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退学を考えている学生のみなさんへ:コロナ禍の学生支援のために:決める前に相談を

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ(素敵なキャンパスライフが待っていたはずなのに)(写真:アフロ)

コロナ禍の中、学生たちは悩み、退学を考える学生もいます。けれども、もう少しだけ、考えてみませんか。ぜひ、大学と相談してみてください。

■大学と新型コロナウイルス

新型コロナウイルスは、世界に影響を与えました。それでも、少しずつ店に客が戻り、学校が再開しています。小学校も中学校も高校も、毎日授業をしています。

ところが大学は、今も静まりかえっています。普通なら、平日はもちろん休日や夏休みだって、大学院生やサークル活動の学生たちがいて、大学はいつも活気があったのに。学生は原則入構禁止の大学もあります。

コロナ騒動の当初は、早々に休校を決めた大学は、世間から大英断と評価されたように思います。その後、小中高も次々と休校になる中、日本中のほとんどの大学が新年度から休校になりました。

そして、小中高が再開しても、大学は遠隔授業は始めたものの、学生たちのキャンパスライフは始まらないままです。

■大学が対面授業を始めない理由

小中高が始まっているのに、なぜ大学は通常の対面授業を行わないのでしょうか。

大学は、小中高よりずっと広い範囲から学生が集まります。大学による違いはあるものの、大規模大学なら全国から何千何万の学生が集まり、90分ごとに100人単位の異なるグループを作って、教室にぎっしり入ります。

海外からの留学生が多い大学もありますし、寮生が多い大学もあります。社会人入試で入学した年配者もいますし、教員の中には高齢者も大勢います。

大学は、小中高以上に、感染が広がりやすい環境ではあるでしょう。また、学生や教職員から感染者が出ると、世間からの偏見差別や誹謗中傷も起きてきました。

■大学生たちの悩み苦しみ

学生たちの悲痛な声も聞こえます。

初めて親元を離れ、一人暮らしを始めたのに、キャンパスには入れず、地元にも戻れず、毎日一人でパソコン向かい続けている学生もいます。

オンライン授業の良い面もありますが、苦しんでいる学生もいます。パソコンを見ていると、涙が出てくると語る学生もいます。

大学により教員により様々ですが、課題の負担が大きすぎるとの声もよく聞きます。友達もできずに寂しがっている学生も沢山います。

「もしかしてこの先生って存在しないんじゃないか?この授業受けてるの私だけでは?と思うようになっていきました」

「たった1度でいいから大学に行きたい、なぜそれが叶わないのかわからず苦しんでいます。」

「中間と期末課題を一気に出してくる先生もいます。あまりに毎日意味もなく泣き続け、苦しいと言っているので精神系の病院に行くことを母に勧められ、行こうとしています。」

「孤独と不安に押しつぶされそうで泣いています。」

「我々の孤立について顧みない大学には、もう不信感しかわきません。」

出典:大学生「もう限界!」、授業オンライン化の大混乱で孤独・睡眠不足・心身不調に ダイヤモンド20200804

私も大学関係者の一人として、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

■退学を考える学生たち

今月の立命館大学新聞の調査では、1割の学生が退学を考えていました。4月に行われたある学生団体の調査では、2割の学生が中退を考えていると報道されていました。

保護者の収入低下もあるでしょうし、アルバイト収入が激減した学生もあるでしょう。しかし、金銭的問題だけでもないでしょう。

大学中退問題に詳しい山本繁先生は、中退を「初期型」「失速型」「突発型」に分けていますが、今年度は1年生後半に起きる初期型中退が増えるのではないかと予測しています。

どの学年の学生も悩みが深いでしょうが、特に1年生の戸惑いは大きいと思います。

■今、退学を考えている学生さんたちへ

(写真AC)
(写真AC)

大学だけが人生ではありません。大学を中退して大成功を収めた有名人も沢山います。

けれども、あなたは大学で学ぼうと思って、入学してきたのですよね。特に1年生のみなさんは、まだ何も大学生活を味わっていません。

文句もあるでしょうし、失望もあるかもしれませんが、あなたは大学の日常の姿をまだ体験していないのです。大学の対面授業が再開し、様々な行事も体験した後で、もう一度考えても良いのではないでしょうか。

次々と課題ばかり出され、勉強についていけないと思っている人もいるかもしれません。でも平時で大学へ通っていたなら、何かわからないことがあれば、周囲の学生に聞くことができたでしょう。

小中高も大学もそうですが、先生の指示を一回だけ聞いて、さらっとみんながわかるわけではありません。周囲を見回したり、隣の人にちょっと教えてもらって、それでわかる人は大勢います。

教師が全体に説明するときも、戸惑っている様子が見えれば、再度説明したり、詳しい説明を付け加えたりもします。今は、そのようなことがないために、一時的にわからなくなっているだけかもしれません。

勉強に魅力を感じていない人もいるかもしれません。実は大学の遠隔授業も、大慌てで始めました。テレビの教育番組や放送大学の教材のように、完成度の高いものはできません。対面授業が始まったら、魅力度はずっと増すかもしれません。

先生が冷たい、大学は不親切だと感じている人もいるかもしれません。大学も、混乱の中でコロナ禍の活動を続けています。余裕がない教職員もいます。

私自身、授業や、学生ホールや、図書館や、研究室や、キャンパスの様々な場所で、学生のみなさんと雑談してきました。でも今は、ほとんどできません。雑談て、本当はとても大切なのですが。

お金の心配をしている人も多いでしょう。そろそろ後期の授業料を納める時期が近づきます。大学によっては、支援策を出しているところもあります。そうでなくても、納入期日に遅れたからといって、すぐに除籍する(大学をやめてもらう)ような大学は、まずないと思います。

お金のことも、ぜひ相談してみてください。待ってくれたり、分割にしてくれることもあります。様々な配慮をしてくれるのが普通です。様々な奨学金等もあります。

「相談」にくる学生さんの中には、すでに決めてしまってから来る学生もいます。しかしこれでは、相談になりません。ぜひ、決めてしまう前に相談にきてください。

相談とは、個別対応のことです。だから、相談に来て話をしてください(「相談」(カウンセリング)とは何か:学校でもビジネスでも全ての場で使える活用法:Y!ニュース有料)。

気持ちが落ち込んだり、訳もなく涙が出るような状態なら、うつ状態かもしれません。うつ状態の時に、退学のような重大なことを決めてはいけません。人生に関わるようなことは、心が元気な時に決めましょう。

1年生のあなたは、まだ大学を体験していません。先生との出会いも、友人とも出会いも、これからです。

大学の中には、後期も遠隔授業と決めたところもありますが、後期から対面授業を増やす大学も多いでしょう。新入生にとっては、本当の大学生活のスタートが遅れてしまいましたが、これからがあなたの大学生活です。

キラキラ輝くような素敵なキャンパスライフは、これから始まります。

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コロナ、退学の前に相談を:ご意見ご質問に答えて

このページへのご意見ご質問にお答えしました。「相談に来て下さいって、そのためにキャンパスに入れないんじゃないの?」

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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