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平成30年(2018年)から認識されるようになった「災害級の暑さ」令和は沸騰化の時代?

饒村曜気象予報士
猛暑・酷暑の街並み(提供:イメージマート)

最高気温41.1度

 平成30年(2018年)7月23日 、埼玉県・熊谷で最高気温41.1度を観測し、岐阜県・美濃などで観測していた41.0度を上回って国内最高気温を観測しました。

 この日、気象庁で行われた臨時記者会見で、会見者の竹内元章予報官が質疑応答の中で、「この暑さが一つの災害であるという認識があります」と発言しています。

 これをきっかけとして「災害級の暑さ」が流行語となり、その年のユーキャン新語・流行語大賞(現代用語の基礎知識選)10選の一つに選ばれています。ちなみに、10選の中の大賞は、平昌オリンピックで生まれた「そだねー」でした。

 災害級の暑さは、命の危険を及ぼす暑さということから、国民の暑さに対する心構えを変えたと言われます。

 熱中症対策を我が事としてとらえ、「不要不急の外出」かどうかを考えるようになり、政府は公立小中学校のエアコン設置に動いた、というのが、新語・流行語大賞「災害級の暑さ」の選定理由です。

令和は沸騰化の時代か

 「災害級の暑さ」が流行語となった平成30年(2018年)の翌年から始まった令和は、平成以上に暑い日が観測されています。

 令和2年(2020年)8月17日には、静岡県・浜松で41.1度を観測し、熊谷と並ぶ日本最高気温を観測しています。

 今年も、栃木県・佐野で41.0度という3位タイ記録を観測するなど、すでに8地点で40度以上を観測しています。

 7月7日に静岡県・静岡、7月29日に6地点(栃木県・佐野、群馬県・館林と伊勢崎、茨城県・古賀、埼玉県・熊谷、静岡県・天竜)、8月9日に三重県・桑名の8地点です。

 このうち、静岡・佐野・古賀・桑名は、初めての40度超えでした。

 今年の暑さの特徴として、これまでにない暑さを観測するところが多いことがあげられます。そして、過去最高に近い暑さが続くこれまでにない暑さです。

 例えば、最高気温が35度以上の真夏日の継続日数は、昨年までは、岡山県・髙梁市の24日(令和2年(2020年)8月9日から9月1日)があげられます。

 しかし、今年は、福岡県・太宰府市、熊本県・甲佐町、兵庫県・淡路市では、ともに、7月24日から猛暑日が続いており、8月14日で連続27日と記録更新中です。3地点とも、8月15日、16日、17日は猛暑日が予想されているので、連続記録はさらにのびそうです。

 また、海で囲まれている沖縄は、猛暑日になるまで気温が上昇することは珍しく、昨年まで、100年以上の観測記録がある那覇で17日しか猛暑日はありませんでした。

 しかし、今年は、7月13日に36.0度という、これまでの最高気温の記録を更新したのをはじめ、すでに8日も猛暑日となっています。これは、沖縄近海の海面水温が30度以上と高くなっていたため、夜になっても気温が下がらなかったことが影響しています。

 昨年7月は、世界平均気温が観測史上の最高気温を大幅に更新したことから、国連事務総長のアントニオ・グテーレスは「地球沸騰化」という言葉で地球温暖化に対する警鐘を鳴らしました。

 しかし、今年の日本は、観測史上一番暑かったといわれた昨年の日本を上回る暑さとなっています。

 かってない暑さに対し、最大級の警戒が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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