Yahoo!ニュース

【対談企画】「”生産性”を考えよう」井上一鷹×倉重公太朗 最終回 これからの働き方

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

(最終回 これからの働き方)

倉重:これまで話してきたように、「働き方」や「生産性」についてずっと考えてきた井上さんだからこそ、これから世にでる若い人に対して言えることってあるんじゃないかなと思うんですけれどもどうです?

井上:分かりました。若者ということですね。もう、僕自体も別にそんなにまだまだ若者の気分ではいるんですけれども。

倉重:一応、就活生向けということで。

井上:最近、好きで話しているのが、集中ということをテーマにデータ取りをしながら、それを授業にしている身なので。先ほど来言っているとおり、実は1日人は4時間しか集中できないという学説があって。4時間集中して4時間コミュニケーションする。これが理想的なんだと思うんですね。

倉重:働き方としてですね。

井上:はい、僕の考え方ですけれども。じゃあ4時間頑張れると、集中できると。1日4時間だと1カ月で頑張って100時間ですね。1年で頑張って1,000時間なんですよ。で、ライフシフトしている100年時代だとか言われているんで、そういっても頑張れる、仕事という意味で頑張れる時代って50年ぐらいだと思うんですよ。多分、25から75ぐらいまで、今の若者は働くでしょう。そうすると50年、5万時間なんですね。

倉重:人生トータルで考えてということですね。

井上:意外に思われるかもしれないんですけれども、人生で何かを仕事として頑張れるのは5万時間しかないということを、逆に今考えてほしくて。

倉重:ですね。その5万をどう振り分けるのかという話ですね。

井上:そうです。僕は、多分、あと4万時間ぐらいなんですけれども。

倉重:まあ、そうですね。私も1.5万ぐらい使っていますね。

井上:そうすると、1万時間の法則ってありますよね。一つの事を極めるには1万時間かかるという。この1万時間の法則を是とすると、5万時間しか僕らは持っていないんで、どんなにうまく調整しても5個しかできないんですね。

倉重:そうなりますね。人生で5個のことしか極められない訳ですね。

井上:人生で5個しかできないと。じゃあ今、目の前で選んだ仕事は人生の5分の1をかけてもいいものなのかということを考えるべきですね。かけられると思うものに集中しないと時間がもったいないです。

倉重:全くその通りですね。今やっていることはなんのためにやるのかを考える。

井上:なので、頑張って集中しようじゃなくて、本当に集中しなくていいやつをやめない? ということを、そのやめる、集中しないものを決めるというのが人生の選択なので。

倉重:人生は「選択」の連続ですからね。

井上:なので、5万時間という貴重なものをこんなもんに割いてらんねえよと。

倉重:何しようかなって探すというよりか、むしろ不要なものに時間を使うのをやめるということですね。

井上:そうです。本当に、たまに、月に1回ぐらい、今、目の前のものは人生の5分の1をかけていいんだっけ? と。かけていいと思えるものにまい進したほうがいいなと思っていますね。

倉重:いいですね!

井上:本当にそう思います。データ取っていると、やっぱりずっと残るんで。

倉重:確かに。

井上:あ、この時間、超無駄だとか。

倉重:ある!ありますね!

井上:だんだんやっぱり年を追うごとにそれって後ろの人生が減る分、感じるじゃないですか。だからこそ、それを早く気付いて、その自分の人生を濃くする。大事なものに張るというふうにしたほうがいいんだなと思うんですよ。

倉重:なるほどねぇ。

井上:何か話が逸れてないですか?(笑)

倉重:全然問題ないです!

井上:僕、前に禅のお坊さんに聞いた研究で面白かったのが、35歳になったら急に起きることがあるそうです。何かというと、一番死亡率の高い競技って登山家ですと。登山家って死んだりするじゃないですか、亡くなったりするじゃないですか。で、だけど35歳を機に急激に死亡するような事故が減るそうなんですね。

倉重:へぇ〜、登山家の中で35歳というラインがあるのですか。

井上:そうなんです。これは、何でかというと、当たり前な話で、35歳になると人って昨日より今日、自分が体力的に勝っているという錯覚がなくなるらしいんですよ。絶対昨日より体力的には駄目だと。

倉重:むしろ落ちていると。

井上:そうです。だからもうドラゴンボールの感覚でいなくなるんです。

倉重:常に成長していると。

井上:「俺、行けんじゃね?」というふうに思わなくなるらしいんですよ。そうするとどうなるかというと、人は心技体でいうと体の部分がもう伸びなくなるんで、技術のほうに振るんですね。そうすると自分の体力とかはマネジメント対象になるんですよ。

倉重:なるほど。

井上:どうやって管理するかという考え方になるんで。で、なので、35歳から急激に人って自分のその体力とか、自分の予定とかリソースをどうやって管理するかということに興味が湧くらしいんですよ。

倉重:確かに!私ももっと管理しないとなぁ。。。食べ過ぎ・飲み過ぎてしまいます。

井上:本当に、絶対、頭打ちしているんで。だけど、まだまだ体力が伸びている、もしくは下がらない時にそのことを知れれば、より進化できるはずで。25歳ぐらいからそういうことを意識して、そういう管理能力を上げられたら、もっと強くなれるなと思って。

倉重:それは最強ですね。

井上:それに気付いたのが33だったんで。

倉重:それ10年前に教えてほしかったということですね。

井上:そうなんですよ。で、そんな難しいことじゃないんですけれども、もっともっと本当に10年後を振り返った時にしっくりくるものに自分の時間を張っていくかと。

倉重:そういうことですよね。

井上:それだけを本当に大事にしたほうがいいなと思っていますね。

倉重:例えば新卒の時は、本当に右も左も分かんないと思うし、どんな会社がいいとかも、人気会社のランキングとか大手がいいだとか、いろんな人に流されてというのが当然あるしむしろ当然だと思うんだけれども、じゃあ、いざ大手企業に入ってみて、希望のところに入ってみて、上手くいけばいいけれども、うまくいかないというか、あんまり自分に合わないなって悩んでいる人も多いですよね。

