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株式会社TOKIOと丸亀製麺コラボで考える、アイドルの新しい「第二の人生」の形

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:株式会社TOKIOウェブサイト)

株式会社TOKIOと丸亀製麺が「うどんで日本を元気にプロジェクト」という新しい取り組みを開始することが発表されました。

参考:株式会社TOKIOが丸亀製麺と日本を元気に、城島社長の滑らかトークに国分&松岡副社長が驚き(会見レポート)

アイドルグループであるTOKIOが丸亀製麺のテレビCM等に起用される、という話であれば、まぁ良くある発表会でしょ、と思う方は少なくないと思うのですが。

今回の取り組みの面白いのは、「TOKIOのテレビCM起用」ではなく、4月に城島茂さん、国分太一さん、松岡昌宏さんの3人がジャニーズ事務所内に立ち上げた「株式会社TOKIOと丸亀製麺の企業間パートナーシップ」の発表会だったという点でしょう。

記者会見でも、プロジェクトの企画として「キッチンカー全国行脚」「うどん食育」「トッピング開発」などのアイデアが提示されていたようで、TOKIOの3人が単なる広告塔として起用されるわけではなく、「共創型パートナーシップ」という形で両社のコラボ企画のプロジェクトとして展開されていくようです。

今回の取り組みを見ていて興味深いのは、株式会社TOKIOの展開が、今後のアイドルにとっての新しい「第二の人生」の形として、ひろがる可能性を感じる点です。

本気の公式サイトが話題に

アイドルグループとしてのTOKIOは、2018年の山口達也さんの不祥事による対処を受けて音楽活動を休止していました。

さらに今年3月にはボーカルの長瀬智也さんが退所したため、通常であればグループが解散となっていてもおかしくなかったところを、あえて「株式会社TOKIO」を設立するという斜め上の選択をおこない、4月1日にガチのウェブサイトを開設するなど大きな話題になっていました。

参考:株式会社TOKIOが、想像以上に「会社」だった...。本気すぎる公式サイトが話題に

4月2日には、フマキラー社が株式会社TOKIOとしてのプレゼンを受けて製作した3人のテレビCMをオンエア開始し、株式会社化後も引き続き企業の期待値が高いことが確認されています。

参考:株式会社TOKIO企画 初CM!国分さんがクリエイティブディレクターに初挑戦 CMソングも制作

その上での、今回の丸亀製麺とのプロジェクト発表は、非常に大きいと言えるでしょう。

フマキラーの場合は、両社の関係が長いだけに、契約が継続するのは既定路線と見ることができますが、今回の丸亀製麺とのプロジェクトは、株式会社TOKIOが設立されたからこそオファーがきたということのようです。

会見でも国分太一さんが「やっと第一歩を踏み出したなと。会社ごっこではなく、本当に会社になったんだなと思ってもらえるように必死に全力で頑張ります」と発言されていたようですが、株式会社TOKIOが「会社」として本気でやっていくという宣言にもなった記者会見だったと言えると思います。

アイドルの選択肢が増えるかも

「アイドル」とはもともとは「偶像」や「崇拝される人や物」という意味の英単語ですが、日本ではどちらかというと英語ではポップスターと呼ばれるようなアイドル歌手という意味で使われることが多い単語です。

本来はアイドルには年齢制限はないとも言えますが、一般的には、日本で「アイドル」や「アイドルグループ」というと、若い世代を想定するもの。

アイドルグループも年齢を重ねていくことにより、解散や引退、メンバーの入れ替えをすることが普通となっています。

日本を代表するアイドルグループを多数輩出しているジャニーズ事務所のグループも、少年隊のように解散せずにグループとして名前が残っているケースはあれど、通常は年を経るとともに解散したり、活動休止をする形が増えていますし、競争が激しい女性のアイドルグループにおいては、若くして引退するアイドルも少なくないようです。

その際にあわせて語られることが多いのが「第二の人生」というフレーズです。

従来であればジャニーズ事務所のような組織に所属する「アイドル」は、事務所に所属し続けるか、退所か、という二択の選択が基本でした。

事務所が希望するアイドル活動なりタレントとしての活動が継続できるのであれば、事務所に継続して所属。

もしそれ以外の人生を歩みたいのであれば退所して独立、というのが基本的な選択でしょう。

しかし今回、TOKIOとジャニーズ事務所は、「株式会社TOKIO」を設立して、ある程度TOKIOがやりたいことを別会社として実施できる環境を作る、という新しい選択肢を作ったことになります。

株式会社TOKIOが登記されたタイミングでは、代表取締役は親会社であるジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が就任し、城島茂さんは代表権のない社長という位置づけのようですが、3人の実務経験やジャニーズ事務所側のガバナンスも考えると、両社にとって現実的な選択肢だったように思います。

参考:「株式会社TOKIO」登記簿が閲覧可能に 代表取締役は城島茂社長ではなかった

もちろん、ここまでの特別な扱いが許されるのはTOKIOならではであり、これから同様のケースがジャニーズ事務所で増えてくるかは分かりません。

スムーズに株式会社TOKIOの活動を立ち上げることができたのは、土木系アイドルや農業系アイドルとよばれることもあったTOKIOのユニークな特徴ゆえとも言えますから、簡単に誰もが真似できるやり方ではないでしょう。

ただ、少なくともアイドルの第二の人生の新しい選択肢が増えたというのは、アイドルをされている方々にとっても、ファンにとっても、事務所にとっても良いことであるように思います。

アイドルが自ら事業を立ち上げやすい時代

SNSの普及により、アイドルなどの芸能人が、芸能活動を通じて、ファンとSNSでつながり、関係を深めることで、直接ファンに支援してもらったり、ファンに応援してもらえる事業を立ち上げることは間違いなく容易になりました。

元SMAPの3人が立ち上げた「新しい地図」が、退所後も活躍を続けられた1つの要因として、変わらぬファンの応援の姿勢がSNSを通じて可視化されたことが大きかったのも記憶に新しいところです。

参考:元SMAP72時間テレビで振り返る、SMAPファンの凄さ

さらに最近では、アイドルや芸能人時代に確立したファンとの関係や、知名度を上手く活用することで、事業を立ち上げたりD2Cブランドの立ち上げに成功しているケースが増えています。

例えば、元AKB48の一期生で、こじはるとしても有名な小島陽菜さんは、2017年のAKB48卒業後に自身のブランド「Her lip to」を立ち上げ、順調に事業を拡大しているそうです。

参考:売上も利用者数も右肩上がり!自身のアパレルブランドが絶好調の小嶋陽菜さんに聞くD2Cビジネス成功のカギ

TOKIOの国分太一さんも、3月に入ってツイッターを開設。

すでに55万フォロワーを超えていますし、ツイートの反響も非常に大きいことが確認できますから、仮に個人で独立して何かを始めていたとしても大勢のファンが応援してくれた可能性は高いでしょう。

ただ、当然、独立して事業を立ち上げるのは、リスクもありますし大変です。

そういう意味で、「株式会社TOKIO」のように事務所の支援を受けながら新しい事業にも挑戦するというのは、1つの選択肢として面白い形と言えるでしょう。

事業センスに富んだアイドルが、事務所に所属しながら事業を拡大してくれれば、ファンもアイドルの退所を悲しまずに済みますし、グループ全体としての事業の多角化も見えてくることになるように思います。

ジャニーズ事務所において、「株式会社TOKIO」がTOKIOだけの特例になるのか、これからのアイドルグループの第二の人生の1つの定番になり得るのか。

日本において、アイドルが関連会社を作るケースが増えるのか。

まずは、今後の「株式会社TOKIO」の活躍に注目したいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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