文科省「22歳をピークに女性の妊娠のしやすさが低下」のグラフ、元論文と食い違い?
文部科学省が8月21日に発表した「妊娠のしやすさと年齢の関係や、不妊に関する内容」を盛り込んだ高校生向け保健教育の副教材ですが、使用されているグラフと元論文のグラフに大きなズレがあることが分かりました
文科省:妊娠しやすさと年齢、副教材に 高校生向けに作製 - 毎日新聞
文科省副教材「22歳をピークに女性の妊娠のしやすさが低下」のグラフは正しいか? - Togetterまとめ
問題のグラフは以下のリンクから確認できます。
安心して子供を産み育てられる 社会に向けて(※PDF)
グラフは、22歳をピークにして「女性の妊娠のしやすさ」が低下するとしたものです。
しかし、元データとされている論文を見ると、グラフの傾きや数字が異なることが分かります。
元データの論文は以下のリンクから確認できます。
Declining fecundity and ovarian ageing in a natural fertility population. Maturitas(※PDF)
比較しやすいよう、大きさを調整して2つのグラフを重ねてみました。
重ねると、グラフの傾きが大きく異なることが分かります。22歳前後がピークなのはあっていますが、元データでは妊娠のしやすさは25歳まで同じです。また、元データでは30歳でも0.9あたりを維持しているにも関わらず、文科省のグラフでは0.6あたりとなっています。
文科省のグラフだけを見ると、女性は25歳を超えると妊娠が急激に難しくなるような印象を受けます。これでは、間違った内容を高校生に教えてしまうことになります。
論文には「性行為の頻度のため25歳がピーク」と記載
そもそも、掲載されているグラフは「定期的に生理があって避妊をしない女性の1回の生殖周期中における妊娠確率(fecundability)」を表したものです(グラフは孫引きされており、原典は1989年の論文)。
Fecundity and natural fertility in humans. | POPLINE.org
論文の要旨にも「妊娠確率の年齢パターンは、思春期では低レベルだが性行為の頻度によって25歳をピークに急激に上昇し、その後低下する」とあり、「女性の妊娠のしやすさ」とは別物です。
一体、なぜここまで大きなズレがあるのでしょうか?
現在、この件について文科省に問い合わせています。追って詳報をお伝え致します。
追記(8月22日23時46分追記)
当初タイトルを「文科省「22歳をピークに女性の妊娠のしやすさが低下」のグラフは改ざんされている」としていましたが、真偽を確認できていないため現行の「文科省「22歳をピークに女性の妊娠のしやすさが低下」のグラフ、元論文と食い違い?」に修正しました。また、文末もそれに沿って修正を行いました。