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日本代表、アメリカ代表戦を終え帰国へ…ワールドカップ取材日記7【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
試合後のフラッシュインタビュー。五郎丸は目に涙をためる。(写真:アフロ)

ラグビーワールドカップのイングランド大会が9月18日~10月31日まであり、ニュージーランド代表が2大会連続3回目の優勝を果たした。日本代表は予選プール敗退も、国内史上初の1大会複数勝となる3勝を挙げ、話題をさらった。

以下、日本テレビのラグビーワールドカップ2015特設サイトでの取材日記を抜粋(7)。

【10月10日】

トゥイッケナムスタジアム。受付の白いテントの下で試合のチケットを受け取ります。執務や記者会見参加や食事のできるメディアセンターへ行けば、やっておりました。サモア代表対スコットランド代表(ニューカッスル・セントジェームズスタジアム)。

スコットランド代表が勝てば、同じ予選プールB参加の日本代表の準々決勝進出への道が絶たれます。試合中、グロスターはキングスホルムスタジアムにはそのジャパンがいました。翌日のアメリカ代表戦に向け、練習と記者会見をおこなっていました。あとでわかったことですが、ジャパンの記者会見の直前にメディアセンターのテレビ(サモア代表対スコットランド代表を放送)はスイッチが切られたようです。

僕がトゥイッケナムに着いたころ、当該のゲームはハーフタイムを終えた頃でした。

「26―23」

日本代表を前に沈黙していたサモア代表が、日本代表を黙らせたスコットランド代表をリードしています。人間とは、わからないものです。

後半34分、スコットランド代表のスクラムハーフ、グレイグ・レイドローキャプテンが逆転トライを決めます。36―26。重要な試合(スコットランド代表は負ければ予選敗退の可能性も)の重要な局面(接戦の終盤)に、重要な活躍! 本物のエースの隊列に加わりつつあります。

もっとも、終始1対1と肉弾戦で持ち味を発揮していたサモア代表は続く38分に追い上げ。36―33。観戦者であろう日本人ファンの、ツイッターでの呟きが印象的でした。

「別に、日本のために戦ってたわけじゃないだろう。でも、ありがとう!」

ほどなくして、トゥイッケナムでのゲームも始まります。赤のウェールズ代表と、黄色のオーストラリア代表が戦います。勝った方が、レイドロー主将らスコットランド代表とぶつかるわけです。

終始、タイトな攻防。お互いどうにかスペースを見つけ、相手防御の手薄な区画を打ち落とそうにも、やはりお互い、守備網に穴ができません。目を引いたのは、オーストラリア代表フランカーであるスコット・ファーディーの「待ってました」と言わんばかりのジャッカル(嗅覚と技術)、ウェールズ代表の両ウイングのボールタッチ数の多さ(整理された戦術と個々の意識のシンクロ?)、もうひとつオーストラリア代表のモールの団結力(一般論として、指導と準備の賜物です)でしょうか。15-6。ノーサイド。

【10月11日】

グロスターはキングスホルムスタジアムでのアメリカ代表戦。ジャパンにとっての予選プール最終戦です。

予選敗退が試合前日に決まったなかで、メンバーをこれまでと大きく入れ替えて臨んだゲームでした。ある意味、チームの本当の意味での成熟度が問われるなか、殴られては殴り返す展開で勝利を納めました。28―18。

ノーサイド。記者席からスタンドの一番下に降り、選手たちの様子を見ます。グラウンドレベルでインタビューを受けていた五郎丸歩副将は、涙を流しました。

選手たちは大きな円陣を組みます。堀江翔太副将は「まだ次があるで」と2019年の日本大会の話をしたようで、リーチ マイケル選手は「帰った時、皆がどういう態度であるべきかを話しました」。具体的には「天狗になるな。近くにいる選手を大事にしよう」とのこと。

「五郎丸、涙の理由」

ミックスゾーンに集まる人々の焦点は、結局、そこになります。インタビューが流れて数分もせぬうちに、僕もそうした原稿の依頼を受けました。本人が現れるや…。

「悔しいですね。ベスト8が目標だったので。3勝はしましたけど、我々の目標を達成できなかったという…」

取り囲む記者の1人がこう問います。

――9月23日のスコットランド代表戦(グロスター)を10-45で落としたことが、ですか。

「いや、勝ち負けではなく、決勝トーナメントに行けなかったことが、です」

【10月12日】

午後は、日本代表の総括会見です。グロスター中心部からタクシーで10数分のところにあるホテルにて。会見とその後の囲み取材を通し、エディー・ジョーンズヘッドコーチが「次回、ジャパンの8強入りは厳しい」と断じ、リーチ マイケル主将が田中史朗選手からもらった印象的な言葉に「お前の考えは、甘い」を挙げ、堀江翔太副将がパナソニック式の守備ラインをジャパンに浸透させていたことを明かし、お開きとなりました。

会場を出れば、他の代表選手が荷物運びなどをしていました。普段着のマルク・ダルマゾスクラムコーチがフォワード陣と別れの抱擁。ラウンジには、選手数名が代表チームとは無関係の日本人男性と談笑。こちらはジョーンズヘッドコーチに「ありがとうございました」と会釈し、向こうは軽く一瞥。ひとつの終わりを感じました。

ホテルでタクシーを呼びます。前日に部屋へ泊めてくれた先輩記者の方とともに、グロスターの駅へ。ここからロンドンまで向かいます。車内での話題は「日本のメディアって、なぜか海外メディアからの日本の評価に興味があるよね」という真面目なものから「俺の電話番号、教えとくよ。何かあったらかけてきてね」という心温まるものまで多岐に渡りました。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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