令和6(2024)年財政検証を読み解く(2)-年金の世代間格差はわずかに是正-
公的年金制度に加入すると、保険料を強制的に徴収する代わりに、亡くなるまで年金を支払い続けることを約束しています。こうした約束された年金は政府の債務になります。一方で、年金加入者からこれまで徴収してきた保険料は積立金となっており、両者の差額を「年金純債務額」と呼びます。
年金純債務額は、賦課方式で運営されている現在の公的年金制度が、若者や将来世代につけ回ししている負担の大きさと言えます。
年金純債務額は、財政検証で必ず公表されている年金のバランスシート(公的年金の給付と財源の内訳(バランスシート))を使うと簡単に計算できます。
具体的には、年金純債務額=過去期間に係る給付-積立金=将来の保険料+国庫負担-将来期間に係る給付となります。
つまり、年金純債務額とは、現在の年金債権者(正確にはすでに年金を受け取り始めている者及び年金はまだ受け取っていないものの加入実績に応じて支払われる者)に対して、これから彼ら彼女らに対して国が支払う予定の年金総額から過去に彼ら彼女らから徴収してきた保険料の総額を差し引いた金額です。
別の言い方をすれば、現在の年金債権者が自分が負担した保険料総額以上に受け取る年金受給金額の差額=得した金額になります。
一方、年金債権者、その多くは高齢者が得をするということは、誰かが同額を負担するということになります。つまり、これから年金制度に加入することになる若い世代や将来世代が支払うことになる保険料と税金(国庫負担)の総額から彼ら彼女らが将来に受け取る予定の年金受給総額を差し引いた金額で、要するに若い世代や将来世代が負担する金額となるのです。
そこで、年金純債務額(将来純負担額)を計算すれば、1,570+510-1,050=1,030兆円となります。
つまり、年金債権者が得をする裏側で若い世代が負担させられる金額は1,030兆円ということです。
実は、この年金純債務額はこれまで膨張する一方でしたが、今回はじめて減少に転じました。
これはマクロ経済スライドの適用による効果と考えられます。年金の世代間格差の是正にはマクロ経済スライドの適用が一役買っていることが分かります。