「さばきのアーティスト」久保九段が「根絶やし流」永瀬王座に挑む――第68期王座戦五番勝負展望
永瀬拓矢王座(27)に久保利明九段(45)が挑む第68期王座戦(日本経済新聞社主催)五番勝負は9月3日、神奈川県秦野市「元湯陣屋」で開幕第1局が行われる。
タイトル戦では久々となる居飛車党(永瀬)と振り飛車党(久保)の興味深い対決となる。データを基に勝敗と展開を予想してみた。
<王座戦五番勝負日程>
第1局 9月3日 神奈川県秦野市「元湯陣屋」
第2局 9月9日 京都府京都市「ウエスティン都ホテル京都」
第3局 9月24日 宮城県仙台市「仙台ロイヤルパークホテル」
第4局 10月6日 兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」
第5局 10月14日 山梨県甲府市「常磐ホテル」
データでは永瀬王座有利
<永瀬王座の最近10局>※相手の肩書は対局当時。未放映のテレビ対局を除く
7月12日 棋王戦本戦
対横山泰明七段 ○
7月19日 叡王戦七番勝負第4局
対豊島将之竜王・名人 ○
7月23日 叡王戦七番勝負第5局
対豊島竜王・名人 ○
7月30日 順位戦B級1組
対木村一基王位 ○(千日手指し直し)
8月1日 叡王戦七番勝負第6局
対豊島竜王・名人 ●
8月6日 棋王戦本戦
対千田翔太七段 ○
8月10日 叡王戦七番勝負第7局
対豊島竜王・名人 ○
8月20日 王将戦2次予選
対久保九段 ○
8月27日 順位戦B級1組
対深浦康市九段 ○
8月29日 将棋日本シリーズ
対久保九段 ○
<久保九段の最近10局>※相手の肩書は対局当時。未放映のテレビ対局を除く
7月23日 竜王戦決勝トーナメント
対佐々木勇気七段 ○
7月27日 王座戦本戦準決勝
対大橋貴洸六段 ○
7月30日 順位戦B級1組
対深浦康市九段 ●
8月3日 王座戦挑戦者決定戦
対渡辺明二冠 ○
8月7日 棋王戦本戦
対牧野光則五段 ○
8月12日 竜王戦決勝トーナメント準決勝
対丸山忠久九段 ●
8月14日 王将戦2次予選
対大石直嗣七段 ○
8月20日 王将戦2次予選
対永瀬二冠 ●
8月27日 順位戦B級1組
対丸山九段 ○
8月29日 将棋日本シリーズ
対永瀬二冠 ●
最近10局の成績を比較すると永瀬王座(叡王)は9勝1敗と絶好調。並行して戦っている叡王戦七番勝負でも、豊島竜王の挑戦を受け3勝2敗(2持将棋、1千日手)と防衛まであと1勝としており、流れの良さを感じる。
久保九段も本棋戦の挑戦者決定戦で渡辺・現三冠(名人、棋王、王将)を破るなど勢いはあるが、直近6勝4敗と永瀬王座の数字には及ばない。
居飛車対振り飛車の最新型に注目
両者の直接対決は過去5局あって永瀬王座の4勝1敗。初対戦(2014年2月棋王戦本戦・永瀬勝ち)で相振り飛車になった以外はすべて居飛車と振り飛車の対抗形。もちろん飛車を振ったのは久保九段で、三間飛車、四間飛車、中飛車、向かい飛車とさまざまな筋に振り分けている。
データからは持将棋や千日手を苦にしない粘り強さと、受けつぶしを得意とし「根絶やし流」の異名を持つ永瀬王座が有利に思えるが、華麗な指し回しから「さばきのアーティスト」と呼ばれトップ棋士の中では数少ない振り飛車党の久保九段も長期戦での二枚腰には定評がある。一局一局の内容は接戦必至だ。
戦型は久保九段先手なら中飛車、後手なら四間飛車か三間飛車が中心の選択となり、振り飛車の最新研究をぶつけてくるだろう。
永瀬王座は居飛車でじっくり守りを固める持久戦を選び、中盤の長いねじり合いが予想される。