2016年の金融市場を見る上での注意ポイント
2016年の金融市場は波乱含みでのスタートとなったが、今年の相場動向を占う上での注意ポイントを確認してみたい。
今年は金融市場の変化の年になるのではないかと予想している。その理由のひとつがFRBの利上げである。サブプライムローン問題からリーマン・ショックに至る金融ショックに続き、ギリシャを発端とした欧州の信用不安というふたつの大きなショックが過ぎ去った。その間に日米欧の中央銀行は異常ともいえる金融緩和策を取ってきたが、FRBが真っ先に正常化に向かった。
過剰流動性相場により覆い隠されていた格好の、中国を中心とする新興国経済の悪化が明らかになりつつある。それによる原油の需要後退と原油の供給超過が相まって原油価格が下落した。これにより資源国経済にも影響を与えることになり、サウジアラビアの財政悪化を招き、中東情勢が新たなリスクとして浮上した。
新興国の経済成長がピークアウトしたことで、世界経済の牽引役としては雇用情勢などを確認した上で利上げに踏み切った米国経済に対する期待も強まりそう。その米国では今年は大統領選挙が控えている。新大統領が誰になるのかとともに、新大統領がどのような経済戦略を取るのか、このあたりにも注目しておく必要がある。
FRBについては利上げのペースも気になるものの、年2回から4回程度の緩やかな利上げペースが予想され、テーパリングと同様に市場に大きなインパクトを与えることは考えづらい。
それよりもECBや日銀の動向が気になる。特に日銀である。物価目標達成時期の先送りの可能性もあるため、市場では日銀に対する根強い追加緩和期待がある。しかし、黒田総裁が必要とあればもっと大胆な措置を取ると発言しようと、新たに大胆な政策を取ることにはあまり現実味がない。12月の異次元緩和の補完措置は、国債の買い入れ余地を拡げたが、あくまで現在の国債買入ペースを2016年も維持するためのものといえる。それでも、もし日銀が国債をさらに買い増すような政策を打ち出すと、来年度の国債発行額をも上回ってしまうことになる。ECBの12月の追加緩和の際の市場の反応を見ても、市場は単純に追加緩和を好感するような地合でもなくなりつつあるだけに、日銀が追加緩和に動いた際の市場の反応は素直なものになるとは考えづらい。
そして今年は参議院選挙が控えている。衆参同時選挙の可能性を指摘する声も出ている。この選挙結果次第では安倍政権がより強固なものとなる可能性もある。憲法改正の行方なども気になるが、注目すべきは2017年4月からの消費増税の行方ではなかろうか。増税延期の可能性もありうることで、その際に国債市場に与える影響なども念のため、注意しておく必要がある。