそうだし、その語り方、表現の仕方はもう、発明品なんだよね、その人の。それがないかぎり、作品としては存在し続けられないよね。

Q なるほど、習って、絵本ってこういうものだよって教わってやっても枯渇しちゃうってことですか。

A 枯渇よりは、えーっと、なんつったらいいんだろう。存在し続けられないと思うんだよ…どうやら。今残っているものを、逆算してみると、みんな、「その人が変なことを考えたんだなあ」って思うぐらいに圧倒的だった。ところが、時代が過ぎると次第に収まるんだけど。「なんでこんなこと描いたんだろうね」っていうのはね。たとえば、童心社の話をすると、『いないいないばあ』(童心社)っての、見てごらん、あれ。大変だよ。気狂うぐらい、楽しいよ。

Q 大ヒットですよね。

A そのときも非常に模索したんだよね。どうやって描くんだろうって。いろいろ描いてみたんだろうな。それで、家族にウケたとかな(笑)。そんなんでいいんだよ。「『いないいないばあ』って、絵本になんかなるだろうか」って、たぶん思ったと思うよ。編集者も「どうなのかな?」って思ったと思うわけ。事件なんだ、要するに。

Q 絵本ていうのは、オリジナルなだけじゃなくて、パイオニアでないといけないということですか。

A そう。それは絶対。一個ずつが、ちっちゃいパイオニアじゃないと。だから、その「今、こういうもんが売れているんだよね」って「この傾向の」っていうのは、やっぱり、一過性にある程度の商業活動はできるだろうけど、やっぱりなくなっていく、間違いなく。割といい例で、ある女性の編集者と、「なんか、分厚い本、つくりたいね」って言って、それで『らくがき絵本』(ブロンズ新社)っていうのをつくったわけ。「電話帳みたいの、つくろう」って。すごい簡単なんだよ。「とにかく分厚いの、つくりたいですね」って言って。それで、分厚いの、束見本みたら、盛り上がったね。それで、つくって、これで何しようかなと。「なんか、パラパラ漫画でもやろうかな」とか。あれは造作のほうから来たんだよね。なんか、「電話帳、タウンページみたいな変なもん、つくりたいね」みたいに思って。「そうしたら、当然、モノクロだよね」「そうか、そうか」、それで、今、ご覧になったらわかると思う。『らくがき絵本』なんだけど、そのときシャレとして「『五味太郎50%』っていう絵本をつくってみよう」と。そして、みんなが描く。今までタブーだよね、絵本に絵描くなんて。そのタブーをあえて解放するのもいいなあと。俺はタブー、描いていたからね、他人(ひと)の本に。絵描くの、大好きだから、僕は。そういうのをやってみようと思って、実験で10枚ぐらい描いてみて。たとえば、樹の枝だけ描いて、「葉っぱをつけようぜ」とかって、葉っぱを描いて。原稿は樹を、次は節があって、男の子、女の子がいて、「橋をかけましょう」みたいな。俺が描けないからイライラしてくるわけ。

Q 委ねるんですね、読者に。好きなように描き足してくださいと。

A コピーとってさ、橋を描いたら、すんごい気持ちいいわけ。「子どものほうが絶対いけるから」って。だって、一文以上書かないんだもん、俺が。ぐっと我慢してんの。

Q えー?!

A だろ? 

Q もうどっちかっていうと、発明品なんですね。

A もちろん。構造そのものが。最新刊の『気をつけて』(童心社)もさあ。あの本に関しては、最初に、「きをつけて」っていう言葉が気になったのね。

Q ものによっては、言葉から入る場合、絵から入る場合があると。

A そうそうそう。「”きをつけて”っていう言葉を絵本化したいな」とずっと思ってたわけ。

Q 「きをつけて」はどういう意味でいいなと。

A いいじゃない、「きをつけて」って。

Q それはやさしさ?

A いや、やさしさって、イコール言っちゃうとだらけるんだけど。よくどっか旅行へ行くときに「じゃあね。気をつけて」って、軽く「いいね」って思う。要するに、carefullyっていう感じかな。Be careful、あるいはcarefullyっていう。あの言葉から何が始まるか、っていつも思っているところはあるんだよ、俺。これ、俺の癖なんだよ。

Q たとえば、絵が好きな人だったら、すべてビジュアルなのかと思いきや、耳から入る情報とか字面とか。

基本的に、俺は天才だからね。

Q ですね。

A だから、そこを一般的にやるとわかりにくい。

Q 確かに。

俺、もう、認めざるを得ないもん、自分で。ほんとに、笑っちゃうけど(笑)。絵本をつくることに関しては、どうやら天才なんだよ。

Q ですよね。

A そういう意味で悩んでないんだよ。

Q 悩んでいる絵本作家の方とか見たこと、あります?

