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2年ぶり2度目のプレーオフ進出を目指す富山が貫こうとする目前の試合を全力で戦い抜く姿勢

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
滋賀戦に連勝しブースターに挨拶する富山の選手たち(筆者撮影)

【滋賀戦連勝でプレーオフ圏内を堅守した富山】

 いよいよ2020-21シーズンが佳境を迎えたBリーグ。上位8チームに与えられるチャンピオンシップ(いわゆるプレーオフ)出場権争いも、さらに熾烈を極めている。

 2年ぶり2度目のチャンピオンシップ進出を目指している富山は、週末に滋賀と2試合戦い、97対95、90対82と連勝に成功し、通算成績を28勝17敗とし、チャンピオンシップ進出圏内を堅守した。

 ただ富山にとってこの2試合は、決して簡単な戦いではなかった。第1試合の第2クォーター途中にリチャード・ソロモン選手が左腕を負傷するアクシデントに見舞われ、後半のほとんどの時間と第2戦を彼無しで戦わざるを得なかったからだ。

 平均得点16.8点でチーム2位、平均リバウンド10.1で同1位という主力選手を失いながら、残りの選手たちが最後まで勝利のために戦い抜いての連勝だった。

 しかも滋賀の晴山ケビン選手が「両試合とも僕たちが勝たなきゃいけない試合だった」と振り返るように、両試合とも滋賀にたびたび主導権を握られる展開になりながら富山が耐え続けた上での価値ある連勝だったともいえる。

【ブースターも期待が高まる今季の富山】

 滋賀戦2試合で感じ取れたのは、熱い戦いを繰り広げたチームのみならず、チャンピオンシップ進出を目指すブースターの熱い応援だった。

 敵地滋賀での試合にもかかわらず、ベンチ周辺を富山ブースターの赤いジャージーが占拠。時には滋賀ブースターを上回る盛り上がりを見せていた。富山が厳しい状況ながら連勝を飾れたのも、間違いなくブースターの後押しがあったからだろう。

 Bリーグ創設と同時にB1リーグに所属してきた富山だが、これまで勝ち越しできたシーズンはチャンピオンシップ進出を決めた2018-19シーズンのみと、常に厳しい戦いを強いられてきた。

 そんな状況が続く中、今シーズンは浜口炎氏をHCに迎え新たな体制でシーズンに臨むと、開幕から快進撃を続けた。千葉、川崎、A東京など強豪チームとも互角の戦いを繰り広げ、その上でしっかり上位チームの一角に食い込んでいるのだから、ブースターの期待値が高まるのも当然だろう。

チームの成長を実感している宇都直輝選手(筆者撮影)
チームの成長を実感している宇都直輝選手(筆者撮影)

【浜口HCの下結束力を高めるチーム】

 だからと言って予断を許せるような状況ではない。

 チャンピオンシップ進出が自動的に決まる東地区3位までは、宇都宮、千葉、川崎の強豪チームが盤石の戦いをみせ、ここ最近は3チームが占拠している状態だ。現在は富山を含めた5チームが、ワイルドカードの2枠を争っている状況だ。

 しかもワイルドカード争いでトップに立つSR渋谷から5位の秋田までゲーム差はわずか2.5。たった1敗で状況が変わってしまう、熾烈を極めるデッドヒートを繰り広げている。

 まさに“1戦必勝”状態にある現状について、浜口HCは以下のように話している。

 「(滋賀戦前の)金曜日のミーティングで選手に話したんですけれど、ちょうど震災(東北大震災10周年)もありましたし、昨年からのコロナもあったので、明日のことはわからないんだということを伝えて、先のことを考えずに1戦1戦目の前の試合に集中して、もうこのチームでプレーできるのもあと数試合なので、感謝しながら戦おうとしています」

 選手との対話を大事にする浜口HCらしく、しっかりチームを結束させているようだ。

【宇都共同キャプテン「富山で優勝したい」】

 その一方で、浜口HCは現在のチームにある程度手応えを感じてもいる。

 「雰囲気も含めて大分チームらしくなってきたんじゃないかなと思います。上を見たらキリがないですけど、7月からスタートして全員が合流してからチームとして1つの目標に向かって着実にステップアップしているんじゃないかと思います」

 共同キャプテンの宇都直輝選手は「富山で優勝したい」と力強く話し、やはりチームの成長を口にしている。

 「ルーズボールに激しくいくだったり、僕らがやっていることは強豪チームに必ずあることだと思っています。

 今日(滋賀戦第2試合)みたいに最初離されて、セカンドチームが落ち着いて点数を返してくれて、そこから逆転まで持っていってくれたのは間違いなくチーム力だと思います」

 泣いても笑っても残り試合は15。富山の行方を占う上で試金石になりそうなのが、宇都宮戦3試合、SR渋谷戦2試合、秋田戦1試合だろう。この6試合でどれだけ勝利できるかがカギを握りそうだ。まずは24日に宇都宮との再戦が控えている。

 「(前回の宇都宮戦は)相性というか、すごくやりにくさを感じたので、そこは如何にチームとして乗り越えられるかというのが今後の課題でもあります。優勝を目指す上で(チャンピオンシップでも)やる可能性はすごくあると思うので、そこはしっかりチーム全体で戦っていければいいかなと思います」

 宇都選手が話すように、12月9日に宇都宮と対戦した際は63対100と大差で敗れている。それだけに今回の再戦で富山らしい戦いができれば、チームは一気にラストスパートをかけられるかもしれない。

 まずは宇都宮戦に注目したいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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