韓国に後れを取る日本の処方箋-東京一極集中と対外開放を進めよ-
現状では購買力平価ベースで測った一人当たりGDPで韓国に抜かれている日本ですが、いずれ日本の名目為替ベースで測った一人当たりGDPでも韓国が日本を上回っても不思議ではありません。
小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」
韓国、すでに日本を一人当たり購買力平価GDPで追い抜き…数年内に名目でも逆転か (Business Journal)
思い起こせば、韓国の現在につながる躍進の原点は1997年のIMF改革であり、緊縮財政、インフレ抑制、金融改革、市場開放、財閥改革等非常に厳しい改革が実施されました。当然、韓国は一時的に大混乱に陥ったものの、その後の推移をみると、順調に経済が成長していることが分かります(だからこそ、一人当たりGDPで日本を追い越す勢いなのですが...)。
では、日本はこのまま韓国の後塵を拝していかなければならないのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
韓国の特徴の一つとして、首都ソウルへの人口と企業の集中をまず挙げられます。一方の日本は、地方創生を旗印として人口と企業の地方分散を図ろうとしています。これではせっかく東京の生産性が高くてもそれを活かすことができません。東京が稼ぎゆりかごとしての地方に回す。こうした仕組みとセットに東京への集中を促進すべきように思います。
さらに、国際貿易の促進は、競争促進、規模の経済、効率性の改善、新しい技術や知識の獲得等を介して経済成長を高めることが確認されていますので、少子化、高齢化、人口減少、デフレ、財政悪化等難問山積の日本であっても、経済の開放度を高め、海外経済へのリンクを強めていけばよいのです。
なお、日本企業の稼ぐ力の衰えは著しく、金融政策で人為的に円安誘導を続けるだけでは不十分であり、国際競争を強めることで今まで以上に海外企業と切磋琢磨し、企業の稼ぐ力を高めていかなければなりません。
実際、2017年現在の対外開放度(=(輸出額+輸入額)÷GDP)を比較しますと、日本28%程度であるのに対して韓国65%程度となっています(総務省統計局「世界の統計(第9章 貿易)」)。世界的に見ても、対外開放度が高い国ほど一人当たりGDPが大きくなる傾向にあることも知られています。そして対外開放度の高い国は、自国内での資源制約(国土面積、人口規模、市場規模、天然資源等)が大きい、いわば小国が多いことも特徴となっています。
つまり、日本は、バブル崩壊以降の経済停滞、人口減少、高齢化を経験することで、他国とのつながりを無視しては経済が立ちいかない小国に転落してしまった厳しい現実を認識する覚悟も必要だろうと思います。
しかし、日本経済と海外経済のリンクを一層強化することで、競争圧力が働き、資本や労働力、高度人材等はより競争力の高い産業分野に再配置され、効率的に利用されることになりますから、日本経済は往時の輝きを取り戻し、再度大国として復活できるはずです。
ただし、韓国がIMFから無慈悲な鉄槌を受けた直後同様、こうした調整には当然痛みが伴います。韓国はアジア通貨危機を契機としたIMFという外圧によらなければ改革ができませんでしたが、日本はどうでしょうか?
最期に蛇足ながら、日本でもようやく経済安全保障の議論が進んで参りましたが、守るべきところは守り、解放できるところは開放するなどメリハリをつけ、くれぐれも経済安全保障を隠れ蓑として保護貿易が横行しないことを切に願います。