ビットコイン急騰の仕掛け人はテスラだった。ゼネラルモーターズの投機の悲劇が繰り返される恐れはないのか
暗号資産(仮想通貨)ビットコインの価格が8日、急上昇した。一時は4万4800ドル(約470万円)程度と前日より15%近く上昇し、史上最高値を付けた。テスラの公表が伝わると、ビットコインは20分ほどで10%ほど急上昇。時価総額は8000億ドルを超え、テスラ株の時価総額を一時上回る場面もあった(9日付日経新聞)。
日経新聞によると、テスラは米国時間の8日朝に、米証券取引委員会(SEC)に提出した資料でビットコイン投資を明らかにした。当面の運転資金に必要としない現金の運用先について「多様化し収益を高めるよう投資方針を改めた」と説明。
テスラそのものの株価も2020年に急騰していた。そしてビットコインも今年に入り、日本時間の1月8日の朝に、一時4万ドルを超えた。これにはテスラの買いなども影響したと考えられる。投機的なビットコインの動きの裏にはテスラがいた。
その後、米国の次期財務長官に指名されたイエレン氏は19日の議会公聴会で、暗号資産(仮想通貨)に関わるマネーロンダリングやテロリストの利用等、犯罪に利用される点が課題だと指摘したことなどから、ビットコインは急反落となっていた。
しかし、1月29日の午前3時(米東部時間)に、イーロン・マスク氏がツイッターのプロフィールを編集して「#bitcoin」に書き換えたことで、ビットコインは3万3000ドルから一時3万8000ドルまで値が跳ね上がった。何かしらビットコインの投資に関わっていることを示唆して値をつり上げた格好だが、実際にテスラはビットコインに資金を投じていたのである。
テスラは成長投資のために20年に100億ドル以上の資金を調達していたようだが、当面の運転資金に必要としない保有資産の一部をビットコインに向けた格好となった。
これほど値動きの荒いものに資金を投じるというのは、ある意味、イーロン・マスク氏らしいともいえるが、この値動きの荒さによってビットコインの通貨としての意味合いは薄れ、投機対象とならざるを得ない。それだけリスクは大きいといえる。研究開発費に相当する金額を投機につぎ込んで大丈夫なのかと危ぶむ声も出ている。
テスラとイーロン・マスクとの関連性を見る上で、比較される人物がいた。
「GMの歴史から考察する、テスラの将来」
https://www.dhbr.net/articles/-/5375?page=2
イーロン・マスク氏はテスラ社の創設者ではない。宇宙輸送を可能にするロケットを製造開発するスペースX社を起業するなどしたあとで、電気自動車ベンチャーであるテスラ社に投資し、2008年10月には同社の会長兼CEOに就任した。
米国の自動車会社といえばゼネラルモーターズがある。ゼネラルモーターズの前身を創業したのは、ウィリアム・(ビリー)・デュラントとされる。デュラントは、馬車製造会社からの資金をつぎ込んで、ビュイックという名の業績不振の自動車スタートアップを買収した。その後、小さな自動車会社を新たに買収して社名をゼネラルモーターズに改めた。
しかし、デュラントは2度にわたり、ゼネラルモーターズから追いやられることになる。デュラントはウォール街の大物投機家ともなっていたのである。結果として、投機的な株取引などを続けたことでデュラントは破産に追い込まれている。これは事業会社の資金を投機的に利用した事例ともされる。
2018年に書かれた上記のレポートによると、デュラントの精神は、のちにシリコンバレーを成すものの中に再び湧き起こる。そして100年後、イーロン・マスクが、移動手段の未来はもはや内燃機関にはないと予見し、次の偉大な自動車会社を築いたとある。
まさかイーロン・マスク氏は違う意味でデュラントの精神を受け継いでいるといえるのであろうか。