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最後は選手層とファンダメンタルの差で競合オランダを下す! 「侍ジャパンの一番長い日」

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

野球観戦歴ももうじき半世紀になるが、その中でも特筆すべきゲームだったと思う。

ホントは昼間のイスラエル対キューバ戦から観戦したかったのだが、家庭人としてのやんごとなき務めもあり、涙を飲んで夜のゲームのみの観戦とした。「1万6000円もするS席を奮発したのに」と、最初は忸怩たる思いだったが、観戦後はお腹いっぱいだった。

こうなりゃ、何時まででも付き合ったるわいと思いながらも、終電の時間と試合終了のタイミングが微妙になると、「なんとか終わりまで見て終電で帰りたい」という思いに駆られた。タクシーで帰宅すると1万円では済まないのだ。勝利の瞬間は、席を離れコンコースへの出口に近い場所に立って見届けた。スリーアウトとともに水道橋まで猛ダッシュ。「こんなに走れるのか」と自分でも驚いた。

試合は見どころ満載だった。バレンティンの1発にはド肝を抜かれたし、菊池の超人的なプレーも素晴らしかった。攻撃的なベースボールが好きなぼくは、序盤から送りバントを指示する小久保采配に辟易としたのだが、最終的には必要な場面で犠打をきっちり決められるファンダメンタルの差が勝負を分けたように思う。オランダは1点を追う8回裏に無死一二塁の好機を掴むと、さすがにこの場面では定石とおりに7番のスミスに送りバントをさせるもファウル。投球をバットで追いかけるようなその失敗の仕方を見ると、スタンドからでも「彼にはバントは無理だ」と分かった。案の定、ミューレン監督も同じ判断だったようで、ヒッティングに切り替えたがあえなく三振に倒れた。一方で、侍ジャパンは11回のタイブレークの無死一二塁で、この試合初打席の鈴木がきっちり犠打を決め、これが中田の決勝打を呼び込んだ。

また、上位打線に一流のメジャーリーガーがずらりと並ぶオランダも、投手陣ではWBCルール上限の球数を任せられるのはバンデンハークくらいで、小ギザミな継投を余儀なくされる展開に持ち込まれると、救援投手の層の薄さを最後には露呈した。総合的な戦力では、侍ジャパンに分があったと思う。

しかし、両軍の勝利にかけると執念と、終電をものともしない?ファンの熱い声援。やはり、WBCは面白い。日本時間の12日午前中に開催されたフロリダでのアメリカ対ドミニカ共和国戦もベースボールの魅力の真髄を味あわせてくれる好ゲームだったし、充実しすぎたベースボールデイだった。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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