伊達&ヨネックスJrプロジェクト2期生が卒業! 伊達さんが涙声で贈ったメッセージとは
元プロテニスプレーヤーの伊達公子さんが、生涯契約を締結しているヨネックス株式会社と組み、2019年1月に発足させた、日本女子ジュニア選手を対象とした育成プロジェクト「伊達公子×ヨネックスプロジェクト~Go for the GRAND SLAM~」は、2期生の約2年間におよんだ全8回のジュニアキャンプを終え、4月12日に卒業セレモニーが、北とぴあ(東京・王子)で開催された。
卒業を迎えたのは、林妃鞠、木下晴結、網田永遠希、木河優、添田栞菜、岸本聖奈、古谷ひなた、石井心菜、以上8名だ。ただし、木下と木河と古谷は、大会遠征のため欠席した。
セレモニーでは、伊達さんをはじめコーチやトレーナーに、2期生から感謝の気持ちを込めて花が贈られ、2期生を代表して添田が感謝の言葉を述べた。
「世界のトップを経験したコーチ陣の皆さんから貴重なアドバイスをいただいたり、全国のトップであるプロジェクトメンバーからたくさんの刺激を受け、自分自身の成長につなげることができました。私は、この2年間海外の試合に挑戦したり、ひとりで行動したり、たくさん初めての経験をしてきました。そこでは大変なことの方が多かったですけど、良いことだけでなく、悔しいことや大変なことからも多くのことを学び経験し、成長につなげることができました。これらからも毎日を大切に、日々努力を重ね、目標を達成できるよう頑張ります」
ジュニアプロジェクトの目標は、ジュニア選手をグランドスラム・ジュニアの部に出場させることだが、新型コロナウィルスのパンデミックが続いていた中ではあったものの、2期生の活動中に、プロジェクトとして初めて目標を達成する選手が出現した。
木下が、2022年オーストラリアンオープンのジュニアの部で、予選を勝ち上がって本戦出場を成し遂げたのだ。その後木下は、グランドスラムでは5大会連続で本戦出場を成し遂げており、グランドスラム4大会すべてに出場した。さらに、2023年オーストラリアンオープンのジュニアの部で、齋藤咲良と組んだダブルスで準優勝を成し遂げた。
また、添田は、2023年オーストラリアンオープンのジュニアの部で初めて予選に出場した。
1期生でのプロジェクトでは、目標を達成することができなかったので、2期生での目標達成は、育成プロジェクトとして大きく前進できたことを意味するが、伊達さんは次のように語っている。
「2期生で実現できるジュニアが出てきたというのは、想像以上に早かった。それはタイミングと縁もあった。木下さんは、コロナ禍というタフな状況の中で、しっかり練習を積み重ねたことと、反対にコロナ禍だからこそそれをうまく使ってステップアップできたと思います。
(2期生のキャンプでは)いろんなセミナーとか、オンコートでボールを打つ以外にずいぶんと時間を割いてきた。特に、パスウェイ(進路)ということに関して、じっくりと向き合ったことが、ジュニアにしっかり伝わってきたのかなと。自分たちの伝えたいことが、少し伝わったのかなと、彼女たちの言葉からすごく感じられたのがよかった。
やりたいこと、伝えたいことがちゃんと伝わったのがわかったからこそ、自分の中に感情としてあふれてきた部分があるのかなと思いますね。
本当に目標がすごく明確になった。一生懸命やる子は、一生懸命やっていると思うんですけど、その方向は、時間を費やせばいいというものでもないし、質だけでもまただめだし。自分の欠けている位置や目指す方向をしっかりと示せたということが、2期生の中でやろうとしたことだし、やりたかったことだし、それがしっかり伝わったのかなと感じました」
木下(ITFジュニアランキング28位、4月10日付け)は、2022年ウィンブルドンのジュニアの部では3回戦まで進出。最近では、16歳ながらジュニアランキングではなく、WTAランキングを上げるための試合にもトライしている。4月10日の週に開催され、プロ選手も出場するW25大阪大会(賞金総額2万5000ドル)でプレーするため、卒業セレモニーを欠席したのだ。プロジェクトメンバーの先頭をきって結果を残した木下を、伊達さんはどう評価しているのだろうか。
「本当に想像以上に、一つどころか二つ三つとステージを上げて戦えるレベルに来ている。その中で、もう一度しっかりと彼女が確立するために必要なことが見えてきているのかなと思う。今回試合で参加できなかったけど、木下さんだけに限らず、このプロジェクトに関わった子たちは、ずっと気になるし、ファミリーとしてしっかりサポートをしていきたいという気持ちもあるので、コンタクトはとりつつやっていきたい」
伊達さんが、一人ひとりに手渡した卒業プレートには、“夢は夢で終わらせない”というメッセージが記されており、2期生へのはなむけの言葉となった。
卒業というひと区切りではあるが、ジュニアの試合や遠征は、これからも続くわけで、乗り越えなければいけない試練もたくさんあるだろう。ましてやプロテニスプレーヤーになるのであれば、覚悟も必要だし、厳しい練習とトレーニングをさらに積み重ねて、世界の舞台を目指さなければならない。
試合に負けて悔しい思いを何度もするだろうし、悩みもがくこともあるだろうけど、そんな時こそ、2期生としての約2年間の活動や、一緒に厳しい練習を積んだ2期生の仲間を思い出すべきなのではないだろうか。共に世界の高みを目指す同志がいることを思い出せば、心の底から気持ちが振るい立ち、体の中から力がわき起こってくるはずなのだ。
プロを目指すのであれば、ジュニア時代は一つの過程であり、結果がすべてではないのだが、それでもジュニア選手から将来に向けて何らかの良いサインが発せられるかどうかは、やはり大切であり、木下をはじめとした2期生たちが残した足跡は、日本女子テニスの明るいきざしとしてとらえたい。
「これからもっと強くなってほしいという思いも強いですし、私たちを本当に超えてほしいなという思いでずっとやってきている」と涙声でメッセージを贈った伊達さんの願いを受け、今後、2期生が卒業してからどんな活躍を見せてくれるのか。未来の主役は彼女たちなのであり、その成長を心待ちにしたい。