20代女性が路上の強盗殺人で奪われた「大量の食べ物」の中身
北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)で、20代女性が強盗に襲われ死亡する事件が起きた。当局は捜査に乗り出したが、時期が時期だけあり、市民の間で不安が広がっている。
韓国デイリーNKは、恵山市安全部(警察署)が配布した「恵山市シンボ里◯◯路地で発生した強盗殺人事件共同捜査布告」という文書を入手した。(情報提供者の安全のため一部伏せ字)
(参考記事:美女2人は「ある物」を盗み公開処刑でズタズタにされた)
それによると、先月20日の午前、20代女性のシンさんが何者かにより殺害された。彼女は直接栽培した大豆を売るために市場に向かう途中で襲われ、首を絞められ頭部を何かで強く殴られた痕跡があったという。
シンさんの家族は安全部の事情聴取に、カーキ色のリュックと10キロの大豆が入った白い麻袋を背負って家を出たと述べたとのことだが、それがなくなっていた。安全部は、食べ物目当ての強盗と見て捜査に乗り出した。
北朝鮮では今月26日、各地方の人民会議代議員選挙(地方議会選挙)が行われるが、朝鮮労働党と内閣は、それに向けて統制を強化せよとの指示文を各地方の党委員会、安全部、保衛部(秘密警察)、人民委員会(道庁、市役所)などに下している。犯行はその直後に行われたことから、安全部は犯行に政治的意図がなかったかを含めて調べている。
市民の間でも政治的意図のある犯行を疑う人がいるようだ。
「事件発生当日は、代議員選挙の準備が本格的に始まった日だったことから、今回の事件を単なる殺人事件ではなく、政治的策動と見る人もいる。選挙準備期間中にこんなことが起きたのは偶然ではないという人もいる」(情報筋)
北朝鮮では、重要な政治行事の前後数週間は、一切の事件、事故の発生が許されない。故意でなくとも事故を起こした人には重い罰が下されるため、皆が皆、非常に慎重に行動する。そんな空気の中での凶行は、北朝鮮の人々政治的意図を疑わせるものなのだろう。
各人民班(町内会)に下された安全部からの布告を見た市民の間では、恐怖が広がっている。収穫を経て幾分和らいだとは言え、依然として飢えに苦しむ人が少なくなく、食べ物欲しさの犯罪が増えているからだ。
貿易に依存する経済の実態を無視したコロナ禍における国境閉鎖と貿易停止、国内の移動制限の強化、コロナ禍を利用した穀物流通の改悪など、深刻な飢餓は、金正恩政権の失政によるものに他ならない。