「いじめられた」わが子に保護者がしたい対応5つ
文部科学省ではいじめの定義として、下記のように記しています。
「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。
引用元:いじめの定義の変遷
いじめを受けた側の人が嫌な気持ちになったり、痛みを感じたりすることを「いじめ」と呼びます。それを行った人が「いじめ」と考えていなくても「いじめ」になります。
いじめの定義については、社会背景やいじめの増加と共に変化してきました。
子どもがいじめを受けているとわかったとき、保護者はどうしたらよいのでしょうか。
すべき対応と子どもに対する大切な対応と心の持ち方を5つ、お話します。
1.子どもの様子をいつも気に掛ける・異変に気付く
幼稚園や保育園に通っているまだ小さな子どもは、「●●ちゃんにいじめられた・叩かれた」など、保護者に思い出して伝えてくることが多いでしょう。
そんなときは、子どもにどんなことがあったのか聞き、それから担任の先生にもその状況を話し、相談しましょう。自分の子どもの話を鵜呑みにせず、双方の状況を先生に確認してもらうことが大切です。
保護者は子どもに対しては、意地悪や叩かれたことは嫌だったねと、受け止めてあげることが大切で、今後も保護者に対して安心して気持ちを話してくれるようになるはずです。
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小学生・中学生になるといじめられたことを保護者に言わなくなってきます。
なんとなく元気がない、食欲がない、テレビを見ても笑わない、話しかけても言葉数が少ない、部屋にこもりきり、朝なかなか起きない、学校へ行きたがらない、おなかや頭を痛がるなど、様々なサインを出してきます。
普段から子どもの様子をよく観察し、いつもと様子が違ったときは「最近学校はどう?困っていることはない?」などと声を掛けてみましょう。
たくさん話しかけたり、子どもの好きな夕食メニューを取り入れたりすることで、子どもは保護者に話してみようかなという気持ちになるものです。
2.子どもの絶対的味方・安心できる居場所となる
いじめや意地悪をされていることがわかっても、保護者は冷静でいましょう。決して感情的になり相手を特定しようとしたり、直接電話をしたり、学校へ怒鳴り込んではいけません。
また、子どもにもしつこく事実を聞き出そうとしたり、なぜ早く言わなかったのかなど、責めるようなことを言ってもいけません。
さらに、「今日はどうだったの?」「また嫌なことされたの?」と毎日のように聞くのもやめましょう。
おはよう!おかえり!と元気に挨拶し抱きしめたり、背中をさすったりとスキンシップを取るだけで、いつも通りの温かな家庭・家族だな、と安心できるのです。
いじめの悩みを話してくれた時は、
- よく話してくれたね、ママ・パパはうれしいな。
- 意地悪をされていてつらかったね。
- おうちではみんなが味方だからね。安心して。
- 学校の先生と話していい方法を見つけようね。
など、子どもに伝えます。
家庭が心と体の休息の場であり、家族は何があっても味方であると安心させてあげましょう。
子どもが安心感を抱けば、いじめや意地悪に対して感じたことや言われたことを積極的に話してくれるようになるはずです。
3.被害者意識を持たない・担任や学校と協力して解決を目指す
大切なわが子が辛い思いをしていることを、学校や担任の先生、相手の保護者に理解してほしいと願うのが親心でしょう。
ですが、先生にとっては、いじめられたお子さんも、いじめたお子さんも、可愛い教え子です。また、いじめた子どもの保護者にとっても可愛いわが子です。
学校にいじめを相談する際は、相手の家庭にまで立ち入ることなく、自分の子どものことだけを考え相談しましょう。
- いじめについて子どもが保護者に話したことを伝える
- 事実の確認をお願いし、謝罪をしてもらいたいと伝える
- 今後はどうしていけばよいのか、いじめられた子どもや自分たち保護者にできることを聞く
- 担任は、わが子のフォローをどのように考えているのか聞いておく
全てが叶うとは限りません。学校の方針や担任の考え方、いじめをした子どもが多人数の場合は対処の難しさもあるでしょう。
ただ、こちらの希望や考え方については、敵対心をあらわにすることなく、冷静にどうしていきたいかを話すことが大切であり、学校や担任の先生にも理解していただく近道です。
伝える予定の内容は、文書にしてまとめ、先生にもお渡ししましょう。こうすることで言った・言わない・聞いていないを防ぐことができます。
4.どうなってほしいか、子どもと話し合い気持ちの整理をつける
いじめや意地悪を受けた子どもの心は傷つき、人を信頼しにくくなったり、引っ込み思案になったり、人の顔色をうかがい自分を偽るようになることもあります。
ひどいいじめや、多人数でのいじめ、長期にわたるいじめは、一生の心の傷になるでしょう。
けれど、一生その相手を許さず生きていくことは自分も傷つき続けることとなり、また、自分の人生を楽しむことができなくなってしまいます。
いじめについて、保護者が学校や周囲の大人に対してどのような対応をしたか、どんな態度で接したか、また、わが子に対してどんな風に対話をしたかで、子どもの心は傷から放たれ、将来の糧になるのです。
いじめはいけないことであり、いじめられた方は絶対に悪くありません。
いじめの経験を通して親子で様々な視点から会話を持ち、子どもと共に今後のことについて繰り返し話ましょう。
5.子どもが信頼できる大人の姿を見せ、将来の学びへつなげる
担任に相談しても、「いじめの事実はない」「学校では楽しそうに仲良くしている」「考えすぎなのでは?」と言われることがあるかもしれません。
そんな時は、教頭先生や校長先生へ話したり、担任に渡したような手紙を書いてお渡ししましょう。
それでも解決が難しい場合や、子どもが学校を嫌がる場合は、保健室登校や図書室登校にしてもらったり、どうしても難しい場合は学区外の学校へ転入するという方法もあります。
担任・教頭・校長先生に話しても解決がのぞめない場合は、教育委員会や教育局へも相談してみましょう。場合によっては警察への相談も必要になります。
子どもには決して「自分も悪いんじゃないの?」「そんなのいちいち気にしない!」「からかわれても無視しなさい。」などと我慢を強いたりいじめを否定したりするのはやめましょう。
2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」により「学校は報告があった場合には、事実確認をすること、その結果、いじめがあったと認められた場合にはいじめをやめさせ、その再発を防止するために」助言、さらに犯罪に近い行為があった場合には警察への通報が義務付けられました。(いじめ防止対策推進法第23条)
保護者ができることは何か、周囲にも頼りながら、少しでも短時間で解決し子どもの心に負担を掛け過ぎないように動きましょう。
そのような保護者の行動は、大人は信頼できる存在であると、心に残ることでしょうし、自分自身を責めることも、自分に自信を失くすこともないでしょう。
そして将来大人になったとき、物事の考え方や捉え方に良い影響を及ぼすに違いありません。
いじめは暴力。徹底した態度で子どもを守ろう
いじめは暴力行為であり、大人であれば犯罪にもなりえる行為です。そして、いじめは誰にでも起こりうることです。
いじめを受けた自分は、ほかの友達よりも劣っているから、気持ちが悪いから‥‥‥など特別なことは何もなく、誰しもがいじめたり・いじめられたりを繰り返していることもあります。
子どもが自己評価を下げてしまうことのないよう、徹底した態度で子どもの心をしっかり守り、傷をいやしてあげましょう。
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★次回は、わが子が「友達をいじめている」と知ったときの対応 がテーマです。