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藤井聡太二冠(18)2020年度記録で勝数・勝率の2部門を制するも連勝は年度を突き抜け受賞対象外

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 将棋界のワンダーボーイ、藤井聡太二冠(18歳)。その2020年度全対局が終了しました。最終戦もまた、感動の名局でした。

 藤井二冠の今年度成績は驚異の44勝8敗(勝率0.846)でした。

 藤井二冠自身は昨日終局後のインタビューで次のように語っています。

藤井「今年度、タイトル戦にも出ることができましたし、本当に大きな舞台での対局というのを経験することができて。まあなんとか充実した一年だったのかな、というふうに思っています。今年度けっこう、自分にとっても印象に残っている対局多いんですけど・・・。特に昨年の6月、7月の対局はやはりなにか印象に残っているものが多い気がします。自分にとってもその2か月というのは、充実した期間だったのかなというふうには思います」

 勝数部門では藤井二冠は44勝で、3回目の年間1位が決まりました。

 現在43勝で2位は永瀬拓矢王座(28歳)。年度最終局の3月30日の長谷部浩平四段戦(王位戦リーグ)で勝てば藤井二冠と並び1位となる可能性が残されています。

 ちなみに将棋大賞が制定された1973年度以降、年間最多勝の平均は49.7勝。今年度はややロースコアということになります。

 歴代最多勝は羽生善治九段の68勝。これはさすがの藤井二冠もなかなか抜けない大記録だと思われます。なおこの部門で羽生九段は14回ほど1位になっています。まさにレジェンドというよりありません。

 勝率部門では藤井二冠が今年度も独走ぶっちぎり。4年連続4回目の勝率1位となりました。

 過去に年間勝率8割以上を3回記録したのは、藤井二冠の他には羽生九段だけ。4回目は史上初です。

 この驚異の高勝率について、藤井二冠は次のように語っています。

藤井「今年度は特にタイトル戦もあって、トップレベルで戦われている方との対戦というのが特に多かったと思うので、その中で結果を出せたことはやはり、自分にとっても自信になることかな、というふうに思います」

 将棋大賞勝率1位賞の平均は0.776。現在2位の出口若武五段(0.762、今年度あと1局)の成績は、藤井二冠登場以前であれば1位を争っていてもおかしくはない数字です。

 また藤井二冠の今年度勝率は1966年度以降で歴代4位。年度末にタイトルを保持している棋士としては、史上最高となります。

 連勝部門は藤井二冠が17連勝でトップ・・・なのですが。将棋大賞の規定により、年度末で連勝継続中のため、今年度の受賞対象とはならず、来年度に持ち越しです。連勝賞は14連勝を記録した澤田真吾七段(29歳)が初めての受賞を決めました。

 藤井二冠は次のように語っています。

「連勝については自分では特に意識することはないかなと思っているんですけど。ここ数か月はけっこう対局の期間が空いていて、対局に向けていいコンディションで臨めているのかなというふうには感じています」

 来年度、藤井二冠が連勝記録をどこまで伸ばせるでしょうか。もしかして、自身がデビュー以来無敗で打ち立てた史上最高29連勝を更新・・・なんてこともあるんでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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