「親として情けない」金正恩“お嬢様”の陰で漏れるホンネ
北朝鮮の金正恩総書記の娘、キム・ジュエさん。国営メディアでは「尊敬するお嬢さま」とだけ伝えられ、実名は明かされていないものの、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の複数の情報筋は、「ジュエ」という名前を持った女性に対して改名せよとの命令が下されたと伝えている。この情報が正しいとすれば、本名が「キム・ジュエ」である可能性は高いと言えよう。
彼女は先日開かれた朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の創建記念日を祝う宴会や閲兵式(軍事パレード)に姿を表しているが、彼女を見る国民の視線は冷ややかなものだった。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
多くの市民は、「お嬢さま」の登場に大きな関心を持ちつつも、一方で複雑な心境だという。というのも、10代の少女が、最高級の軍幹部たちよりも前面に立っていたからだ。
「普通の子どもなら閲兵式を見に行くことはもちろん、一生に一度でも軍の高位幹部に会うことすら難しい。親ガチャに大当たりしたおかげで父親(金正恩氏)と共に最高の礼遇を受けているのを見ると、親として情けなくなる」(情報筋)
もちろん、こうした発言を大っぴらにするわけはない。バレたらどんな酷い目に遭わされるかわかったものではないのだ。
(参考記事:「あまり美人に育たないで」北朝鮮の親たちが娘の将来を案じる理由)
また、金正恩氏とジュエさんが仲睦まじく話を交わす様子は、微笑ましさの演出のようだが、それを見た情報筋は「うちの子どもは飢えと寒さに震えている。彼女だけ最高の待遇を受けているのを見て、誰が喜ぶものか」と反感を示した。
庶民がどうあがいても越えられない壁を、彼女は生まれながらあっさりと越えてしまったことに、階級社会である北朝鮮の現実を突きつけられたということなのだろう。
また、年長者を敬うべしとする考え(長幼有序)が非常に強い北朝鮮では、金正恩氏が後継者として登場したときにも、「青二才のくせに」などと皮肉る空気が強かったと言われている。それが10代の少女がいきなり登場したとあっては、反発が生まれたであろうことは想像に難くない。
ちなみに、金正恩氏が自らの誕生日を祝日にしていないのは、謙遜しているからというよりも、そのような反発を意識しているからというのが「ホンネ」だとの見方も存在する。
彼女がどのような役割を担うかについては今のところ全くの不明だが、北朝鮮国内では「お世継ぎ」ではないかという不安の入り混じった噂が広がっているという。