Yahoo!ニュース

最早金満球団ではなくなった?ヤンキースの慎重姿勢と田中将大との再契約の可能性

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ヤンキースと相思相愛と言われながら未だに契約合意できないDJ・レメイヒュー選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【未だメジャー契約ゼロのヤンキース】

 2021年を迎えても今オフのFA市場は停滞を続け、一向に活発化する動きがない。

 ここまで契約期間が4年以上で、平均年俸額1000万ドル以上の大型契約を結べたのは、メッツ入りしたジェームス・マッキャン選手(4年総額4060万ドル)の1人しかいない。

 MLBの移籍情報を中心に情報提供する『MLB TRADE RUMORS』で紹介している今オフFA市場のトップ10選手を見ても、所属先が決まっているのは、所属チームから提示されたクォリファイングオファーを受け入れたマーカス・ストローマン投手とケビン・ガウズマン投手の2人と、KBOからポスティング・システムを利用してパドレスと4年総額2800万ドルで合意した、金河成(キム・ハソン)選手の3人しかいない状況だ。

 こうしたFA市場の停滞ぶりを象徴する存在こそ、ヤンキースだろう。

 これまで潤沢な予算をふんだんに使い、必要とする大物FA選手を次々に獲得し、常にFA市場の主役であり続けたヤンキースだが、現時点でメジャー契約を結んだFA選手は1人もいないという異常事態に陥っている。

【最優先だったレメイヒュー選手とも未契約のまま】

 今オフにヤンキースから複数選手がFA市場に回る中、ブライアン・キャッシュマンGMは、昨シーズン首位打者を獲得したDJ・レメイヒュー選手との再契約を最優先に考えると公言してきた。

 しかし現在に至っても契約合意できておらず、現地時間の1月10日になって米メディアが、レメイヒュー選手がヤンキースとの交渉に痺れを切らし、エージェントに対し他チームとの交渉も進めていくように求めていると報じている。

 報道によれば、レメイヒュー選手としてもヤンキースとの再契約を望んでいるようだ。その一方で、彼が求める契約内容はJD・マルティネス選手がレッドソックスと結んだ5年総額1億1000万ドル並みの契約を希望しており、ヤンキースから提示されたオファーとはまだ開きがあるとしている。

 再契約が最優先事項だったレメイヒュー選手でさえ契約交渉に難航していることからも、今オフのヤンキースが相当慎重な姿勢に徹しているのは間違いないところだ。

【田中将大投手の契約交渉にも確実に影響か】

 当然のことだが、ヤンキースの選手補強はレメイヒュー選手との再契約だけではない。彼との契約交渉を重ねながら、色々なシナリオを考えながら他選手との交渉も重ねている。もちろん田中将大投手もその1人だろう。

 だが今オフの慎重な姿勢からも窺えるように、FA市場に回せるヤンキースの予算は、例年のように潤沢に用意されているわけではなさそうだ。つまり限られた予算の中で、最優先事項のレメイヒュー選手との再契約が決まらないと、他の選手に回せる予算が定まらないのだ。

 裏を返せば、ヤンキースが田中投手との再契約に回せる予算は、すべてレメイヒュー選手との契約交渉次第ということになる。

【まったく先が読めないFA市場】

 こうした優先事項の高い選手から処理していくというのは、ヤンキースに限らず、どのチームにとってもオフシーズンの重要な戦略だ。にもかかわらず、前述通り大量の大物FA選手が未契約の状態が続いているのだから、FA市場が活発化していないのは至極当然と言える。

 12月のFA市場の低調ぶりに、ある米メディアは「今年のFA市場は進捗状況が1ヶ月遅れ、例年の12月の状態が1月になるだろう」と予測していた。

 だが1月上旬を終わっても、その状況はほぼ変わっていない。今も米国内で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、2021年シーズンの実施に見通しが立たない状況が続く限り、FA市場もまだまだ先が読めそうにない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事