A ん、向いてないなあと言うんで。

Q え~(笑)、かわいそう。

A 今をときめくやつと仲良いんで、「向いてないなあ」とよく言っていて。だから、「向いていることのほうに行けば?」ってことだよ。

Q それがさっき言われた、向いてないのは、好きじゃないんじゃないかという。

A 「お前、ストーリーつくるの、へたなー」って言うわけ。もう、失礼な話なんだけど。まあ、一応、先輩後輩で、こういう場合いいなと思って。それで、ダミーを見せてくれるの。「お前、話つくるのへっただな。」でも、絵はすっごいよね。あいつらの絵は。ワークとか、素晴らしいなと思って。それで、図星だよね、やっぱり。

Q じゃあ、ストーリーというかお話と絵も、両方できるってことは、すごく稀有な存在なんですか。

A 両方できるんじゃなくて。

Q 両方好きっていうこと?

A そうじゃなくて、同時進行でやる。考えたら、お芝居がそうでしょう? 音楽も実はそうだし、踊りもみんなそうだし。絵本ていうのが、児童書もそうなんだけど、コンセプトと絵描きさんというのは合体してつくるっていう、なんか習慣があるんだよね。だもんだから、作・絵っていうのが合体するのが、割とパターンとしてあったから。初期の頃なんてね、一人でやっていると、「作・絵 五味太郎」みたいのあったよね、よく。

Q ああー。

A 「やめようよ、これ」っていうんで。今は外してリメイクし直して。後でわかって、「これ、不思議な世界だな」と思って。何がなくちゃいけないじゃないんだけど。

Q じゃあ、もし五味先生がミュージシャンだったら、曲と歌詞が一緒に降りてくるってことですか。

A 俺は作曲家になるだろうね。

Q ああー。

今、チェロ弾いているんだけど。

Q え?

A チェロ弾いているんだよ。あるものを弾くんだけど、人が聴いていて「途中から変わったね」って。「いや、実は俺、途中からつくっているよ」って(笑)。つくっていくほうがおもしろい。それで、一番つらいのは、俺は音符を読む気がないものだから、CDに入れとく。「『いいね!』って弾けそうだな」って。『いいね!』ってやつは、えらいことで、「ちょっと簡単そうだな」って聴こえる曲は、たぶん簡単じゃないんだよね(笑)。っていうの、だんだん、わかってきて。昨日も2時間ぐらい特訓したから、今日は手痛いんだけど。

Q ええー? チェロを弾いているんですか。絵を描く作業も手を使うのに。

チェロのほうが頑張っている感じね。絵は息抜きでどんどん描けるから。うん。聴いて、置き換えるっていう方法の作業を、ふつうの音楽をやってきた人には信じられないやり方しているわけ。

Q え? 耳で聴いて、それを演奏しているんですか。

A そう。耳で聴いて全部覚えて、それで再現させようとしているわけだから。それで、3年目ぐらいなんだけど。

Q それは突然やりたいと思ったんですか。

A うん。

Q チェロが面白そうって、いつどこで発見したんですか。

A 違う違う違う。俺、クラッシック大好きだし、音楽大好きだから、よく旅行なんか行くと、割と重要な課題としてコンサートホールのチケットをとったりするの。美術館はだいたいふらっと行くけど、コンサートはとっとかなくちゃ行けないから。これ、語ったら、すごいよ、もう。ベルリンフィルを見てるし、コンサートホールもアルバートとか、いろいろ見てて。クラッシック聴くの大好き。それで、見てて、チェロを弾いているのも見てて、コントラバス見てて、「いいよね」とかって聴いてて。なんかのときに、楽器屋さんにふっと行ったのよ。そしたら、チェロが「ちょっとお前よ」って。

Q 話しかけてきた。

A うふふふふ(笑)。で、俺、なんか「これ、ほしい!」と思って、はっはっは(笑)

Q 買っちゃったんですか。

A うん、「これ、ほしい!」って言って。

Q で、それから、やり始めた。

A そう!

