ルブタン、「レッドソール」の不正競争防止法訴訟の控訴審でも敗訴
「”ルブタン”vs”エイゾー”のレッドソール訴訟 知財高裁も”ルブタン”の訴え認めず」という記事を読みました。判決文はこちらです。原告(控訴人)は会社としてのCHRISTIAN LOUBOUTIN SASに加えて、クリスチャン・ルブタン氏本人(タイトル画像左)も加わっています。デザイナーとしての強いこだわりがあるのではと思います。
この事件の地裁判決については昨年の3月に記事を書いていますので、そちらもご参照ください。
関連する不正競争防止法の条文は、2条1項1号および2号です。
2条1項1号の主な要件は以下のとおりです。
a. 赤い靴底が「商品等表示」に該当すること
b. 原告の商品等表示が周知であること
c. 原告と被告の商品等表示が同一・類似であること
d. 消費者(需要者)の誤認混同が生じていること
2条1項2号の主な要件は以下のとおりです。
a. 赤い靴底が「商品等表示」に該当すること
b. 原告の商品等表示が著名であること
c. 原告と被告の商品等表示が同一・類似であること
2条1項2号では「誤認混同」の要件がいらないかわりに、周知ではなく著名(周知よりもさらに認知度が高い状態)であることが求められます。
地裁判決では、そもそも、ルブタンの赤い靴底が一般的なデザインであり「商品等表示」には当たらないので、1号も2号も適用されないと判断されました(ちょっと厳しい気がします)。
知財高裁では、この点には触れず、1号についてはd.を検討し、「被告商品と原告商品は、価格帯が大きく異なるものであって市場種別が異なる」等の理由に基づいて消費者の誤認混同は生じていないとしました。
そして、2号についてはb.を検討し、ルブタン側が提出した消費者の調査結果における認知度が51.6%程度であったことに基づき、著名とまでは言えないとしました。
有名なスナックシャネル事件の最高裁判決では、千葉県松戸市にあるスナックシャネルという店がフランスのシャネルと何らかの関係があるのではと消費者に「広義の混同」を生じさせると、かなりシャネルに忖度した判断が行われたのですが、今回のケースでは広義の混同についても否定されました。※なお、スナックシャネル事件の時点では2条1項2号がなかったのですが、現在であれば、シャネルという表示は著名なので、仮に誤認混同がなくても不正競争防止法違反であるという判断がされるでしょう。
なお、ルブタンの色彩商標の登録についても特許庁で拒絶査定を受け、現在審決取消訴訟が進行中です。
ルブタンにとってはかなり厳しい結果と言えると思いますが、日本においては思ったほど認知度が高くない点(正直50%ほどとは思いませんでした)、および、日本では赤いソールの靴が多数あり、ルブタンがそれを放置していた点が大きいと思います。