Yahoo!ニュース

地雷爆発で吹き飛ぶ兵士…南北対立「緊張の最前線」

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
2015年8月、韓国軍兵士が北朝鮮の対人地雷に接触(韓国軍合同参謀本部)

韓国軍合同参謀本部は18日、北朝鮮兵20~30人が軍事境界線を越えたため警告射撃をしたところ、北側に引き返したと明らかにした。

一方、同本部は軍事境界線を挟む非武装地帯(DMZ)で作業中だった多数の北朝鮮軍兵士が、地雷の爆発で死傷する事故が発生していると明らかにした。

北朝鮮は昨年11月23日に南北軍事合意の破棄を宣言。それに基づき、同合意を受けて撤去していた監視所の復元を今年1月ごろに完了した。また、南北をつなぐ3本の道路に地雷を埋設しているほか、最近は鉄道のレール撤去や、対戦車防壁と見られる構造物の設置も進めている。さらに、南からの進入や脱北者の越境を防ぐため、監視のしやすい不毛の地の造成も行っているという。

最近の北朝鮮の一連の行動は基本的に、自国側領域内での「作業」ではあるが、これは最前線におけるひとつの「作戦」と言える。作戦に犠牲は付き物と考え、死傷者の発生にも構うことなく進めているのだろう。

境界線付近での地雷爆発と言えば、2015年の事件が記憶に鮮明である。同年8月、北朝鮮が仕掛けた対人地雷に韓国軍兵士2人が接触して爆発。身体の一部を吹き飛ばされる重傷を負った。その瞬間の動画も公開されている。

(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

ここから南北双方が非難と報復の応酬を繰り広げ、あわや武力衝突というところまで危機がエスカレートしてしまった。

このとき地雷に接触した韓国軍兵士も軍事行動中だった。最前線でのアクシデントは、どこに飛び火するかわからない怖さを秘めている。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

高英起の最近の記事