Q でも、3年というのは長いですか。

A 相当短いでしょうね。俺の中じゃね。もちろん、それまでにギター弾いたりはあったから、ただ、あの形のものを弾いたら面白いなと思って。

Q へえー。やっぱり基本、面白いなと思ったら、ちょっと試してみるんですか。

A ま、ダメで元々ぐらい? ダメでもさ、置いとくと面白いのよ、あの楽器が。そういうことを思ったのね。

Q たとえば、チェロを2時間ぐらい弾いたら、絵が変わったりします?

A 知らねえよ、そんなの。

Q そういうのは関係ない。気分転換という意味でね、ちょっと発想が変わるというか。違うものをやってみようとか、そういうことじゃないですよね?

A それもないこともないんでしょうけどねえ。なんだろうね…。いや、それは、突然そう思ったんで、「あ、俺もそういうところ、あるんだなあ」って。ちょっと懸命になるわけよ。それ以降、クラッシックを聴くときも、今までは2階の真ん中で、バランスよくオーケストラを見るわけ。でも、今は、「ちょっと前、とろうぜ。チェロの見えるところ」って。「どうやって、やっているんだろう」って。楽しいよね。

Q 結構、夢中になる?

A 恥ずかしながら夢中になって。

Q 話があっちこっち行ってすみませんが。象の話したように、何か、象の絵を描きたいと思って動物園に行くとかじゃなくて。

A 俺は原則的に、今ので言うならば、写実の人じゃないよな。これを写したいと思うわけじゃない。だから、写真も難しいところなんだけど、写真ってことごとく真実を写すって言っていのが、はたしてどうなんだろうかって。あるものを撮ったときに、真実はどうでもいいんじゃないかって。

Q でも、五味先生の場合、これだけ何冊も出すほど、アイデアがあふれている。天才だし。全くアイデアが浮かばないとか、浮かんだり消えたり、波があるっていう人だったりすると、アイデアあふれる人のことをうらやましいから。

それは無理だよ。あふれちゃったら、間に合わないよ、その人。

Q あははは(笑)。そうか。

A 俺でさえ…。描いているときって気楽だから、できるんで。ふっと思いつくことがあるとずっとメモしている。絵本じゃないことをやりたくなることもあるから(笑)。それ置いといて、こっちとか。

Q 五味先生なんかも、アイデア枯渇して、ちょっとスランプっていうか、もう全然、何も発明できないっていうとき、ないんですか。

中から出てこないからね、俺の場合は。なんでもできるんだよ。拾って出して、拾って出してって感じでしょ。

Q インプットしてアウトプットみたいな。

A そうそうそうそう、そうそうそうそう。

Q そのインプットはわざわざ外に出たりするんですか。

A そのためには、絶対ないよね。

Q 出ているときに、ハッて思いつくみたいな。

A 税務のときの帳簿では、「取材旅行」っていっぱい書いているけど。

Q 全部取材ですもんね。

そう、全部取材。でもそのアイデアを得るために旅行に行くことは、100%ないよね。何かするってことはまずないよね。

Q じゃ、わざわざ取材ってことはないってことですね。

A 割と、しゃべりながら、自分で考えているんだけど。俺の中の癖っていうのは、いつもなんかが引っかかっているんだよ。全体的には「気分」だと思うんだよね。その、「気分」っていうものが、「気持ち」って言ってもいいんだけど、「気分」のほうがどうも合うな。ある「気分」の好き嫌いが、あるいは気になる「気分」があって、それがいつも引っかけたまま暮らしているんだと思うんだよね。だから、そうすると、それはふっと具体的に、あの「気分」をまとめてみたいな、たどってみたいな、っていうような感じで引っかかってきて。

Q だから、『きをつけて』って言葉から発したシリーズのあとの新しい3冊は、言葉ではなくて。俺もあんまり出かけないタイプだから、時々、お出かけする感じっていう、ある「気分」をもって出かける感じが、なんか描けるなあって。それで描いたら、やっぱり1個じゃ決まらないんで、3つぐらいお出かけパターンみたいなのがあって、どこに行くのかなっていうのと、それを見送る人と。と描いていると、これは、テーマは絶対ガキのほうが面白いなって。ガキが「いってきまーす」って感じ。ね、お出かけする。

Q 「お出かけする」という、一つのテーマがあって。

A そうそう、そうそう。バリエーション出すっていったら、俺、得意中の得意だから。

Q 一つの何か、「きをつけて」って言葉から、「きをつけて」ってどういうときに言うのかなあって連想していったり。

A そうそう。

Q 言う人と言われる人の立場になって、視点をどんどん変えていったら、いろんなパターンができて。

A 途中で事件が起きるかもね、とか、起きそうで起きないよね、とか。あるいは、おみやげいるかな、とかね。何持っていくのかな、誰に会いに行くのかな、っていうのは、一緒に楽しめばいいわけでしょ。

