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ようやく活気を取り戻しつつある北朝鮮北部の貿易拠点

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
両江道恵山市の市場(デイリーNK=カン・ドンワン東亜大学教授)

かつては貿易と商業の一大拠点だった北朝鮮北部の恵山(ヘサン)はコロナ禍以降、火が消えたように活気を失っていた。

厳しい移動制限、繰り返されるロックダウン、餓死者の発生、密輸への厳しい取り締まり、市場の抑制策など、恵山の人々にとって過去4年間は悪夢そのものだっただろう。そんな恵山にようやく光が指しつつある。市場に活気が戻ってきたのだ。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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今月中旬から気温が急に上がったことで、恵山の市場では夏物の衣類が例年より早く売られるようになった。売れ筋は女性用ののブラジャー、ブラウス、男性用のランニングシャツで、恵山税関を通じて輸入された中国製が消費者の人気を集めている。生地が薄く、肌にくっつかない素材の女性用シャツ、純綿の男性用ランニングシャツの需要が最も高い。

中国製の夏物衣類は北朝鮮製より安く、デザインも質もいい。消費者は北朝鮮製の衣類にはそっぽを向き、中国製のものを買おうとする。ただ、決して安くはない。

若い女性に人気のあるブラウスは1着30元から50元で、金持ちが好む高級品は100元を超える。また、ブラジャーは1着1万5000北朝鮮ウォンから5万北朝鮮ウォンで売られているが、2万5000北朝鮮ウォンから5万北朝鮮ウォンを超える北朝鮮製のものと比べて、価格、品質などすべての面で優れている。

過去4年にわたってお通夜のような状態だった恵山の市場にようやく活気が戻ってきた。また、恵山から内陸地方への卸売も行われており、業者も忙しそうにしている。

情報筋は、自分たちはもちろん、より弱い立場の人もこれで食事が取れるようになれるだろうと期待感をにじませた。

「ようやく少しずつ市場が回るようになった。こうなれば、卸売業者の荷物を梱包してくれる担ぎ屋や、荷物を運んでくれる『クルマクン』も生活ができるようになるだろう。市場の商人たちは、以前より商品が売れるようになり、生活が徐々に安定するだろう」(情報筋)

さて、今回市場に出っ回っている中国製の商品だが、「国家密輸」、つまり国が加担している密輸の一貫として行われるようになった。

情報筋は「まだ回復への途上だ」と言うが、それでも現状に満足しているようだ。

「住民の生レベルがコロナ前に戻るにはまだ遠い道のりだが、それでも今は少しずつ儲かるようになり、餓死寸前の状況からは脱却している」(情報筋)

当局は、国内での外貨での取り引き、密輸などには厳しい取り締まりを続けており、以前のようにワイロさえ払えば何でもできる状態には程遠いが、徐々に戻りつつある。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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