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【対談企画】「”生産性”を考えよう」井上一鷹×倉重公太朗 第3回 組織の生産性とは?

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

(第3回 組織の生産性とは?)

倉重:さて、今まで個人ベースでの生産性改善の話をしていただきましたが、MEMEを導入した企業、つまり組織単位で見てみると改善事例などありますか?

井上:組織単位で言うと、もううちの会社もそうだし、いろいろ複数台、数十台とかJINS MEMEを入れてもらって測っていくと面白いなと思ったのが、まず、うちもやっていたんですが、フリーアドレス、これはダメですね。かっこいいんですけれども、フリーアドレスをするだけで集中は落ちるんですね。

倉重:ええっ!?そうなんですか!?それは何でなんですか?

井上:昨日と今日、違う環境だと人って不確実なこと、想定外のことが起きれば起きるほど集中できないんですよ。

倉重:何か警戒しちゃうのかしら。

井上:そうです。不安を感じれば感じるほど、周りをセンシングしなきゃいけない。

倉重:身の危険がないかどうかということを本能的に感じちゃうんですかね。

井上:注意を払わなきゃいけないので。かつ、これはちょっと話が逸れますけれども、日本人は「空気を読め」って言って育っているんで。最悪で、空気を読めということは集中できないということなんですよ。

倉重:なるほど、周りに気を使えということだからですね。

井上:そうです、周りに気を使えだから、フリーアドレスにすると昨日と違う人が隣に座っているんで気にしちゃうんです。

倉重:確かに!

井上:「この人、どんな人だろう」とか、「どういうふうに感じているだろう」とか。

倉重:もう、そっちに意識が行っちゃうんですね。

井上:これでは集中できないんです。これがフリーアドレスの問題です。

   でも逆に言うとフリーアドレスはいつもと違う人とコミュニケーションを誘発して、で、その掛け算がイノベーションにつながるというのは事実なので。これをしっかり設計してフリーアドレスを入れることが重要です。実際に、運用まで考えてできている会社を僕はほぼ見たことがありません。

倉重:なるほど。なんの目的でフリーアドレスを入れるかですね。「コミュニケーションのため」ってもう割り切っているならいいけれども。

井上:はい。運用ルールまで割り切ってですね。

倉重:あとはコンセントレーション(集中)ルームは別に作れということですよね。

井上:そうです。

倉重:あと井上さんが前に仰ってた話で、そもそも日本のオフィスって集中できないように作られているっていうのがありましたよね。その話を頂きたいんですけれども。

井上:これは、日本に限らないんですが、今よく取り沙汰されるのがワークスペースの言葉で言うと、「コワーキングスペース」という言葉がはやっていると思うんです。ただ、コワークって、要はコミュニケーションを誘発するっていう意味ですよね。コミュニケーションと集中というのは水と油なんですね。人って何かに集中しようと思ってから深い集中までたどり着くのに23分かかるんです。

倉重:23分も!

井上:アイドリングするだけで23分かかるんですね。時間がかかるんです。

倉重:問題に入り込んでいくのにそんなに時間がかかるということですよね。

井上:それなのに現代人は11分に1回は話し掛けられるか、メールかチャットが鳴るんで見なきゃいけないわけです。

倉重:そうか。電話が鳴ったりというパターンもありますしね。

井上:そうなんです。これの最たる場所がオフィスなんです。

倉重:なるほど!

井上:面積効率、同じ面積当たりの知り合いの数が一番多いのってオフィスなので。

倉重:確かにそうですね。

井上:魔法の言葉が「ちょっといいですか」なんです。

倉重:「ちょっといいですか」確かに来ますね。

井上:今のオフィスは、「ちょっといいですか」の応酬なんです。本当にこれね、何度も世の中で僕がしゃべっても僕のチームメンバーは「ちょっといいですか」を僕に言うんですね(笑)

倉重:こんな話をしているのに(笑)

井上:ずっと言っているのに。こういうのはやめられないんですよ。それはオフィス設計だったり、そのコミュニケーションする時間と集中する時間を分けるということの大事さをみんなが知らないからで。

倉重:あんまりコミュニケーションと集中を分けようということは意識していないですよね。

井上:していないんですよ。そして日本人は特にしていないんです。かつ、日本人はセロトニントランスポーターという遺伝子で、もともと人種として不安を感じやすいらしいんです。

倉重:へえ、そうなんですか。

井上:不安を感じるということは、それだけ集中しにくいということなんですよ。

   あいつ怒っているんじゃねえか、とか。

倉重:空気を読めにもつながりますね。

井上:そうです。なので、日本ってマインドフルネスみたいなのがもともと進んでいるんですね。集中できないから、したいと思って禅とか頑張ってああいうのを作っているんですけれども。

倉重:そういうことなんですか。

井上:もともと集中力が低いんですよ。さらに社会要請上、空気を読めなんで、全然集中できてなくて。

倉重:なるほど。

井上:なんで高めましょうというのが、測ってみると本当に思う。こんなにも自分は1人でものを考えていないなと。

倉重:井上さんは集中したいときとかって、今までどうしていたんですか?昔は。

井上:昔はどうしていたんでしょう。僕は、良くないと思うんですけれども、新卒で入った会社がブースだったので。もう1人になれる、いわゆる欧米型のオフィスを経験しちゃったので、オープンにされたときにしんどかったんですよ。

倉重:「いやいやいや」ってなっちゃいますよね。

井上:「ええ、話し掛けんな、今」みたいな。

倉重:あるいはもうルノアールに逃げるしかないですよね。

井上:そうそう。本当にルノアールに逃げるしかないです。

倉重:それじゃあ本末転等ですね…、オフィスが要は一番集中しづらい場所になっちゃっているってことですからね。

井上:そうです。全然集中できないです。

倉重:なるほど。じゃあそれを解決するためにコミュニケーションをする部屋と集中する部屋を分けるだとか、そういうのもMEMEを使って定量化してみると分かってくるってことですよね。

井上:そうです。だからこの事実だけでも理解ができるとは思うんですけれども、データを見せられると本当につらくなるし、その社内でこういうものを作るということの定量的な理屈ができるので。なので、働き方改革の、本当の意味での改革の方法をちゃんと選べることに繋がるんですね。

倉重:改革の仕方は企業によって違うかもしれないけれども、何が問題かみたいなのは少なくとも分かるんですね。(第4回へつづく)

【対談協力】井上一鷹

JINS JINS MEME事業部 事業統括リーダー Think Lab兼任

大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。JINS MEME Gr マネジャー、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。最近「集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方」を執筆

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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