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外食がようやく低価格シフト。昨年はむしろ客単価が天井までアップ、適正価格に戻りつつあるとも・・・ 

池田恵里フードジャーナリスト
(写真:アフロ)

現状の年収を見ると客単価は上げられない

外食の流れがようやく低価格化にシフトされたという。

アングル:外食業界で低価格シフト、節約志向とらえ顧客呼び戻し

業態ごとによって違いがあるとはいえ、昨年まで、客単価を上げすぎだったのではないだろうか。

ファミリーレストランの客単価のアップ傾向続く。変わらないg、価格設定のサイゼリヤ

民間給与実態統計調査を見ると、年収300万円台の年収が全体の年収階層のなかで最も多く、18・3%となった。

「民間給与実態統計調査」 平成27年9月 国税庁
「民間給与実態統計調査」 平成27年9月 国税庁

冒頭にも述べていることですが、年収300万以下は人口全体の41%(国税庁27年度)を占めており、外食、商品を扱う小売業では無視できない事柄である。消費者が財布の紐が堅いのは当然のことで客単価をあげて売り上げを維持することは持続しにくい。

同時に単身者の動向も見ておく必要があると思っている。

三菱総合研究所の2012年度によると

全国の20代から60代の独身男性の年収別割合は、「200万円未満」が4割強で最も多く、「200万から400万未満」が約3割で多数派は年収400万円未満の層といってもさしつかえないだろう

独身男性、年収300万台は値段のみならず、おいしさ、安心、安全もポイント、むちゃなことを

今回、年収300万の独身男性に食日記、並びにインタビューをお願いし、日本経済新聞社が2013年12月に調査した「独身男の家計簿」も併せてみてみたい。

年収400万未満、つまり300万以内の独身男性の意識と消費について、クロス集計しており、商品選びのポイントを2つ選択するようにアンケートを行っている。今回は食に関わる生鮮食品(肉・野菜・魚)、加工品、弁当・惣菜についてを選択し、グラフ化してみた。

「独身男の家計簿」日本経済新聞社2013年12月
「独身男の家計簿」日本経済新聞社2013年12月

生鮮食品について、選ぶ優先として「価格」がどの年収層も最も高いことは納得でき、300万円台は、おいしさを求める傾向が他の年収の低い層より強い。安心・安全についても200万円台と比較すると意識度が高いことがわかる。

「独身男の家計簿」日本経済新聞社2013年12月
「独身男の家計簿」日本経済新聞社2013年12月

加工品についても同様の傾向がある。

ということで、間違って解釈されやすいので、あえて申し上げますと、おいしくて、その上、安くは、ほぼ難しい。その上で外食のみならず、中食まで範囲を広げてみると、おのずとその価格が適正なのか、どうか、見えてくるように思う。

弁当・惣菜では

独身男の家計簿 おいしさが価格より300万台はうわまっている。
独身男の家計簿 おいしさが価格より300万台はうわまっている。

この図でもわかるように、300万台にフォーカスすると、おいしさが価格よりうわまっている。正直、多少、驚きがあったが、価格設定が外食より低めということから、このような結果となったのかもしれない。

実際 年収300万台、30代の独身男性に食生活日記、ならびにインタビューについて。

学生生活からのべ11年間一人暮らし31歳男性Eさん、フリー

Eさん「フリーは今後も続けるつもりです、後に家業を継ぎますので・・・」

食費について聞くと月に約4万円、この他に外食は月2万となっている。

外食について

外食での一人での利用は週2から3回、友人との会食は月2から3回で居酒屋を利用する。

Eさん「一人だと食べられない鍋、おでんは友人と注文します」

一人での外食利用だと、主にファーストフードで一回500円以内、近所にあることから松屋が多い。

惣菜、弁当について

Eさん「炒めものは自分で出来るのですが、揚げ物はやらないので、唐揚などは購入します」

男性としては、写真を見る限り、夕食のほとんどを自ら料理を作っている。

Eさん「アルバイトで飲食店にもおりましたので、調理は一応、できるんです」

冷蔵庫の中身は

冷蔵庫に入っている調味料を聞くと、30代、女性より多種多様で「白だし、中華の調味料では、ちょっとこだわりがありまして、オイスター、ナンプラー、甜麺醤、ウェイファーがあるんです」

和洋中の調味料がほぼ揃っている。

Eさん「味が単調にならないように調味料を揃えているんです」

買い物は近所の5分で行けるスーパー

スーパーでの買い物が多く、3日間、まとめ買いをして、肉、ご飯は小分けをして冷凍するという。

Eさん「昔、1週間、炭水化物ばかりを摂っていると、体調が悪くなったので、できるだけ野菜を中心にとっています」

買い物の後、レシピサイトを見て、料理を決め、クックパッドのサイトが便利だとか。

Eさん「いろいろな食材の料理が載っていていいですよ」

ということで、Eさんの休日、平日を食日記をお願いした一日を紹介。

木曜日のEさんの食日記
木曜日のEさんの食日記

写真での朝食は、弁当持参日であるが、この他の平日のランチを見ると、コンビニの弁当、そしてカップ焼きそばが登場する。

缶コーヒーを利用

朝は必ず缶コーヒーと饅頭が日課となっている。

Eさん「コンビニで珈琲を注ぐことって、時間もかかるし、面倒なんですよ」

朝食の定番
朝食の定番

本来、缶コーヒーは男性が購入することが多く、これに注目したのがコンビニである。顧客層を女性にまで広げるために、低価格であったものの、本格的なコーヒーを導入し、結果、広げることに成功したのである。おいしくて、その上、安くは、ほぼ「無理」とは言わず、「難しい」と申し上げたのは、それなりに美味しく、価格も抑えた商品が実現しているからだ。

一方、この写真でもわかるように、比較的、男性は女性より手が大きいこともあり、朝の忙しい時には「パッパ」と缶コーヒーとお菓子と同時に片手でレジまで持って行ける。男性にとって、片手で持って行けることが朝の「簡易さ」となっているようで、売り上げは以前より缶コーヒーは減少しているとはいえ、ニーズが残っているのだ。ちょっと脱線してしまいましたが・・・

さて話を戻すと、Eさんは、賞味期限が比較的長い調味料を豊富に常備し、一つの食材をいろいろアレンジできるように工夫している。その一方で、簡易さも考慮していることが写真、お話で伺え、最後「しばらく結婚するつもりはないんです」とEさんの言葉に妙に納得してしまった。

今回の日記、インタビューを通し、Eさんがいろいろ考えて食生活している様子が伺える。ほとんどの顧客もおそらくEさんのように日々、いろいろ工夫して食の商品を選び、価格設定も敏感に見ながら生活している。そのため低価格化ではなく、昨年、客単価を上げすぎたため、今の流れになったのではないだろうか。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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