Q 絵本講座とか行ったことないから、わからないんですけど、たとえばね、主人公は誰にしますか、この本は誰に向けてやりますか、どういうふうなことを教えたいですか、ってなっていったら、もう落としどころはこういうふうにしないといけないし、これは5歳の子に読ませるんだとなると、だんだん、縛られていくじゃないですか。そういうことじゃないということですよね。

A そうね。全然、違うよね、つくりかたが。5歳の子のためにとか、幼い子のためにということ自体が不遜なんだよね。「不遜」っていう言葉が一番合うんだけど。そんなもののつくり方ってないんだよね。あり得ないんだよね。ただ「あり得る」と思っているんだよ。これは、今、産業資本主義っていう形の中で、「コンシューマーのニーズ」って言葉がどこかで出てきたわけ。

Q ああ、消費者のニーズに合わせるということですか。

「ニーズに合わせる」っていう大バカ野郎の考えが。これは、あるものでは合うんだよ。たとえば、靴下とかね。どういうコンシューマーがいるんだろうかっていうね。「うーん、水虫のやつがいるな」って。「こいつらのために」とか。あるいは、そういうのを細かく刻んでいって、販売戦略、さらにファッションでやっていくと、こうなるんだよね、って。あるいは自動車みたいなもの、おつかいするときにはこうだよね、とか。

Q ライフスタイルからも提案する。

A 「ユーザーの〇〇(なんとか)です」って。ところが、あえて言えば、アートっていう世界っていうのは、それが全くないのが魅力なんだよね。

Q 確かに。じゃ、先に発想があって生み出して。

A そう。ニーズを考えていたら、絵本みたいなものができるっていったのはそういう意味なんだよ。絵本はできないよ。絵本みたいなものはできる。

Q 発想で絵を描いて、文字を書いてやっているうちに、「あ、これは、あの出版社のあの面白い編集者に合うな」とか。

A うん。

Q 後付けで、「これはあそこで出していこう」みたいな感じ、ということですよね。

それは、俺の場合のやり方だから。これが一般的ではないと思うし、俺が、編み出してきた方法でしかないから。

Q いやあ、それがすごいなと。こうやってずっとやられているというのは。

「やられている」じゃなくて、やんなかったら、他のことやってるから。わかんない、それは。

Q 売れてなかったら、何か違うことやっていました?

A たぶん、色塗るのは好きだから。俺は、「俺がこの世の中からポコッといなくなったら、たぶんメキシコを探してくれ」って、みんなに言っているんだよ。メキシコで、犬かなんかの彫刻をつくって、色塗って、並べてお土産屋さん、たぶんやってる(笑)。

Q えー。

A 俺がメキシコに行ったときに、ぶらぶら歩いていたら、「俺、この仕事いいなあ」と思って、そこのにいちゃんと仲良くなったけど。楽しそうなのよ。

Q どうやってでも生きていけそうな気がする。なんか。

生きていくしかないでしょう。実際は。

Q あはは(笑)

A 客商売は絶対やらないな。レストランとかああいうのって、ぜってえ、やらないな。

Q サービス業、ダメですか。

A 全然ダメ。俺、食っていたほうがいいよ。そういう友達いっぱいいるけど、「よくやってるなあ」と思うよね。俺、そういうのは向いてないだろうと思う。いつもなんかちょこちょこつくっていたい。

Q なるほど。そうやって、絶えずつくれる。アイデアが出ない人もいるかなと思って。

A 出ない人はやめればいい(笑)。

Q やめればね。好きなことをやっていないから続けられないんだと。深いですね。

●第3回に続く(4月20日配信)

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プロインタビュアー、元女性誌編集者

著書『人見知りさんですけど こんなに話せます!』(最新刊)、『1万人インタビューで学んだ「聞き上手」さんの習慣』『みんなひとみしり 聞きかたひとつで願いはかなう』。雑誌編集者として20年以上のキャリア。大学時代から編プロ勤務。卒業後、出版社の女性誌編集部に在籍。一万人を超すインタビュー実績あり。人物、仕事、教育、恋愛、旅、芸能、健康、美容、生活、芸術、スピリチュアルの分野を取材。『暮しの手帖』などで連載。各種セミナー開催。小中高校でも授業を担当。可能性を見出すインタビュー他、個人セッションも行なう。

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