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主要タイトルなしのMVP。今シーズンの柳田悠岐もそうなる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
柳田悠岐(福岡ソフトバンクホークス)December 1, 2015(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 これまでのMVPのうち、受賞したシーズンに主要タイトルを獲得していない選手――首位打者、本塁打王、打点王、盗塁王のいずれでもなかった野手、あるいは、勝利、防御率、奪三振、セーブのどれもリーグ1位ではなかった投手――は、延べ39人を数える。1リーグ時代に5人、セ・リーグとパ・リーグに17人ずつだ。セの17人中、2011年の浅尾拓也はセットアッパーしてリーグ最多の45ホールドを記録し、パの17人中、2016年の大谷翔平(現ロサンゼルス・エンジェルス)はDHと先発投手としてプレーした。

筆者作成
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 日本シリーズの終了後、柳田悠岐(福岡ソフトバンクホークス)もそこに加わるのではないだろうか。今シーズン、柳田は主要タイトルを獲得していないが、打率.342は2位、29本塁打と86打点は3位に位置する。パ・リーグでこの3部門ともトップ5の選手は、他にいない。また、柳田の出塁率.449は3位、長打率.623は1位。両方を足したOPS1.071は、2位の浅村栄斗(東北楽天ゴールデンイーグルス)に100ポイント以上の差をつけている。

 一方、セ・リーグも、OPS1.000以上を記録したのは、1.012の村上宗隆(東京ヤクルトスワローズ)だけだ。2位の青木宣親(東京ヤクルト)との差は31ポイントながら、出塁率.427と長打率.585はどちらも1位。こちらも主要タイトルはないものの、打率.307は5位、28本塁打は2位タイ、86打点は2位に位置する。セ・リーグにも、この3部門ともトップ5は、村上以外に皆無だ。

 ただ、柳田と違い、村上はMVPを逃すのではないか。そう考える最大の理由は――村上がMVPにふさわしくないと思っているわけではない――球団の順位だ。リーグ優勝の福岡ソフトバンクと対照的に、東京ヤクルトは最下位に沈んだ。2リーグ制となった1950年以降、主要タイトルなしにMVPを受賞した34人は、いずれもリーグ優勝した球団の選手だった。主要タイトルの有無を問わず、最下位の球団からのMVPは、2013年に東京ヤクルトで60本塁打を記録したウラディミール・バレンティン(現・福岡ソフトバンク)しかいない。

 福岡ソフトバンクには、盗塁王の周東佑京と投手三冠の千賀滉大もいるが、MVPにふさわしいのは柳田だろう。周東は規定打席に達しておらず、千賀も規定投球回を1イニング上回ったに過ぎない。

 なお、柳田は5年前にMVPを受賞している。この時は、打率.363で首位打者を獲得。34本塁打は3位タイ、99打点は3位だった。出塁率.469と長打率.631はともに1位で、OPS1.101は2位の秋山翔吾(現シンシナティ・レッズ)を160ポイントも引き離した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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