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韓国情報機関が「北朝鮮にコロナ感染発生兆候はない!」 北朝鮮の感染者ゼロは「世紀のミステリー」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
ノーマスクの人民軍指揮官・政治将校会議(7月24-30日)(労働新聞から)

 全世界に蔓延している新型コロナウイルスの感染者は国際統計サイト「ワールドオーメーター」によると、一昨年12月31日に中国武漢での初の感染が世界保健機関(WHO)に報告されてから世界173か国・地域を超え、累積で約2億人を超えたようだ。世界の人口は約77億5千万人なので約2.5%が感染したことになる。

 大陸別では欧州が約5183万人、北米が約4291万人、南米が約3564万人、アフリカが約686万人となっているが、アジアが最も多く、約6278万人に達している。最多のインド(約3176万人)を含め、中国、日本、韓国、台湾、東南アジアなどアジア全域に感染が拡大しているが、ミステリーなのは約2500万人の人口を有する北朝鮮だけが「例外」であることだ。

 北朝鮮の感染状況について北朝鮮当局は一貫して「感染者は一人もいない」とWHOに報告している。WHOが先月13日に公表した報告書によると、これまでに累計で3万2512人が検査を受けたが、全員陰性とのことだ。WHOは確認する術がないので北朝鮮の報告を肯定も否定もしていない。「北朝鮮当局の発表によると、感染者はゼロ」と言うのがWHOの公式見解である。

 北朝鮮も日本や韓国と同じように国民は外出時にはマスクを着用している。マスクをしていない乗客はバスや地下鉄の利用を禁じられている。学校の授業もマスク着用が義務付けられており、一時はステイホームも奨励されていた。こうした規制からして北朝鮮でも感染者がいても不思議ではないのだが、昨日、韓国の情報機関「国家情報院」は朴智元(パク・チウォン)院長が国会の情報委員会の非公開会議に出席し、北朝鮮関連の情報を一部公開していたが、北朝鮮の新型コロナ感染状況について「これまでのところ、発生兆候はない」と報告していた。

(参考資料:本当?嘘?北朝鮮の「感染者ゼロ」 事実ならば「奇跡」!)

 中国と陸を接しているラオス、ベトナム、香港、マカオ、ロシア、モンゴルなどの諸国がドミノ現象を起こし、台湾や島国の日本も感染しているのに中国と1420kmも国境を接し、すでに20万人以上の感染者が確認され、今もなお感染拡大傾向にある韓国とは陸続きなのに1年7か月にわたって「感染者が一人もいない」のは俄かに信じがたいが、本当ならば、これはもう奇跡である。

 確かに北朝鮮の水際対策が日韓に比べて素早かったのは事実だ。北朝鮮の医療は防疫・治療システムが不備なことから予防に重点を置き、経済的損失を覚悟のうえで、昨年1月には最大の貿易国である中国との陸海空の出入りを全て封鎖した。船舶による物資の輸入が限定的に許可されたものもあったようだが、物資への検疫、消毒は徹底して行われていた。

 中露との国境警備は徹底され、国境警備兵には「外国からの新型コロナウイルスの流入を防ぐため侵入者は無条件射殺せよ」との指針が出され、不法入国者、侵入者は発見され次第、即射殺された。現に、昨年9月に海を泳いで北朝鮮に亡命を求めたとされる韓国の男性漁船指導員は救助されることもなく、その場で射殺されている。

 北朝鮮が昨年6月に南北融和の象徴である共同連絡事務所を爆破したのも韓国内の脱北団体が北に向けて散布したビラの内容よりも「ビラにコロナを付着させ、流入させようとした」として過剰に反応していたことへの現れでもある。過剰な対応といえば、北朝鮮だけが五輪加盟国で唯一、東京五輪に参加していない。これまた「悪性ウイルス感染症による世界的な危機状況から選手を保護するため」というのが理由とされている。

 北朝鮮では検査は行われているが、ワクチン接種はまだ行われていない。ところが、感染拡大を防ぐ唯一の手段であるワクチン接種が行われていないのに北朝鮮では大規模集会や大会が開かれている。世界中が感染を防ぐため「3密回避」や「ソーシャル・ディスタンス」を徹底させているのに北朝鮮だけは「別世界」なのである。

 今年も朝鮮戦争停戦68周年を迎え、先月27日に全国から朝鮮戦争(1950-53年)に参戦した老兵らが平壌に集い、金正恩総書記ら党・軍幹部出席の下、1万人規模の大会を野外で開いていた。映像をチェックすると、今年も全員マスクを着用してなかった。老兵らは80代から90代と感染すれば最もリスクの高い後期高齢者であるにもかかわらず例外なく全員がノーマスクだった。

 今年1月の労働党第8回大会でも同様の光景が見られた。

 代表者4750人、傍聴人2000人、合わせて6750人が一堂に会していたが、配信された写真を見ると、金総書記が参席した初日の開会式では誰一人、マスクを着けていなかった。大会後に行われた軍事パレードでも金日成広場に集結した軍人と平壌市民10万人はマスクをしていなかった。

 今年も党大会の他、金総書記出席の下、党中央委員会第1回拡大会議(2月)、全国の道、市、郡と連合企業所の党責任書記ら1万人が出席した党細胞(末端)大会(4月)、数千人規模の人民軍第1回指揮官・政治将校会議(7月)が室内で開かれたが、やはり誰一人マスクをしていなかった。

 「最高尊厳」と称されている金総書記の健康は何よりも最優先されている。感染させれば、それこそ一大事だ。感染予防対策によほど自信があるからなのか、本当に新型コロナの感染者がゼロだからなのか、それとも少なくとも平壌だけは「無菌」だからなのか、まさに「世紀のミステリー」である。

(参考資料:北朝鮮「コロナ感染者ゼロ」は本当かも!?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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