「必要な物がスーパーにない」買いだめに殺到するNYの人々(2週間前と今)
Updated: 米メディアで「パニック」という言葉がよく使われているが、ここ数日実際に様子を見て、人々に冷静さがあると感じている。目が血走り商品に押し寄せて奪い取るようなイメージのパニックではなく「万が一のための準備で買いだめをする(不安を抱えた)多くの人々、行列」という言葉の方がより的確だと感じたので、そのように加筆、修正しています。
3月1日、COVID-19(新型コロナウイルス)の初の感染者がニューヨーク市内で確認されてから、その数が100人を超えたこの週末。ブルックリン区の大型量販店を訪れ驚いた。
2週間前には潤沢にそろっていたトイレットペーパー売り場の一角がごっそりなくなっていたからだ(写真上で右側に見えるものはペーパータオル類)。ほかのスーパーにも、オンラインにももうどこにもない。
紛れもなく、コロナウイルスによる今後の影響(自宅隔離、生産や物流のストップなど)を心配し、人々が買いだめに走った結果だ。
私が近くの店で12ロール入りのものをレジで購入する際、(3月1日からプラ製レジ袋が廃止されたことで)「これより大きなロール束なら頭上に載せて持ち帰るべきか」と店員と冗談を言い合ったのは今月10日のこと。つい数日前だ。その時までは市場にあった。売り切れたのはごく最近だろう。
この週末、スタッフに入荷状況を聞くと「わからない。私たちもその情報を知らされていないの」と気まずそうに答えが返ってきた。(*Updated: 一部商品は現在入荷中)
水売り場もこの通り。
2週間前、下記のような記事も書いた。この頃から「パニックに陥った」とする買い物客が米メディアで話題にはなっていたが、それでもマスク以外の必要な物は「まだ」あったのだが。
もぬけの殻になった店内
ニューヨークタイムズ紙は3月13日付けで、このように報じた。「Panicked Shoppers Empty Shelves as Coronavirus Anxiety RisesThe scene inside one crowded store」(コロナウイルスの不安が高まり、買い物客がパニックに陥り店に殺到)
記事によると、この現象はニューヨークのみならず、カリフォルニア州でも起こっている。記事には、列の割り込みなどでいざこざになった客同士が、日本の110番にあたる911通報をしたとある。それだけ人々がイライラし、心が消耗しているのだろう。
ただし、物がまったくないわけでもない。市内のほかの地区に住む友人の情報では、冷凍食品や肉類、缶詰もほぼ品切れだと聞くが、この店には今の所まだある。また、野菜やフルーツ、チーズ、卵、ハムなどの加工食品、菓子類、ソーダ類は豊富にそろっていた。(翌日は卵も売り切れ)
ただ、2週間前と今とで状況が違うように、これらの品ぞろえについても今後どうなるのかはまったく見えてこない。
人々の行動は、この2週間で明らかに変わった。
頻繁にサニタイザー(消毒液)を使用する人、地下鉄の手すりやスーパーのレジのボタンにティッシュを使って直接触れないようにしている人。
憎悪犯罪や差別とも取れるアジア系の人々をターゲットにした問題について、先週は立て続けに耳にした。
ブルックリンでは13日夜、コロナウイルスに関連した市内初の死者が出た。82歳の女性で肺気腫の疾患を抱えており、3日から入院していたようだ。また14日夕方には州内で2人目の死者の発表もあった。(65歳男性、ロックランド郡)
物資の足りていない物寂しげなスーパーの中を歩く。肉を捌いて切り分けるブッチャーブースの中からスタッフ同士の会話が聞こえてきた。楽しそうに冗談を言い合い、大声で笑い合っている。その姿に一瞬、心が癒された。
(Photos and text by Kasumi Abe) 無断転載禁止