井上:そうですね。

倉重:でも、それだってその時間は、「あなたの人生の5分の1をかけるのに適してますか?」という問いをしたときに、それを別に探すためにどこに、例えばほかに転職するとか、当然、選択肢に入ってきますよね。

 そんな働き方をね。これから変わっていくという中での見える化、定量化。そして問題を考えて、非常にロジカルな思考をされている井上さんだからこそ言えることですね。

井上:ありがとうございます。

倉重:これまで若い人に向けてもってお話ししてもらいましたけれども、もうそろそろ時間が来ました。最後にまとめで「これは言いたいこと」というのを言えるコーナーがありますんで。

井上:もう5万時間の話が一番言いたいことなんですけれども(笑)でも、同じことを言うんですが、実は東京に高野山を作ろうと思って作り始めたので、まったく同じことを、実は高野山に僕は、去年このぐらいの時期に行ってきたんですよ。「高野山を作る」って言って、高野山に行ったことがないとやばいなと思って。

倉重:確かに「行ったことないのか」と突っ込まれそうですね。

井上:住職に、もう端的に人はどうやったら集中できるかを聞いたんですね。そうしたら、「如実知自心」って仏教用語なんですけれども、如実に自分の心を知るという仏教用語を教えてくれたんですね。これはまさに同じことを言っていて。自分の心を知らないやつは集中できないって言っているんですよ。逆に言うと、何がしたいかを語れないやつなんか、集中できないって言っているんですよ。

倉重:なるほど。真理ですね!

井上:だから「どうやったら集中できんの?」って聞かれたらいろんなことがあります。そのCO2濃度下げたほうがいいねとか、こういうのはすごく大事なんだけれども枝葉末端で、一番奥のコアにあるのは「マジでやりたいことを知ること」なんですよね。

倉重:ですね。自分の好きなことをやっているかどうかが大事ですね。

井上:そう。それを1200年前から言ってんのがすげえなと思いまして。

倉重:なるほど、そうですよねぇ。

井上:やっぱり、芯食った、その自分の人生に集中するみたいなことをテーマに事業を作っていきたいなとは思っていて。なので、自分自身もそうしなきゃいけないし、みんながそうできるような空間であり、デバイスでありを作っていきたいと思っていますね。

倉重:いいですね!

井上:これはいい話なんですよ。

倉重:素晴らしいね、自分で言った(笑)

井上:これはいい話です!(笑)

倉重:前回の対談もちょうど森本千賀子さんという元リクルートのスーパー転職エージェントみたいな人だったんですけれども、やっぱり時代も変わってきて、いろんな会社が潰れたりもするかもしれないし、事業がなくなったりもするかもしれないし、1個の会社でいるというよりかは、いろんなところに行ったらいいというか、こういう時代の中で強い人というのは自分のやりたいことを自分からやっている人だって言ってました。

  井上さんと森本さん、全く立場の違うお二人ですが、最後の締めは同じことを言っているんですよね。

井上:絶対そうですよね。

倉重:多分、全然分野は違いますけれども、何か真理だろうなと思いますね。

井上:うん。そこ本当にやっぱ面白いものに、楽しいという。これもちょっとまた話が長くなっちゃうから端折りますが、前に、研究で面白かったのが、その組織において何をモチベーションに働いていますかというのを1人ずつに聞いていったときに、6パターンあるんですが、1番いいのは「楽しい」って言っているやつらしいんですよ。

倉重:なるほどね。それは如実に感じます。

井上:楽しいって言っているやつの比率が高ければ業績がいいらいいんですよ。でももう全てがやっぱり楽しいかどうかで仕事を選んだほうが、会社にとっても個人にとってもいいんだなということですね。

倉重:最高ですね。

井上:何かそういうきれい事半分ではあるんですけれども、そうできるようにみんな頑張るということが大事かなという。

倉重:井上さんみたいに楽しく働く人が増えると、日本もきっと良くなりますね。

井上:その裏ではやっぱり大変な思いもしているんだと思うんですよ。最初から楽しいものを見つけるというのは難しいので。楽しい位置に自分を持っていくために、陰の努力も含めて楽しいようにできることを戦略的に自分で勝ち取っていこうよということですね。

倉重:楽しんでいる、というのは水面から見える上部の部分だけだったりしますからね。その実、水面下では足はめっちゃこいでいるわけですからね。井上さん自身もコンサルから転職して、今みたいな自由な働き方を手に入れてますね。

井上:でも自由に、そういうふうに働かせて頂いてると思いますね。うちの会社はすごくそういう会社です。

倉重:そうやって楽しく働くというのも、最終的には集中、数値化で結局裏付けられてくると思うので。自分の働くということを数値化して考えると良いですね。そういう人が増えてくるとまた日本も良い方向に向かっていく気がします。要は真面目な日本国民はより改善できてくるんじゃないのかなというところですかね。

井上:そう思います。

倉重:どうも、じゃあ今日はそんな感じで締めたいと思います。今日はありがとうございました。

井上:ありがとうございました。(おわり)

【対談協力】井上一鷹

JINS JINS MEME事業部 事業統括リーダー Think Lab兼任

大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。JINS MEME Gr マネジャー、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。最近「集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方」を執筆

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

倉重公太朗の最近の記事