クリオグロブリン血症の症状と治療|皮膚の紫斑に要注意
【クリオグロブリン血症の基礎知識と分類】
クリオグロブリン血症は、血液中の特殊なタンパク質(免疫グロブリン)が低温で固まってしまう珍しい病気です。この病気は1933年にWintrobeとBuellによって初めて発見されました。
この病気は大きく2つのタイプに分けられます。1つ目はI型で、単独の異常タンパク質が関与するもの。2つ目は混合型(II型とIII型)で、複数の異常タンパク質が関与するものです。
I型は血液の病気が原因となることが多く、血管内で血液が固まりやすくなる特徴があります。一方、混合型は免疫系の異常による血管炎(血管の炎症)が主な病態となります。
この病気の原因としては、血液の病気(多発性骨髄腫やリンパ腫など)、自己免疫疾患(シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスなど)、慢性的なウイルス感染症(C型肝炎など)が挙げられます。
特にC型肝炎ウイルスによる感染は、これまで混合型クリオグロブリン血症の主な原因として知られてきました。しかし、最新の抗ウイルス薬の登場により、C型肝炎関連の症例は減少傾向にあります。
【特徴的な症状と診断方法】
最も特徴的な症状は、皮膚の紫斑(しはん)です。特に足の部分に現れやすく、重症化すると皮膚が壊死を起こすこともあります。
I型では寒冷による症状が強く、指先や足先の循環障害が起きやすいのが特徴です。レイノー現象(寒冷で手足の指が蒼白になる症状)や皮膚潰瘍を伴うことがあります。
一方、混合型では関節痛や筋肉痛も伴うことが多く、時にリウマチと間違われることもあります。また、末梢神経障害による手足のしびれや、腎臓の障害を起こすこともあります。
診断には血液検査が重要で、37度で採血した血液を4度で保存し、タンパク質が沈殿するかどうかを確認します。また、補体(免疫系のタンパク質)の低下やリウマトイド因子の存在なども診断の手がかりとなります。
診断の際は採血の温度管理が極めて重要です。適切な温度管理がされていないと、偽陰性となる可能性が高くなります。
【最新の治療法と今後の展望】
治療は原因となっている病気に応じて選択されます。
C型肝炎が原因の場合は、抗ウイルス薬による治療が基本となります。最新の直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は、95%以上の治療効果があると報告されています。
血液の病気が原因の場合は、リツキシマブという抗体薬やステロイド薬、血漿交換療法などが用いられます。特にI型では、寒冷を避けることも重要な治療の一つとなります。
症状が重症な場合は、ステロイドパルス療法(大量のステロイド薬を短期間で投与する治療)や血漿交換療法が行われます。
近年では、CD38という分子を標的とする新しい治療薬の臨床試験も進められており、今後の治療成績の向上が期待されています。また、低用量インターロイキン2という治療法の研究も進んでいます。
自己免疫疾患が原因の場合は、コルヒチンやメトトレキサートなどの免疫抑制薬が使用されることもあります。
治療効果は原因や病型によって異なりますが、適切な治療により多くの患者さんの症状改善が期待できます。特に、C型肝炎関連の症例では、最新の抗ウイルス薬の登場により予後が大きく改善しています。
参考文献:
1. Cacoub P, Vieira M, Saadoun D. Cryoglobulinemia — One Name for Two Diseases. N Engl J Med. 2024;391:1426-39.