Yahoo!ニュース

ウクライナ軍、大晦日にロシアのイラン製神風ドローン45機全て破壊:大統領「欧州最強の防空を更に強化」

佐藤仁学術研究員・著述家
ゼレンスキ―大統領(訪米時)(写真:ロイター/アフロ)

「ロシア軍は新年の花火の変わりに45発のイラン製軍事ドローンを大晦日に仕掛けてきました」

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

2022年10月からロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んで行き爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。11月に入ってからはイラン製軍事ドローンでの攻撃が激減したことから、英国国防省はイラン製軍事ドローンの在庫が枯渇したのではないかとの見解を示していた。

だが12月に入ってからはロシア軍はイラン製軍事ドローンで電力施設にも攻撃を行いオデーサ近郊の150万人以上の市民生活に打撃を与えている。2022年12月14日にはロシア軍は首都キーウにイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」13機が攻撃をしかけようとしてきた。それら13機のイラン製軍事ドローンはウクライナ領土防衛隊の移動式迎撃部隊によって、全て破壊。12月18日の夜には、ロシア軍がイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」でウクライナの民間施設に攻撃。ウクライナ軍、ウクライナ領土防衛隊が35機のうち30機を破壊。12月29日未明には首都キーウ、オデーサなど複数の都市にロシア軍による120発以上のミサイル、攻撃ドローンによる攻撃が行われた。キーウでは民家も犠牲になり3人が負傷したと市長が発表。さらに12月29日夜に再びロシア軍がイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」でウクライナ南部、東部、中央部の重要インフラに奇襲をしてきた。だがウクライナ軍は16機全てのドローンを迎撃して破壊。

ゼレンスキー大統領「2023年もさらに強化して効果的な防空」

そして大晦日の2022年12月31日にもロシア軍がウクライナ全土で45発のイラン製軍事ドローンで奇襲をしかけてきたが、ウクライナ軍が45発全てを迎撃して破壊したと公式SNSで報告していた。

ウクライナ軍は「ロシア軍は新年の花火の変わりに45発のイラン製神風ドローン(Iranian-made kamikaze drones)を大晦日に仕掛けてきました。45機全てを撃墜しました。ロシア政府のテロリストにウクライナでの決定権はありません。2023年は新しい勝利の年になります」と投稿していた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は2022年12月30日には国民向けの演説を行った。その中でゼレンスキー大統領は「ウクライナの防空はヨーロッパで最強になることができます。この防空はウクライナだけでなく欧州全体の安全保障を強化します。2022年は防空を維持し、さらに強化しました。新年の2023年もさらに強化して効果的な防空をしていきます」と力強く語り、徹底的にロシアからの上空からの攻撃に対峙していく姿勢を示していた。

12月後半になってからロシアから執拗な上空からのイラン製の軍事ドローンによる攻撃がほぼ毎日行われている。その多くが軍事施設だけでなく民間施設も標的にしている。防空の強化こそがウクライナと欧州の安全保障に直結している。

▼ウクライナ軍公式SNSでの報告

▼イラン製軍事ドローン「シャハド136」解説動画

▼大晦日の襲撃を伝えるインドのメディア

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事