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ジダン解任の危機を乗り越えたレアル・マドリー。手繰り寄せた結果と、整えられた呼吸。

森田泰史スポーツライター
喜びを分かち合うマドリーの選手たち(写真:ロイター/アフロ)

レアル・マドリーを包んでいた喧騒が、鎮まった。

現在2位に位置するリーガエスパニョーラでは、前節マジョルカに0-1で敗れている。13度の優勝を誇るチャンピオンズリーグでは、2試合を1分け1敗と開幕ダッシュに失敗。ジネディーヌ・ジダン監督解任の噂が流れ、ジョゼ・モウリーニョ招聘の可能性が取りざたされた。

しかし指揮官のクビを懸けた戦いで、マドリーは勝利した。チャンピオンズリーグ・グループステージ第3節、敵地で行われたガラタサライ戦を1-0で制して、解任騒動に終止符が打たれている。

■期待感

昨季、2度の監督交代を決断した末に、フロレンティーノ・ペレス会長はジダン監督を呼び戻した。

3月に再就任した際、マドリディスタの間では期待感が渦巻いていた。チャンピオンズリーグ3連覇を成し遂げた効力は絶大で、ジダン監督特有のカリスマ性も相まって、必ず状況を巻き返せるという確信が生まれていた。

だが第一次ジダン政権のようにはいかなかった。クリスティアーノ・ロナウドのいない喪失感は拭えなかった。そこには大きく分けて、2つの意味がある。選手間のヒエラルキー、そして得点力である。

この数年C・ロナウドを頂点としたピラミッドは誰の目にも明らかだった。それに対して、C・ロナウドは結果で応え続けた。ゴールで、彼を頂点とする形が維持されていた。

C・ロナウドがマドリーに加入した2009年夏以降、彼とリオネル・メッシが常にリーガエスパニョーラの得点王を争っていた。そこに割って入ったのは、ルイス・スアレス(2015-16シーズン/40得点)のみである。

また、C・ロナウドを除けば、マドリーで得点王に輝いたのはルート・ファン・ニステルローイ(2006-07シーズン/25得点)が最後だ。

■前進

今季、マドリーの1試合平均得点数は1.5得点だ。過去12シーズンで、ワーストの数字である。C・ロナウドが在籍していたあの頃のように、勝利に値しないような内容でさえ勝ち点3を奪取してしまうような試合は、現在のマドリーでは起こり得ない。

それに応じて、中盤の負担が増している。トニ・クロース、ルカ・モドリッチ、カセミロ。この3選手は、ジダン監督の下で絶対的な存在だった。先のマジョルカ戦ではハメス・ロドリゲス、イスコ、カセミロが中盤を形成した。現地メディアで「かつてないほど攻撃的な布陣」などと形容されたが、これが機能するはずがない。

近年、フロレンティーノ・ペレス会長の攻撃的MFへの偏愛は度が過ぎている。クロースとモドリッチは、マドリー移籍後、セントラルハーフの地位を確立した。いま、フェデ・バルベルデがその系譜を継ごうとしているが、若い選手というのは時として安定感を欠く。時間が必要なのだ。

ガラタサライを下して、ジダン監督は今季の戦績を12試合6勝4分け2敗としている。カタルーニャ独立運動の余波で、10月26日に予定されていたクラシコは延期になった。呼吸を整えて、ジダン・マドリーは前進を試みる。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『WSK』『サッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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