石破首相、応援演説で北海道入り 鉄道の相次ぐ廃止に疑問を提示
石破首相は、2024年10月18日、北海道入りし衆議院議員選挙で接戦となっている札幌市や石狩市などの道内5カ所で、自民・公明両党候補の応援演説を行った。報道によると、石破首相はこの日、札幌市内のホテルで開かれた演説会で、JR北海道の問題に触れ、「状況が厳しいから、路線を減らす。本当にそれでいいのだろうか」と疑問を呈した。さらに石破首相は、「札幌近郊の通勤路線があり、物資輸送の路線がある。そして国境地帯を走る」と北海道の鉄道の重要性を強調。「北海道の魅力を最大限に引き出していくため、そうしたインフラ整備をもう一度きちんと見直していきたい」と述べたという。
JR北海道では、この3月31日限りで根室本線の富良野ー新得間を廃止した。この路線は、石勝線災害時に札幌方面と帯広・釧路方面を結ぶ特急列車や貨物列車の迂回ルートとなりうる路線で、沿線自治体からも災害時の迂回ルートや観光列車の新たなルートとしての活用が期待できることを理由に、存続を望む声が上がっていた。この8月31日に豪雨被害により4日間にわたって不通となったときには、特急列車のバス代行輸送は行われず、貨物列車についてもトラックでの代行輸送ができたのはごく一部の量であった。北海道でのこれまでの「攻めすぎた廃線」の弊害が物流面でもあらわれ始めている。
日本政府は今後、10年間で鉄道貨物の輸送量を2倍に増やしていくという方針を掲げており、防衛省も自衛隊の装備品輸送について鉄道貨物の利用を拡大していきたいという意向を持っている。特に自衛隊については鉄道の日となる10月14日に、低床形コンテナ車「コキ73形」を使用した96式装輪装甲車の鉄道輸送が行われ、大きな話題となったばかりである。こうしたことからも、災害時の迂回ルートも含めて、安定的な鉄道貨物輸送を行うためには、富良野ー新得間など廃止となってしまった路線の復活も考えていく必要があるだろう。
北海道庁が主導して廃止の方針を決めてしまった北海道新幹線の並行在来線「長万部ー小樽間」についても、貨物列車の迂回ルート確保や、新幹線の2次交通として観光振興に活用するという観点からも、廃止の白紙撤回が必要ではないだろうか。
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