「M-1」戴冠まであと一歩。「オズワルド」を衝き動かしてきた屈辱
「M-1グランプリ2021」は「錦鯉」が優勝しました。
ただ、優勝候補筆頭と目され、ファーストステージで1位となったのは「オズワルド」。最終的には戴冠することはできませんでしたが、これでもかと低いトーン、ゆっくりしたリズムから始め、最後の爆発とのコントラストを作っていく。
2005年王者「ブラックマヨネーズ」を思い起こさせる4分の使い方を見せ、審査員をうならせました。
今年4月に更新したYahoo!拙連載でインタビューをしましたが、そこでは今大会への情熱を語っていました。取材メモを振り返ってみたいと思います。
伊藤:19年、20年と決勝に行って、本当だったらそこから仕事が増えるはずだったんですけど、そのタイミングで新型コロナ禍になって。
ただね、もしコロナ禍がなくても、そんなに呼ばれなかったと思います。
これは卑屈になってるとかじゃなくて、一緒に出たファイナリストに比べて明らかに呼ばれる番組が少ないですしね。特に19年は、順位としては5位で「ニューヨーク」さんと同じだったんですけど、そこからの仕事量が全く違いましたから。
ファイナリストとして“抱き合わせ”というか、みんなで呼ばれるような場には呼んでいただきましたけど、僕らだけというのはなかなかありませんでした。
コロナ禍でそこが見えにくくなった部分もありますけど、自分らとしてそこは明確に感じていました。
でもね“かといって”ということも思いました。
それが事実であり、焦っても仕方がない。地道にやっていくしかない。やっと最近になって少しずつグラデーションのように、焦りの色が薄まってきました。
畠中:19年に「M-1」決勝に出るまでは、とにかくファイナリストを目標にライブにこれでもかと出てきました。そして、決勝に出てからは気持ちがまた変わりました。
「M-1」で優勝したら、一生漫才師としてやってもいい証をもらえる。変な言い方ですけど、漠然と、でも、しっかりとそれを確信するようになりました。
もちろん、この仕事はそれで何かが保証されるわけではないんですけど、頑張ればこの先も漫才を続けていける。その楽しさが「M-1」にはあるんだろうなと。
そして「M-1」優勝を目指して作るネタと、ただただ二人で面白いものをやるネタでは見える景色もまた変わってるんだろうなとも思っています。
妙にカッコつけた言い回しになってますけど(笑)、それを見るためには優勝しかないですから。なんとか、そこにたどり着きたいと思っています。
この日は朝からの取材で、畠中さんが定刻より遅れて取材場所に来ました。最初から平謝り。こちらを待たせてしまって申し訳ない。終始、その気持ちを表しながらのインタビューとなりましたが、そんな気持ちからか、いつも以上に二人がいろいろな思いを吐露する内容にもなっていました。
伊藤:「M-1」で優勝したら、これをやりたい。それはね、今はまだ特にないんです。優勝することと売れることは別もんなんで。
でも、一つ間違いないのは、優勝したらそこで自分たちの「M-1」が終わる。終えることができる。
その先は細かく考えてないですけど、まずはそれなのかなと。もちろん、メチャクチャうれしいと思います。想像できないくらいうれしいと思います。でも、それを上回るくらい「やっと終わった…」が来るのかなと。
まだ物語は続くことになりました。そんな簡単なものではない。それが圧倒的な事実ではありますが、今後、二人がどんな歩みを見せていくのか。それをしっかりと注視していきたいと思います。