2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

2022年10月にはロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136（Shahed136）」、「シャハド131（Shahed131）」で首都キーウを攻撃して、国際人道法（武力紛争法）の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。一般市民の犠牲者も出ていた。11月に入ってからはイラン製軍事ドローンでの攻撃が激減したことから、英国国防省はイラン製軍事ドローンの在庫が枯渇したのではないかとの見解を示していた。だが12月に入ってからはロシア軍はイラン製軍事ドローンで電力施設にも攻撃を行いオデーサ近郊の150万人以上の市民生活に打撃を与えている。12月14日にはロシア軍は首都キーウにイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」13機で攻撃をしかけようとしてきた。12月18日にはキーウにイラン製軍事ドローン35機が奇襲をしかけてきた。

ロシア軍のウクライナでの攻撃を支えている兵器の1つがイラン製軍事ドローンであることは間違いない。2022年12月17日には、ウクライナ国防省情報局のスポークスマンのアンドリ・ユソフ氏が、ロシア軍がイラン製軍事ドローンを追加で調達したことを地元メディアで伝えていた。

ウクライナ軍では各国から提供された「スティンガー」などの地対空ミサイルシステムや小銃、ライフル銃、英国が提供した近距離防空ミサイル「スターストリーク」などで上空からの攻撃ドローンを撃墜している。イラン製軍事ドローンが首都キーウに大量に襲撃してきたときには、キーウ警察の警察官も小銃で迎撃していた。

そして2022年12月21日、アメリカのバイデン大統領はウクライナ軍に広域防空用地対空ミサイルシステム「パトリオット」を供与すると発表した。ブリンケン米国務長官は「パトリオットミサイルは、これまでに提供してきた防空システムよりもかなり高い高度で巡航ミサイル、短距離弾道ミサイル、戦闘機を撃墜させることができます」と語っていた。

そんななか、フランスのメディアFrance24は、ウクライナ軍の防空部隊を報道していた。現在、手に持つタイプの地対空ミサイルや小銃で上空の攻撃ドローンを迎撃している。黒海を見渡せる建物の屋上からロシア軍の攻撃ドローンを検知したら迎撃を行っている。小銃では攻撃ドローンを破壊することはできても、大型のミサイルを迎撃することはできない。

そのウクライナ兵が「大型のミサイルではコンピュータが敵のミサイルを検知して、発射します。ここでは全て人間の兵士が攻撃ドローンやミサイルを検知して、それから人間が地対空ミサイルや小銃で迎撃しています。悪天候や夜などでは検知できないこともあります。パトリオットミサイルは戦場でのゲームチェンジャーになりえます。しかしパトリオットミサイルは十分ではないかもしれません。そのようなパトリオットミサイルはキーウなどの大都市に設置されるでしょうが、我々にも必要です」と語っていた。

▼フランスメディア「France24」で報道していたウクライナの防空部隊

ウクライナ軍では他にも自動車やトラックの後方部にライフル銃や地対空ミサイルを設置した自作の「移動式ドローン迎撃車」があり、上空からドローンを迎撃して破壊している。パトリオットでも、攻撃ドローンの迎撃や破壊もできる。だが大型のミサイルなどの迎撃に比べるとパトリオットのような高額なシステムでの攻撃ドローンの破壊はコストパフォーマンスは高くない。ウクライナ兵が「移動式ドローン迎撃車」に搭載したライフル銃や重機関銃で攻撃ドローンを破壊した方がコストパフォーマンスは高い。

だが人間の兵士がライフル銃や機関銃を持って迎撃するので、兵士らが攻撃の標的になる危険性がある。また動画の中でウクライナ兵が言っていたように、人間の兵士が上空の攻撃ドローンなどを探知しているので、悪天候や夜間には探知や迎撃することが難しい。そのような人的な要因で防空できずに民間施設やインフラに攻撃がされてしまい、一般市民の生活に打撃を与えることもある。コストパフォーマンスは高くないが、攻撃ドローンもパトリオットで迎撃した方が効果的である。

▼ウクライナ軍公式SNSで「移動式ドローン迎撃車」を紹介

▼広域防空用地対空ミサイルシステム「パトリオット」