トランプ氏、日本に防衛費GDPの3%引き上げ要求か NATO欧州加盟国は3%へ引き上げ急ぐ
■2%をクリアしているのはNATOの23カ国
[ロンドン発]「北大西洋条約機構(NATO)の欧州加盟国が国防費の国内総生産(GDP)比3%目標について協議」「来年6月、ハーグでの首脳会議で国防費増額が合意される可能性があり、国家予算への圧力が強まる」と英紙フィナンシャル・タイムズ(12月12日付)が報じた。
現在、NATOの国防費目標はGDP比2%。欧州加盟国に負担増を求めるドナルド・トランプ米次期大統領が復活するため、3%への引き上げが焦眉の課題になってきた。予備協議に携わる4人の関係者がフィナンシャル・タイムズ紙に語った。
今月3~4日、ブリュッセルで開かれたNATO外相会合で極秘に協議され、当面は2.5%、2030年までに3%を達成する道筋を描いている。現在2%目標をクリアしているのはNATO加盟31カ国(軍隊を持たないアイスランドを除く)中23カ国だ。
■トランプが目の敵にしたメルケル
ロシアがクリミアを併合、ウクライナ東部紛争に火を放った14年に2%をクリアしていたのは米国、ギリシャ、英国のわずか3カ国。24年は推定でポーランド4.12%、エストニア3.43%、ラトビア3.15%、リトアニア2.85%、フィンランド2.41%と周辺国は一段と対露警戒を強める。
トランプ氏が第1次政権で目の敵にしたのは、ウラジーミル・プーチン露大統領を警戒しつつもバルト海の海底天然ガス・パイプライン「ノルドストリーム2」計画を進めたアンゲラ・メルケル独首相(当時)。そのドイツも国防費をGDP比で1.19%から2.12%に引き上げている。
今年3月、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は米紙ワシントン・ポストに「脅威が増大している今こそ国防費をGDP比3%に引き上げる時だ。帝国主義的野心と攻撃的修正主義はロシアをNATOや西側諸国、自由世界全体との直接対決へと向かわせている」と寄稿した。
■ポーランド大統領「米国とNATOなくして強い欧州はない」
「NATOがスウェーデンとフィンランドを迎えたことを歓迎する。ロシアは経済を戦争モードに切り替えた。年間予算の30%近くを国防費に充てる。プーチン政権は冷戦終結以来、世界の平和にとって最大の脅威となっている。米国とNATOなくして強い欧州はない」(同大統領)
第二次大戦以来、米国との「特別関係」を維持する英国はGDP比2.3%の国防費を支出。キア・スターマー首相は「GDP比2.5%を国防費に支出する道筋を示す」と確約するが、具体的な時期については明言していない。25年前半の戦略的国防見直しで決定されるとみられている。
第1次トランプ政権で戦略・戦力開発担当国防副次官補を務めたエルブリッジ・コルビー氏は「中国が戦争の準備をしているのは経験的に事実と思う。今後数年のうちに多面的な戦争や第三次大戦が起こる恐れがあるが、われわれはそれに備えていない」と中国を警戒する。
■第1次政権担当者「日本は防衛費を今すぐ3%にすべきだ」
「中国の経済力は驚異的。われわれができることとは桁違いだ。宝くじに賭けるより、主要な競争相手に最も重要な舞台で壊滅的な敗北を喫するのを防ぐ準備をした方がいい。米国がアジアから撤退すれば、中国がアジアを支配することになる」(コルビー氏)
コルビー氏は今年1月、シンクタンク、英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)での討論会で「日本は27年度に防衛費を国内総生産(GDP)の2%にすると言っているが、今すぐ3%にすべきだ」と注文をつけた。
ナンシー・ペロシ米下院議長(当時)が訪台した22年以降、中国は台湾沖で軍事演習を繰り返す。これに対抗し米国、カナダ、ドイツ、オーストラリア、日本の艦艇も台湾海峡を航行する。トランプ氏にとって真の競争相手はプーチンではない。中国の習近平国家主席だ。
ビジネスパーソンのトランプ氏はディール(取引)にこだわる。日本も欧州同様「3%」に真剣に備える必要がありそうだ。