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サンウルブズ最年長の大野均が喜ぶ「裏切り」とは。歴史的初勝利の直後に。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
前傾姿勢での突進を重ねる。信頼感は抜群。(写真:アフロスポーツ)

国際リーグのスーパーラグビーに今季から初参戦する日本のサンウルブズは、4月23日、東京・秩父宮ラグビー場でジャガーズとの第9節をおこなった。

昨秋のワールドカップイングランド大会で4強入りしたアルゼンチン代表に相当する強豪クラブをホームに迎え、36-28と歴史的な初勝利を挙げた。37歳とチーム最年長のロック、大野均がミックスゾーンで喜びを語った。

チームは17日までの約3週間、シンガポール、南アフリカでの長期遠征を敢行。4戦全敗に終わっていた。

特に4月15日の第8節では、南アフリカはブルームフォンティンのフリーステイト・スタジアムで記録的な大敗を喫す。チーターズに17―92と屈した。試合のなかった第2節を挟んで開幕7連敗中だった。

もっともこの日は、序盤から接戦を演じた。開幕時からの課題だったスクラムでも、耐え抜いた。

大野は日本代表として歴代最多の96キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を保持。当初サンウルブズ入りへのオファーはなかったものの、選手が揃わずチーム消滅の危機に瀕していた2015年8月、声がかかっていた。

以下、大野の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――久々の秩父宮での試合でした。

「先週、大敗して、特にラグビーを好きなファンの方をがっかりさせたという負い目があった。今週、どれくらいお客さんが入ってくれるのか不安な部分もありましたが、グラウンドに入ったらあれだけの観衆(公式で14000人以上)…。気合いが入りました」

――先日、九州地方で大地震がありました。

「九州の方が困難な状況で、我々はラグビーをできる環境にある。できることは試合に勝って、いいメッセージを届ける。そして頑張ろうと思ってもらう。そういうことしか、できないんで。気合いが入りました。初勝利…。ホッとしてますね」

――ファンの歓声は。

「お客さんが盛り上がってくれると、モチベーションが上がる。あれで、勝ち切れました」

――(当方質問)キックオフ早々、ウイングのビリアミ・ロロヘア選手が負傷退場。

「ビリーは、ここまで頑張ってきたチャンスメーカー。いきなりいなくなるのは痛いなと思いましたが、まだ、試合開始早々だった。ここから…と」

――開幕からラインアウトの獲得に苦しんでいましたが、やや改善の兆しがあります。

「いままでは選手個々が焦って、バラバラな動きをしていた。こっちのミスで、自滅した。今回は、フィロ(・ティアティア)コーチからラインに入る(位置につく)プロセスを作ってもらって、それを守り切れた。次の試合に向けても、良かったです」

――(当方質問)スクラムは。

「特別に何かを変えたことはない。とにかく低く、耐えるということです。あとは…。チーターズ戦からの反省として個人的に思ったのが、ヒットをするタイミングを早くしよう、ということ。ロック(スクラムの2列目)の位置から押し込んで、その力をフロントロー(最前列)に伝える」

――(当方質問)前半終了間際に押し込まれたスクラムがありましたが、その以後は修正しました。

「あの時は向こうが内側に組んできた(最前列両端のプロップが、中央寄りに圧力をかけた)。それに付き合わずに、スクエアに…(全員の身体をゴールラインと水平に保つ)。そこですね」

――ウイングの山田章仁ら、故障者離脱が多いです。

「全員が100パーセントの仕事をしないと勝ちきれない、という雰囲気はありました。過去7戦のなかには接戦もあって、それを勝ち切れなかった。その経験も、きょう勝ち切ったことに繋がったと思います。最後まで気持ちが途切れず、トライまで持っていけると信じ切れた」

――(当方質問)それに対し、相手は反則を重ねてゆきます。

「だんだん、向こうの気持ちが切れてきたのかなと感じました。チャンスだな、と」

――(当方質問)ご自身のキャリアにあって、きょうという日はどんな意味がありますか。

「サンウルブズという歴史がないチームの1勝。先週、大敗して、きょうはもう善戦できたらいいな…という気持ちで来てくれたお客さんがいたかもしれないなかで、いい意味で、期待を裏切ることができた。また、我々がいい意味で期待を裏切ることのできるチームだと、スーパーラグビー全体に示すことができた」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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