土佐犬が小型犬にかみつき死ぬ...年間4000人以上が被害に遭う「危険犬種法」がない日本
KYODOは、神奈川県横須賀市の路上で7月、市内の無職男性(82)と散歩中の土佐犬が、犬の散歩中の女性(39)と小型犬のミニチュアダックスフントを襲ってかみつき、女性にはけがをさせ、ミニチュアダックスフントは死んだと伝えています。このため、田浦署は11日、過失傷害の疑いで土佐犬の飼い主を書類送検しました。
また、今月10日、熊本市で父親などと散歩していた4歳の男の子が犬に胸の辺りを複数回かまれて病院に搬送されました。その犬は、闘犬用として育てられていたそうです。警察は過失傷害の疑いも視野に捜査しています。
日本では土佐犬、ピットブルテリアなどの闘犬を飼育してはいけないという法律がありません。上述のような事件は、普通に歩いているだけで闘犬に襲われる可能性があるということを示しています。環境省の調査では、驚くべきことに2021年度は年間4000人以上が犬による咬傷事故の被害をうけています(犬舎の周辺より公共の場所の方が多い)。そのことについて、考えていきましょう。
土佐犬 ピットブルテリアなどの闘犬が悪いのか?
闘犬が人にケガを負わせたり、犬をかみ殺したりするなどの事件が起こっています。このような狂暴な性格の犬が悪いと思う人がいるかもしれません。
確かに、犬に襲われた人や犬は恐怖を感じ、実際、痛い目に遭っています。その一方で、飼い主が適切に飼養すれば、このような事件は起こらないのです。
日本での土佐闘犬の歴史は古く、鎌倉時代あるいは室町時代から闘犬が行われており、藩士の士気を高めるため土佐藩(高知県)で四国犬を使った闘犬が幕末の頃から盛んになったそうです。
闘犬は、飼い主によって土俵の中で喧嘩をするように訓練をされている犬なのです。どんな犬でも闘犬になれるわけではありませんが、喧嘩に向いた犬種(後で説明)を闘犬にします。
人は犬の改良をしているので、世界では200以上の種類があると言われています。そのなかには、つまり人で言えばボクシングや相撲、レスリングのようなものが好きな犬もいるのです。
一般的には、闘犬は飼い主が愛情ある訓練と飼育をしていれば、飼い主に忠実な犬です。喧嘩するように訓練されている犬を放つと、人や犬などを襲うことはあり得ることです。このような問題を起こす犬は、飼い主の飼育が適正ではないのです。
危険犬種法があるイギリス
闘犬は、飼い主が逃がさないよう飼育すれば、他の犬をかみ殺す、あるいは人に危害を与えることなどはしないです。しかし、それが出来ない飼い主がいるので、イギリスでは、危険犬種法(Dangerous Dogs Act)があります。日本には、このような法律はありません。
このイギリスの法律は、人や他の動物に対する攻撃性が高いとされる犬種に対して厳しい制限を課しています。具体的には、売買、譲渡、繁殖が禁止されている4つの犬種が含まれています。以下が禁止されている犬種です
1、ピットブルテリア (Pit Bull Terrier)
日本でも飼い主から逃げてニュースになっているので、知っている人も多いのではないでしょうか。下顎の発達した犬です。アメリカで改良された闘犬用の犬種で、ブルドッグのがっちりとした体格とテリアの性格を受け継いでいます。性格は忠実で愛情深い犬とされています。
筆者は、ピットブルテリアを診察したことがありますが、その子たちは、飼い主がちゃんと保定してくれれば、従順で速やかに治療ができました。ピットブルテリアのなかには、喧嘩しないように他の犬が来ないときに来院しているケースもありました。
2、土佐犬 (Japanese Tosa)
闘犬用として作られた犬種で、従順な性格であり警戒心が強い犬です。喧嘩をしているときも鳴き声をだしません。日本に土佐犬はいますが、数は少ないです。体重は90kgにまでなる子もいます。番犬には向いていますが、初心者や高齢の人には飼育が難しい犬です。
3、ドゴ・アルヘンティーノ (Dogo Argentino)
珍しい犬です。ドゴ・アルヘンティーノは、アルゼンチンで、イノシシ、ピューマ、ジャガーなどの大型の獲物の狩猟用に改良された犬です。疲れ知らずの体力があり、番犬としては、命がけで侵入者と戦うという性質を持っています。
4、フィラ・ブラジレイロ (Fila Braziliero)
珍しい犬です。ブラジルで、イノシシ、ジャガーなどの大型の獲物の猟のために改良された犬です。飼い主に対して忠実でやさしいとされていますが、見知らぬ人に対して警戒芯が非常に強くなるように改良されています。
これらの犬種は、どれも大きく、筋肉質で力強いため、見た目から怖いという印象を与えます。イギリス以外でも多くの国で違法とされています。
特定犬がある佐賀県
普段はおとなしい犬でも、飼い主が予期しない状況で咬傷事故を引き起こすことがあります。「佐賀県動物の愛護及び管理に関する条例」で特定犬を定めています。
特定犬とは、人に危害を加えるおそれがあるものとして定められており、以下の10犬種です。
1、土佐犬
2、秋田犬
3、紀州犬
4、ジャーマン・シェパード
5、グレート・デーン
6、ドーベルマン
7、セント・バーナード
8、アラスカン・マラミュート
9、マスチフ
10、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア(アメリカン・ピット・ブルテリア)
それ以外にも体高(背中の一番高い部分から地面まで)65cm以上の犬と、危険性(咬傷事故の再発など)のおそれがある犬を知事が指定しています。
これらの犬は、以下のように飼養することが佐賀県では決められています。
・咬傷事故や転倒事故を防止するために「おり」の中で飼養する
・鍵のかけ忘れや、扉の破損がないよう、日頃から注意する
・特定犬シールがあり、特定犬を飼養していることを明示する標識(シール)を訪問者等から見えやすい場所に掲示(貼付)する
まとめ
日本では飼養してはいけない犬はいません。
犬には、犬の性質があり、喧嘩が好きで疲れを知らない子もいるのです。そのようなことを理解せず、リードや首輪が外れて、犬に襲われる人や犬が年間に4000件以上あるのです。佐賀県のような条例が他の都道府県でも必要ではないでしょうか。
飼い主は犬の性質をよく理解し、犬や人にとって咬傷事故のようなかなしい事件が起こらないように配慮してほしいです。