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「このマンガがすごい!2021」オンナ編1位『女の園の星』のおもしろさとは?

飯田一史ライター
祥伝社「女の園の星」特設サイト トップページより

年末の風物詩「このマンガがすごい!2021」(宝島社)の1位が今年も12月10日に発表され、オトコ編は藤本タツキ『チェンソーマン』、オンナ編は和山やま『女の園の星』に決まった。ここでは『女の園の星』の読みどころについて紹介したい。

■ジワる笑い

 和山やまは2021年12月10日現在、単行本は『夢中さ、きみに。』、『女の園の星』1巻、『カラオケ行こ!』のまだ3冊しか出ていないが、2019年8月刊の『『夢中さ、きみに。』が話題になり、注目されている気鋭の漫画家だ。

祥伝社「FEEL YOUNG」誌連載の『女の国の星』は女子校を舞台に、めがね男子で若干天然の星先生と気の良くておしゃべりな(何も考えていない)同僚の小林先生、そして彼らを「無印良品」「ポロシャツアンバサダー」などとあだ名で呼んだり、校内で犬を飼ったり、星の詳細な観察日記を付けたりするフリーダムな生徒たちの日々を描く。

 中高一貫男子校を舞台にした『夢中さ、きみに。』でも突然パンダの着ぐるみで現れたり、看板の文字を写真で撮って別の単語に組み替える投稿をインスタでしている「仮釈放」さんこと林くんなど、無自覚な変人の存在が魅力だったが、『女の園の星』も本人たちは笑わせようと思ってやっていないのに読んでいるこちらはじわりと、くすりと笑えるオフビートなコメディだ。

『夢中さ、きみに。』では、ある事情から伊藤潤二のマンガに出てきそうな風貌を装っている二階堂くんとクラスメイトの目高の交流を描き、『カラオケ行こ!』ではヤクザの成田に歌唱指導するハメになった合唱部男子の岡との奇妙な関係の進展を描いていた。

『女の園の星』では、ふざけているようでいてキャラクターの過去を掘り下げつつ良い話に転がっていく和山節はまだ1巻ということもあって見られない。

『女の園の星』は商業誌初連載作品、かつ、単巻完結作品でないため、巻がまたいだ伏線やストーリー展開などが期待される(どの回から読んでもおもしろいように描かれているものの)。

今年の年末は緊張感の抜けない日々を過ごしている人も例年以上に多いだろうが、本作を読んで少し息を抜いてみるのもいいかもしれない。

作中である女子生徒が描いたマンガがおもしろすぎるので、和山先生にはいつの日かぜひあれも作品化してもらいたい……。

ライター

出版社にてカルチャー誌や小説の編集者を経験した後、独立。マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャー、出版産業、子どもの本、マンガ等について取材&調査してわかりやすく解説・分析。単著に『いま、子どもの本が売れる理由』『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』『ウェブ小説の衝撃』など。構成を担当した本に石黒浩『アンドロイドは人間になれるか』、藤田和日郎『読者ハ読ムナ』、福原慶匡『アニメプロデューサーになろう!』、中野信子『サイコパス』他。青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒、グロービス経営大学院経営学修士(MBA)。息子4歳、猫2匹 ichiiida@gmail.com

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