有給休暇の取得率2年連続で世界最低 どうして日本人は働き過ぎるのか
「有給休暇を取るのは罪悪」
[ロンドン発]旅行サイト「エクスペディア・ジャパン」が世界30カ国18歳以上の有職者1万5,081人を対象に有給休暇の国際比較調査を実施したところ、日本が2年連続で最下位になったそうです。
韓国と日本の有給休暇取得日数は10日で同じですが、取得率では17ポイントも差が広がりました。
調査によると、有給休暇を取得することに「罪悪感がある」と考える日本人の割合は6割を超えています。日本人が休みを取らないのは(1)緊急時のために取っておく(2)人手不足(3)職場の同僚が休んでいないから――というのが理由だそうです。
念のため厚生労働省の就労条件総合調査をみてみると、2016年の有給休暇の平均付与日数は18.1日で、取得日数の平均は8.8日。エクスペディアの調査よりさらに少なくなっています。
筆者は日本の新聞社に28年間勤めましたが、土曜・日曜もまともに休んだことがなく、有給休暇なんて「夢のまた夢」。家庭も崩壊し、本当に悲惨でした。
「1年365日働く」ことが美学とされ、睡眠時間もどんどん減りました。上司から命じられた仕事をこなそうとすると、寝ずに働いても1日27時間は必要な状況になったことが、最終的に50歳で早期退職を選択した最大の理由です。
「セルフ・エンプロイド」の地獄絵図
5年余前からイギリスで言う「セルフ・エンプロイド(自営業)」になったわけです。「セルフ・エンプロイド」には法定の労働時間も有給休暇もないため、仕事を選んで引き受けないと、最低賃金を大幅に下回る時給で延々と働かされてしまうハメに陥ります。
アマゾンの荷物を運ぶ下請け運転手や出前サービス「デリバルー」(ウーバーイーツと同じようなサービス)の配達人も「セルフ・エンプロイド」。労働者の権利が全くと言っていいほど保護されていません。
アマゾンの下請け運転手が配達時間を守るため道端で用を足す姿が撮影され、ソーシャル・メディアにアップされているニュースを見て、悲しくなりました。
まさにグローバル化とデジタル化がもたらした地獄絵図です。「奴隷労働」という見出しが紙面を飾ることも珍しくありません。
休まずに働いた方が得
会社勤めの場合、「セルフ・エンプロイド」より労働者の権利は守られていますが、有給休暇を取得して上司に嫌な顔をされるより、黙って働いた方が自分の立場を守ることができます。結局は、休まずに働いた方が得という打算が働いてしまうのでしょう。
厚生労働省は10月を有給休暇取得促進期間に定め、「仕事休もっ化計画」を提唱しています。(1)土日・祝日に有給休暇を組み合わせて連休にする(2)会社と労組が協議して、労働者が自由に取れる5日間を除いてあらかじめ有給休暇を取る日を決めておく――ことが柱になっています。
有給休暇を取る日も会社に決めてもらわなければ休めないというのが日本の現実のようです。
一年の計はホリデーから
日本の祝日は16日。8日しかないイギリスに比べると8日も多いことも有給休暇の取得率が上がらない理由の1つかもしれません。日本が悪しき労働慣行を打破する一番の近道は国際労働機関(ILO)第132号(有給休暇)条約を批准することでしょう。
有給休暇条約を批准した国の取得率はほぼ100%です。イギリスは批准国ではないものの、今はまだ労働者の権利に手厚い欧州連合(EU)に加盟していることもあり、取得率は100%です。
イギリスでは「家族ファースト(第一)」「ホリデーファースト」が生活習慣として確立しています。ホリデーが命の次に大切なのです。年の始めに家族が集まってホリデーの日程を決めるという人も少なくありません。
「セルフ・エンプロイド」のフリーランスになって実感したのは、困った時に頼りになるのは家族であり、親友だということです。1年中自分の好きなように時間を使えるようになって、自分のやりたいこと、できることに徹底的にこだわることが大切だと初めて気づきました。
シャープや東芝を見ても分かるように、会社はいつおかしくなっても不思議ではありません。これからは会社にしがみついて生きる人生より、今日より明日の方が幸せに感じられるよう、取れる休みはしっかり取って不確実な未来に備えておく方が利口だと思います。
立ち止まってみると、人生には意外といろいろなチャンスが転がっていることに気付きますよ。
(おわり)