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災害時にスポーツは無力なこと、復興や再生の過程でスポーツが力になれること、錦織圭が思うこと【テニス】

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
チャリティーへの思いを語った錦織(写真すべて神 仁司)

 地震や豪雨などの災害は防ぎようがなく、 その時スポーツは無力だけれども、 復興や再生の過程において、 スポーツは、力になれることがあるはず――。

 それを理解して、錦織圭をはじめ、 国枝慎吾、ダニエル太郎、望月慎太郎、坂本怜、内田海智、石井さやか、小池愛菜、上地結衣、小田凱人が賛同して有明コロシアムに集結し、12月8日に、「ドリームテニスARIAKE」が開催された。

「ドリームテニスARIAKE」は、2011年に東日本大震災のチャリティーイベントとして始まったが、今回、新型コロナウィルスのパンデミックを挟んで実に6年ぶりの開催となり、2024年1月の能登半島地震や9月の奥能登豪雨のチャリティーイベントとして行われた。

 約1万人の観客が見守る中、錦織 vs. ダニエルのシングルスや、国枝 vs. 小田の車いすテニスシングルスや、ダブルスのチーム対抗戦などが行われ、公式戦と違ったアクロバティックなプレーでファンを魅了した。

 イベントの収益の一部は、日本テニス協会の能登地震震災復興支援事業に寄付され、イベントの最後に寄付金贈呈式が行われた。

イベントの収益の一部は、日本テニス協会の能登地震震災復興支援事業に寄付され、イベントの最後に寄付金贈呈式が行われた
イベントの収益の一部は、日本テニス協会の能登地震震災復興支援事業に寄付され、イベントの最後に寄付金贈呈式が行われた

 

 今回のイベントに参加した錦織は、チャリティーへの思いを改めて語ってくれた。

「スポーツ選手として、まずはスポーツとテニスの普及とお客さんに楽しんでもらえること。今回来られなくてオンラインで見てくださった人たちもいると思います。

 選手たちもこれだけ忙しい中、チャリティーの思いで来てくれるのは本当に有難いですね。僕が有難いと言うことでもないですけど、みんなそれぞれに思いがあって、来てくれていると思う。

 そうですね。(災害などが)防げないというと、僕も、フロリダのタイフーンで結構家をやられたので、こんなにやっぱり大変なんだというのは身に染みて感じました。水が家に入ってきて、泥水が家に入って修理が大変だった。最近、自然災害が増えてきているので、どうしようもないですけど、そういうところで助け合えたらいいなと思います」

 今回の寄付が、まだまだ能登で普段の生活にも苦しむ人々の復旧への一助になることを願いつつ、一日でも早い復興が実現し笑顔を取り戻してくれることを祈りたい。

チャリティーに賛同して、多くの選手が集まった
チャリティーに賛同して、多くの選手が集まった

錦織は、35歳で2025年シーズンに臨む

 一方、錦織の選手活動に目を向けると、2024年シーズンは、けがから復活への道のりとなり、ATPランキング106位(12月9日付)まで戻した。「大変な1年ではありましたけど、終わりにまぁまぁの結果も出て、100位(台)に戻ってきて、何となくまたスタート地点に立ったなという思いはある」と振り返った。

「来年に向けていい準備はできたかな」と語る錦織は、12月29日に35歳になるが、ベテランになってもまだまだ2025年シーズンへのモチベーションは高い。2025年1月に開催されるテニス4大メジャーであるグランドスラムの初戦、オーストラリアンオープンにはプロテクトランキングによる本戦入りが決まり、4年ぶりの出場となる。

 35歳になっても、錦織が現役を続行してくれることに、正直驚きを感じると同時に、嬉しさも込み上げてくる。まずはツアーレベルでどれだけ活躍できるのか。そして、グランドスラムの本戦でどれだけ躍動できるのか。引き続き錦織の非凡なテニスを見ることができる幸せをかみしめたい。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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