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【英会話】I have to change my mind. って言ったら首を振られた なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほど仕事で英語を話していますが、ちょっと気を抜いてしまって頭に浮かんだ日本語を直訳して失敗することがまだまだあります。

 そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は読むと自然な英語を得られるお得なエッセイです。

おれは考えを変える必要があるよ。

 このあいだ、友人のRichと仕事終わりに雑談していた時のことです。最近なんか面白い本あった? って訊(き)かれたんですが、ちょうど「サピエンス全史」って本を読み終わってたんで、その話になりました。
 よく前半が面白いと言われる本ですが、わたしは後半のアダム・スミスのところがすごい面白かった。それは、ちょっと個人的な理由があって、アダム・スミスのところに私の長年の疑問の答えがあったからなんです。

 それは遠い昔、大学で哲学者の中村雄二郎教授のもとで現代思想(哲学)を修めていたときのこと、教授が「中世における最高の罪は〈貪欲〉、ダンテの言う盲目の貪欲だったのに、十七世紀には怠惰になったんだよ」とおっしゃったことから始まります。
 ちょっと考えると判りますが、これって正反対になってる。
 怠惰の反対は勤勉です。勤勉ってことは次から次に目標を達成していくわけですから貪欲なんです。つまり、十七世紀の美徳である勤勉は、中世の悪徳の〈貪欲〉と同じものになる。パラダイムシフトが起きてるんですね。
 なんでそうなったんですか? とすぐ訊いたんですが、教授、Cheshire catみたいに嬉しそうに笑うだけで教えてくれない。こういう時は自分で考えなさいってサイン。教えられた答えは忘れるけど、自分でつかんだ答えなら一生忘れないってやつです。
 それで、色々調べて考えたんですが、しっくりくる答えが見つからず、はや30年。答えはつかんでないけど、一生忘れない疑問になっていた。

 その答えが「サピエンス全史」のアダム・スミスのところにあって、ああ、そうだったのかと、膝を打った。そして、経済に対するマインドもちょっと変えなきゃと思ってRichに、

I have to change my mind.

と言ったんですが、Rich、さらっと首を振る。
 みなさん、どこがおかしいか気づかれたでしょうか?

 問題はchange my mind にあります。確かに直訳はわたしの心を変える なんですが、意味することはちょっとちがう。気が変わる って意味なんです。
 わたしもあっと思って、言いたいことをより具体的に考えてみると、わたしが変える必要があると思ったのは、経済に対する考え方ってこと。
 なら、こうだなと、

I have to change my way of thinking.

というと、Richはサムアップ。ぴったりくる言い回しだと太鼓判をもらいました。

 ふわっと表現して相手に解釈を任せる日本語と違って、英語はより具体的にきっちり伝えることを好む言語です。英語を使うことで、日本語もより正確になりますね。この辺りも英語を話す効用です。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

 あ、ちなみに、中世から近代へのパラダイムシフトの理由ですが、それは「サピエンス全史」をどうぞ。意地悪じゃありませんよ、自分でつかんだ答えなら一生忘れませんからね。今、身に染みています。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ日本語を英語にする方法で英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任。Native English Speakerのマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されるという経験を多々する。現在は独立し、英会話スキルだけではなく、Native English Speakerとうまく交渉できるスキル習得を目指した英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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