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無人離島が危ない!虎視眈々と狙われる日本の安全と平和

安積明子政治ジャーナリスト
美しい沖縄の海が外資に買われる?(写真:イメージマート)

中国の女性投資家が無人島を買った?

 沖縄本島の北側に位置する伊是名島は、琉球王国の王家であった第二尚氏の発祥の地だ。その伊是名島に寄り添うように、南側に屋那覇島という広さ約74万の無人島がある。ビーチはきめ細かな砂で覆われており、キラキラと揺れる水面の下に見えるサンゴ礁は、まるでこの世の天国のようだ。

 この美しい小島が、いま大きく注目されている。今年1月に中国の女性投資家が、まるで自分が屋那覇島を全面的に所有しているかのように、動画に上げたことがきっかけだ。その動画はまずは中国で話題となり、日本でも「中国に国土が奪われかねない」との懸念の声が高まった。

 実際に屋那覇島の半分を2021年2月に購入したのは、東京都港区に事務所を構える中国系の商事会社で、女性投資家はその関係者と思われる。会社のHPには「優良物件への積極的な投資を行っています」と業務について記載され、「直近では沖縄県の屋那覇島取得して現在リゾート開発計画を進めております」と謳っているが、1968年9月に設立したその会社の主な業務は貸事務所業で、前期の売上は1500万円にすぎないのだ。なおリゾート開発にはホテルマーケット調査などの他、都市計画法第29条などに基づく開発行為許可を取得しなければならないが、そもそも水道も電気もガスもない離島を自力で整備できるのか。

買われる日本となすすべのない政治

 コロナ禍の3年間は影を潜めていたものの、ここ最近の円安やその経済力を背景に、中国資本が行う〝日本買い〟は凄まじい。たとえば林野庁は外国資本が水源地確保のために購入したと思われる森林取得の実態のデータを集積・公表しているが、2006年から2021年までに「居住稚が海外にある外国法人または外国人と思われる者」が取得した森林は2614haに及び、これに都道府県から報告された「国内の外国資本と思われる者による買収」を加えると、5851haにも上っている。

日本の自然が買われていく
日本の自然が買われていく写真:イメージマート

 こうした「日本買い」は健全な土地利用を損なう恐れもある上、安全保障上の懸念もある。というのも、屋那覇島は米中攻防の最前線といえる第一列島線の上にあり、九州と台湾の中間に位置する。さらに嘉手納基地から約60キロ、米軍海兵隊の補助飛行場のある伊江島から約23キロと遠くない距離にあるからだ。

 にもかかわらず、松野博一官房長官は2月13日の記者会見で「領海基線を有する国境離島または有人国境離島、地域離島に該当するものではない」として、重要土地利用規制法の適用を排除した。高市早苗経済安全保障担当大臣も14日の記者会見で、「屋那覇島に関しては、法律の対象にならない」と述べている。

 だが2人の閣僚がこのように発言したからといって、屋那覇島を中国系資本が買収したという行為について、日本政府が「合法だ」と〝ポジティブなお墨付き〟を与えたと解すべきではない。そもそもこの問題の根底に「安全保障」と「法律の守備範囲」との乖離が存在することが明らかにされたに他ならない。端的に言えば国の防衛に、政治家が気づくことになかった大きな穴があったということになる。

 しかもこうした「防衛の穴」を狙うことで、所有権を持つ外国資本は大きな経済的利益を得ることができるはずだ。日本の法制度では所有権はとてつもなく強い。後手後手にまわった末、慌てふためいた政府の最終手段が、「国有化」のための買い取りになるかもしれないのだ。また冒頭で述べた中国の女性投資家は、アラブの大金持ちが大金をはたいて屋那覇島を買い取る可能性を動画の中で述べている。

島を守り、国を守れ

「人口減少と過疎化が進む現在で、無人離島の問題はいっそう深刻になるだろう」

 このように話すのは、「有志の会」の緒方林太郎衆議院議員だ。実際に八丈島の西約7.5キロに位置する八丈小島では、生活の苦しさや子弟の教育に対する不安などから、1969年に全島民が離島を決行。またかつてはリン鉱石の発掘が盛んで約2000人が住んでいた沖大東島も、第二次世界大戦終結前に無人化した。

 しかし安全保障的に見て、このような離島の価値は小さくない。たとえば沖大東島は戦後、米海軍の射爆場になり、2015年からは自衛隊が共同使用することに決まった。また無人離島ではないが北大東島には、航空自衛隊を配置する予定がある。

「(北大東島は)まさに中国の第一列島線と第二列島線のちょうど真ん中くらいにある。そこにレーダー基地など自衛隊の施設を置けば、中国への牽制力を高めるという意味で重要性が高いのではないか」

 緒方氏は2月15日の衆議院内閣委員会でこのように発言した。2018年に策定された「中期防衛力整備計画」でも、「太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域における防衛能力の総合的な向上を図る」と宣言しており、太平洋へ進出しようとする中国に対して北大東島が有している戦略的な価値は高いのだ。

 同様に、米シンクタンクのCSISが1月9日に発表した「2026年に中国が台湾を侵攻する」というシナリオの下では、屋那覇島が持つ戦略的価値は俄然高くなる。九州から台湾に伸びる日本のライフラインを、その中間点でぷっつりと断絶させてはならない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。