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剛腕無双・西山朋佳女流三冠(25)7月9日、新人王戦ベスト4進出をかけ齊藤優希三段(23)と対戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月9日。東京・将棋会館において第51期新人王戦準々決勝・西山朋佳女流三冠(25歳)-齊藤優希三段(23歳)戦がおこなわれます。

 西山女流三冠は長谷部浩平四段、青嶋未来六段を破ってベスト8に進出しました。

 齊藤三段は谷合廣紀三段(現四段)、高野智史五段(前期優勝者)、石川優太四段を連破してのベスト8進出です。

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女性初の棋士まであともう少しの西山三段

 西山さんには「奨励会三段」と「女流三冠」(女王・女流王座・女流王将)という2つの立場があります。

 西山さんは奨励会員として女性初の棋士を目指し、現在三段リーグを戦っています。前期は14勝4敗の好成績を挙げながら、惜しくも次点となりました。

 新人王戦は奨励会三段の成績上位者に比較的広く参加枠が設けられています。しかし過去50年のうち、奨励会三段の立場のままで優勝を果たしたのは、2013年の都成竜馬三段のみです。

 都成三段が優勝したのち、三段が新人王戦で優勝した場合には三段リーグで次点を付与される規定が設けられました。三段リーグで次点2回を取ると、すぐには順位戦参加資格がないフリークラス入りという制限があるものの、四段に昇段する権利を得ます。

(※都成三段にも上記規定は遡及的に適用されました。ただし都成三段は次点2回ではなく、2015年度後期三段リーグで1位の成績をあげ四段に昇段しています。現在は六段)

 今期新人王戦、西山さんは奨励会三段ではなく、女流タイトルホルダーの資格で新人王戦に参加しています。西山さんが優勝した場合に「次点」が付与され、次点2回で棋士の資格を得られるのかどうかについては、現在までに正式なアナウンスはないようです。

 今期(2020年度前期)三段リーグはコロナ禍の影響で開幕が延期され、6月に始まりました。全18回戦のうち現在は6回戦まで進んでいます。西山三段は現在3勝3敗という成績です。

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 一方の齊藤三段は2勝4敗。7月5日におこなわれた今期5回戦で西山三段と齊藤三段は対戦し、そちらでは齊藤三段が勝っています。その星まで含め、過去の三段リーグでの対戦では西山2勝、齊藤1勝となっています。

 西山三段は6月27日に誕生日を迎え、25歳となりました。奨励会では原則的に26歳までに四段にならないと、年齢制限で退会となります。

各棋戦で活躍を続ける西山女流三冠

 西山女流三冠は竜王戦6組ではベスト4に進出。6月11日の準決勝では惜しくも星野良生四段に敗れ、女性初の5組昇級はなりませんでした。

 一方、6月30日におこなわれた棋聖戦一次予選では泉正樹八段、渡辺和史四段を連破して勝ち上がっています。

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 現在の将棋界は藤井聡太七段(17歳)が大変な注目を集めています。7月9日は棋聖戦五番勝負第3局、藤井七段が史上最年少タイトルなるかで大変なフィーバーとなりそうです。

 それとともに、同日おこなわれる西山女流三冠の一局も当然観戦するという将棋ファンの方も多いことでしょう。力強く豪放な棋風の西山女流三冠。新人王戦でもさらなる旋風を巻き起こせるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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