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子どもの高額課金に注意を ゲーム課金と依存症との関連

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(写真:イメージマート)

近年、オンラインゲームに関する消費生活相談の増加傾向が続いています。

2022年6月29日に消費者庁が公表した「オンラインゲームに関する消費生活相談対応マニュアル」によると、

特に20歳未満の相談件数が増加しており、令和3年は20歳未満が契約当事者である相談が4,443件と契約当事者全体(7,276件)の過半数を占めている。

また、20歳未満が契約当事者の契約購入金額の割合については10万円から50万円未満(44.0%)が最多となっており、高額の相談が多くみられる。

とあるように、20歳未満の高額課金の相談が多くなっている状況です。

マニュアルでは具体的な相談内容も紹介されており、主なものとしては、「未成年者が親のクレジットカードを利用してオンラインゲームに高額課金していた」「現金を持ち出してコンビニでプリペイドカードを購入して課金していた」といった事例が挙げられています。

筆者自身もゲーム依存が疑われる子どもについてのカウンセリングを行っていますが、親の知らない間に子どもがゲームで高額課金していたことが発覚し、それを機にゲーム依存に関する相談に来られたご家族もいらっしゃいます。成人でもゲーム課金をやめられず、借金をしてしまったというケースもあります。

高額なゲーム課金をおこなってしまう背景には、ゲームへの過度なのめり込みなど依存的な行動が要因になっている場合もありそうです。

高額課金の背景には依存症との関連も

ゲーム依存との関連

最近のゲームは、基本無料でゲームを始めることができ、上位のレベルのサービスを求める人には課金をしてもらう「フリーミアム」と呼ばれる仕組みが多くなっています。この仕組みでは、ゲームを始めるハードルは低くなる一方、のめり込むほどゲームを進めるのに有利なアイテムやステータスを得るために課金をしたくなっていきます。

オンラインゲームでは、ほとんどの場合ゲーム仲間とコミュニケーションを取ることができますが、課金をすることによって、ゲーム仲間より優位な立場となったり、装備やアイテムをうらやましがられたりすることも、課金が促進される要因でしょう。

これらのことから、ゲームの仕組み上、ゲーム課金とゲームへののめり込みは相互に関連しやすいことが考えられます。海外の研究では、ゲーム課金した人は課金していない人に比べて、ゲームへの依存度が高いことや長時間のプレイ、より多くのデバイスを使っていること、さまざまなオンラインゲームをプレイしていることが明らかになっています(2)。

ギャンブル依存との関連

スマホゲームでは有料の「ガチャ」が高額課金の要因の一つとして挙げられます。ガチャはランダムに賞品が得られるため、一回ガチャを回しても即座にほしいアイテムなどが手に入るとは限りません。しかし、一回のガチャは低額なので、ほしいアイテムが出てくるまでガチャを回し、結果的に高額の課金になっているというケースがあるのです。

こうしたランダムに報酬が得られるガチャの仕組みは、ギャンブルと類似しています。実際、ギャンブル依存度が高い人ほどガチャにお金をかけていることがわかっています(3)。また、ガチャを回すときに音や光などの刺激的な効果を伴うことが多く、スロットマシンで勝ったときの効果音、音楽、光が出るのと同様であるという指摘もあります。

子どもの課金や高額課金を防ぐために

ゲームにのめり込んでいる場合に子ども自身でゲームの使用や課金を止めることは難しく、ギャンブルとの類似性があることからも子どもがガチャを行うことの危険性は高いといえます。

オンラインゲームでは、年齢によって課金の金額に制限があり、「20歳以上ですか?」と年齢確認を求めるゲームもあります。しかしながら、子どもであっても年齢確認で20歳以上を選択すれば、無制限に課金できてしまうこともあります。そのため、家庭ごとに予防のための対策を行う必要性があります。

独立行政法人 国民生活センターHPより引用 こちらも参考にしてみてください。
独立行政法人 国民生活センターHPより引用 こちらも参考にしてみてください。

まずはペアレンタルコントロールの設定が重要になります。ゲームのプレイ時間や購入、課金の制限、アプリごとの利用制限などができます。スマートフォンやゲーム機等のデバイスによって設定できる機能や設定方法は異なるので確認した上で設定をすることをお勧めします。

次に、親のクレジットカード等の管理です。消費者庁のマニュアルには具体的な対策が記載されていたので主なものを紹介します。

プラットフォームに登録したID情報からクレジットカード情報を削除する。

クレジットカード情報が登録された端末を子どもに不用意に使わせない。

親は自身のクレジットカードを適切に管理し、暗証番号も推測されにくいものに設定する。カードの利用明細は定期的に確認する。

最後にコミュニケーションです。日頃から子どもがどんなゲームをしているのかについて知っておくことが大切になります。

ゲームのことがよくわからないという場合、そのゲームはどこまで無料で、どこから有料になるのか、オンラインであればゲーム内でどのような人とどのような方法でコミュニケーションがとれるのかについては最低限知っておく必要があると思います。

また、親の考えや課金の危険性を伝えることは重要です。ただし、注意したいことは「絶対に課金は禁止」という姿勢が強固であるあまり、子どもが課金したいということを素直に相談できず、隠れて課金をするということも懸念されます。

上記の例をもとにペアレンタルコントロールやお金の管理を適切に行いつつ、要望や困り事を子どもが相談できるような関係を作っておくことで、トラブルが起こる前に親子で問題解決の方法を話し合うことができるでしょう。

ゲーム課金に関する消費生活上のトラブルが起こった場合は下記の窓口に相談できます。

消費者ホットライン188

各地の消費生活センター

ゲーム依存の基礎知識や相談窓口については下記の記事も参考にご覧ください。

コロナ禍で広がる子どもの「ゲーム障害」とは 正しく理解・予防するための基礎知識

〈引用文献〉

(1)消費者庁「オンラインゲームに関する消費生活相談対応マニュアル」https://www.caa.go.jp/notice/assets/future_caa_cms201_220629_17.pdf

(2)Raneri, P. et al. (2022). The role of microtransactions in Internet Gaming Disorder and Gambling Disorder: A preregistered systematic review. Addictive Behaviors Reports, 15, 100415.

(3)Yokomitsu, K. (2021). Characteristics of Gamers who Purchase Loot Box: a Systematic Literature Review.Current Addiction Reports, 8, 481-493.

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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