「アイススレッジホッケー世界選手権」今月29日~来月3日まで北海道苫小牧市で開催!
下肢に障害を持つ者が、スレッジ(そり)に乗り、両手に持ったスティックを扱いながら戦い、冬季パラリンピックの正式競技にもなっているのが、「アイススレッジホッケー」(2018年以降はパラアイスホッケーに改称)
目まぐるしく攻守が入れ替わるスピードと、激しい体のぶつかり合いから、アイスホッケーが「氷上の格闘技」との異名をとるのに対し、体と体だけでなく、スレッジ同士の激しいぶつかり合いが随所に見られ、激しい音を立てながらゴールを狙うアイススレッジホッケーは、「氷上の “超” 格闘技」と呼んでも過言ではありません。
そんなアイススレッジホッケーの「世界選手権」が、今月29日から来月3日まで北海道苫小牧市で開催され、ホスト国の日本が、チェコ、スロバキア、イギリスを迎え撃ちます!
▼ピョンチャンパラリンピックへの第一歩
今回開催される世界選手権は、トップ8が揃うAプールに続いて、二つ目のカテゴリーになる「Bプール」
前回(一昨季)の世界選手権Aプールで最下位になり、Bプールへ降格した日本にとって、今大会は復活を懸けた戦いであるのと同時に、開幕まで500日を切った「ピョンチャン パラリンピック」出場への第一歩になります。
【2016・アイススレッジホッケー世界選手権Bプール】
11月29日(火)
14:30 チェコ vs イギリス 17:30 日本 vs スロバキア
11月30日(水)
14:30 チェコ vs スロバキア 17:30 日本 vs イギリス
12月2日(金)
14:30 スロバキア vs イギリス 17:30 チェコ vs 日本
12月3日(土)
11:00 3位決定戦 14:30 決勝戦(終了後に閉会式)
参加資格を有しながら、ポーランドとオーストリアが出場を見送ったことから、4か国による1回戦総当たりの結果によって、最終日(3日)に順位決定戦を行うフォーマットで行われますが、、、
今大会で3位以上になれば、
ピョンチャンパラリンピック最終予選の出場権を得られる
だけでなく、、、
今大会で2位以上になれば、次回の世界選手権Aプール
(パラリンピック開催年は行われないため2019年)に再昇格できる
とあって見逃せない大会と言えるでしょう。
▼国際パラリンピック委員会が選ぶ最優秀チームに輝いた日本!
「長野パラリンピック」開催決定を受け、1994年に長野でチームが誕生し、日本のアイススレッジホッケーの歩みがスタートしましたが、最大のトピックスは、何と言っても、「バンクーバー パラリンピック」での銀メダル獲得!
決勝戦でアメリカに惜敗したとは言え、開催国かつ、ホッケー大国を自負するカナダを準決勝で破り、銀メダルを手にした快挙に、夏季と冬季大会の全競技を対象にした中から、国際パラリンピック委員会が選んだ「最優秀チーム賞」が授与されました。
▼バンクーバーのあとは厳しい戦いを強いられる・・・
しかし、その後の日本は、厳しい戦いを強いられてしまいます。
2014年の「ソチ パラリンピック」では、最終予選で力尽き、5大会連続パラリンピック出場はならず・・・。
また前述したように、一昨季の「世界選手権」ではAプールで最下位(8位)となったため、Bプールに降格して今大会に臨みます。
近年は厳しい戦いを強いられることが多い日本ですが、その要因として以下のような現状が挙げられます。
<1>パラリンピック開催国の躍進
2014年のソチパラリンピック開催決定を受け、代表選手を募ったロシアは、重りをつけたベストを着用して練習をするなど、厳しいトレーニングに注力したことで銀メダルを獲得。
一方、ピョンチャンパラリンピックのホスト国の韓国も、海外遠征を積極的に行った成果から、2012年の世界選手権Aプールで準優勝。その後、低迷期がありましたが、近年はアメリカ、カナダの二強とも好試合を演じるほどになっています。
<2>アイススレッジホッケーを取り巻く環境
カナダやアメリカでは、NHLのチームがアイススレッジホッケーチームをサポート。オフィシャルライセンスを与えられ、NHLの選手と同じジャージを着てプレーをしたり、大会を催したりするなど、強力なサポートを続けています。
またヨーロッパに目を転じると、今大会に参加するチェコでも、トップリーグのチームがアイススレッジホッケーのチームも有するなど、垣根を設けずに「ホッケー」を支えているのです。
▼日本の現状は?
一気に躍進を遂げたり、トップレベルをキープし続けている国がある一方で、日本では多くのパラリンピック競技と同様に選手の負担が大きく、仕事を優先しなければならない選手が大半。
そのため海外遠征はもちろん、国内での代表合宿さえ参加できないこともあり、やむなく第一線から退いた選手は少なくありません。
また練習時間なども制限されていることから、新たに代表入りする選手は数えるほどで、今大会にエントリーされた日本代表15選手の平均年齢は「41歳」。最年少の塩谷(しおや)吉寛でも「27歳」です。
【筆者より】一部表記に誤りがありましたので改めました。
日本アイススレッジホッケー協会も手をこまねいているだけでなく、競技の普及と新たな人材の発掘を目的に、各地で体験会を催しています。
しかし、関心を持って競技を始めようとしても、近隣在住の指導者や練習相手を探すのは困難な上、スレッジに乗ってプレーする競技の特性から、ほとんどのリンクで一般滑走の時間には練習をすることもできないのが現状です。
▼前哨戦では接戦を演じる
このような状況の中、個人練習を続けたり、リタイアした選手が復帰するなどして、先月末にチェコで開催された「4か国対抗国際大会」で準優勝。昨春以来となる海外での(日本代表として臨む)国際大会ながら、スロバキアに勝利し、チェコとは接戦を演じるなど、今大会で顔を合わせるチームとの “前哨戦" で好勝負を演じました。
しかし「世界選手権」は真剣勝負となるだけにキャプテンの 須藤悟は、「負けられない試合ばかりなので、しっかり気を引き締めて戦いたい」と話し、ライバル国との戦いに挑みます。
28日の開会式に続いて、29日から始まる「2016・アイススレッジホッケー世界選手権Bプール」は、全ての試合が白鳥王子アイスアリーナで開催されます。
(全試合入場無料。会場へのアクセスはこちらを参照)
会場内では、試合前や試合中に、アイススレッジホッケーのルールや楽しみ方。さらに選手たちの話題などのアナウンスがありますので、「氷上の “超” 格闘技」を、ぜひ体感してください!