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反骨精神を武器に、その思いをメロディアスに昇華する新しい才能、電波少女

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
電波少女(ハシシ、nicecream)

ネットシーンで注目されインディーズで活躍する、MC担当ハシシとパフォーマンス&ボタンを押す係担当のnicecreamによる、要注目の2人組ラップ・ユニット、電波少女(でんぱがーる)。

まずは、5/10付オリコン・デイリー・チャート10位を記録した7曲入りEP『パラノイア』〈redrec〉に収録された「笑えるように」を聴いてみて欲しい。感情をえぐるよう解き放たれるリリックの魅力。ヒップホップというよりロックに近い、メロディアスなトラックによって掛け合わされる“2016年の時代感”。広い世代へ伝わるであろうキャッチーで切ない名曲だ。

「『笑えるように』は、自分たちの音楽性の振り幅を伝えたくて作った曲です。あえて毛並みの違うロックな曲をメインに持ってきて、ヒップホップに興味がない人にも聴いて欲しいなと思いました。もともとNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDからヒップホップにハマったんです。そこからKAMINARI-KAZOKU.やTWIGYを好きになって妄想族やMSCを聴くようになりました。文系っぽい降神やNujabesも好きです。今は、海外のポップスよりなロックバンドも好きですね。マルーン5やブルーノ・マーズとか。」(ハシシ)

電波少女は、音楽シーンで注目されているティーンエイジャー、ぼくのりりっくのぼうよみをいち早くフックアップした存在であり、SEKAI NO OWARIなどを好きなロックキッズへも届くであろうポップセンスを持つポテンシャルの高さに注目したい。

結成は2009年、インターネット動画投稿サイトでの投稿をきっかけに個性派MCが集まり、電波少女は誕生した。幾度のメンバー交代を経て、現在のスタイルへ落ち着いたという。そもそもハシシとnicecreamの出会いは、九州での高校時代にまでさかのぼる。

「宮崎県の日南市出身です。高校の頃、外観がお化け屋敷みたいなカラオケ喫茶があって、オーナーの方に相談しつつ、自分たちで機材運んで改装してクラブっぽい見た目にして拠点にしたのが活動のはじまりですね。その後、2009年にネットシーンで出会った人たちと電波少女を組みました。」(ハシシ)

「ハシシとは高校が一緒で、興味本位でヒップホップクルーを組んだんです。最初はみんなDJをやってました。その後、ダンスをやりはじめて、気づいたら電波少女の正式メンバーになってました。」(nicecream)

誰もが知るようなヒット曲が生まれづらくなった昨今のヒップホップ・シーン。しかし、テレビ朝日で放送中のラップバトルをテーマとした人気番組『フリースタイルダンジョン』の大ブレイク。ヒップホップ文化におけるラップという表現手段が再び注目されている。とはいえ、電波少女はストリート発のハードコアなラップ・シーンとは真逆とも言えるネット文化から登場した。ゆえに、瞬発力を問われるラップでのフリースタイル・バトルよりも、ロックバンドやアイドルもライバルとなるシーンにおいて、作品力で闘いを挑んでいることが興味深い。

「先輩たちはハーコー(ハードコアヒップホップの略)な感じだったんです。でもそういう縦社会に疲れてしまって……。辞めようかなと思ったときにネットシーンを知って、みんな楽しんでるようにみえたんですよ。それでラップを投稿するようになりました。地元だと、ライブをしても友人関係以外になかなか広がらなかったんですね。でもネットだと、知らない人からリアクションをすぐに貰えて嬉しかったんです。」(ハシシ)

その後、上京してライブ活動も定期的に行っていた電波少女。2013年末にYouTubeにアップした、鬼才SHAKABOOZがトラックを提供したナンバー「ボウバク0」にもやられた。ハシシのラップとともに物語性を感じさせるダーク・ファンタジーな世界観は、同じくインターネット動画投稿サイト出身のロックアーティスト、米津玄師にも通じる匂いを感じたのだ。

作品に込められた、開かれたポピュラリティを感じさせるメロディー・センス。しかし、根底にあるのは、うまくいかない現実への憤りを表現した怒りにも通じる感情。楽曲を生み出すハシシは、自らの音楽性を語るうえでロック的メンタリティが欠かせないと語っている。

「新作EP『パラノイア』は“被害妄想”をテーマに、いろんなシチュエーションで歌詞を書いてます。そもそも、電波少女の曲は被害者ぶっているところがあって。辛いことをシーンや環境や他人のせいにしたり、“でも負けない!”みたいな反骨精神が好きで。これまで、自分が好きなアーティストで良いなって思う曲はそんなナンバーが多かったんですよ。ロックフェスにも出たいんです。日本でやる以上、その層を掴まないと広がりって難しいですよね。純粋に、自分たちの音楽がどこまで通用するかを試してみたいです。」(ハシシ)

「僕は、ライブにしか登場しないので良かったらライブを観にきてください(笑)。」(nicecream)

自らの内面をえぐるかのように吐き出すコンプレックスを武器にした“負の感情から生まれる反骨精神”というパワー。そこに絡み合う天性のメロディアスなポップ性を生み出す才能。ロックスターでもラップスターでもなく、優れた音楽を生み出す表現者として生まれ持った類いまれなるポップセンス。インディーズで活躍する未完の大器、電波少女に注目して欲しい。

電波少女
電波少女

photo by 新倉映見

電波少女 オフィシャル・サイト

http://denpagirl.com/

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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