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新1万円札がダサい理由を眼科医が解説

平松類眼科医
(写真:アフロ)

ダサい理由はユニバーサルデザイン

2021年9月1日新デザインの1万円札が印刷されました。

その実物が披露され、ネット上ではダサいなどの意見も出ています。

一方で識者からはユニバーサルデザインでよい。という意見も見られます。

ダサいかどうかは是非見て判断してくれればと思います。

ユニバーサルデザインとはなんのでしょうか?

ユニバーサルデザインとは年齢や障害に関わらず使いやすいデザイン

という事です。今回の新札でいうと高齢者・視覚障害の方・色覚障害などの方にも

配慮されているように見えます。

総務省統計局によると※日本人の人口は1億2586万人

(2020年9月15日現在)、そのうち高齢者が3617万人と全体の26.7%を占め過去最高を更新しています。視覚障害者数は330万人、色覚障害は男性の5%、女性の0.4%を占めます。そのため対応を配慮する必要が増しています。

眼科医の視点から高齢者と視覚障害の方々などがどう見えるのか。

ダサい新札がどのように対応しているのかを見ていきたいと思います。

高齢者・視力が悪い人にはどう見えるのか?

高齢者の多くは白内障です。白内障は80歳以上の人の99.9%がなる、※※

と言われていて人間は必ずなるといっても過言ではありません。白内障の見え方は一般的には白くかすみがかったようになります。「単純に視力が悪くてぼやける」のとは違います。

白内障になると視力が下がる前に「コントラスト感度」が下がります。「コントラスト感度が下がる」とは色の差がはっきりしていないと読み取りにくくなるという事です。

例えば黒地に青であったり黄地に赤の文字はコントラストがはっきりしていないので見にくいです。

左は黒字に青で見にくい、右側は黒字に白で見やすい

これがコントラストの差

そのためコンロの青い火に気づきにくくやけどをしてしまうという事もあります。新一万円札の場合は福沢諭吉の一万円札と比較すると数字のところが以前よりコントラストがはっきりしている事がわかります。

 ユニバーサルデザイン的な考え方を普段の生活上で見てみましょう。

例えばご飯を食べる時です。よくあるのは白いお茶碗に白いお米を入れます。これはNGです。なぜならば白地に白というのは見にくいからです。あなたもご飯粒が意外と残っていたという経験はないでしょうか?一方黒いお茶碗に白いお米というのは差が出て見やすいです。これは高齢者に限らず若い人も黒い茶碗に白いお米の方がより映えるのでおいしさも感じやすくなるのでお勧めです。

写真:アフロ

 また字が詰まっていると見にくくなります。従来の1万円札と比較すると10000という数字が詰まっていないという事が見て取れると思います。これはユニバーサルデザインの書体を使っています。昔と違い現在は教科書もユニバーサルデザインの文字で作られているものが増えています。

UDデジタル教科書体などで知られるいくつかの文字がありますが多くの人に知ってほしい内容を扱うにはこのような書体を使うのもおすすめです。何が違うかというと例えば従来の教科書体という書体は「とめ・はらい」などどう書いたらいいかがわかるというのがメリットである一方、読みにくいというデメリットがありました。

現在のUDデジタル教科書体の場合は「とめ・はらい」はわかりにくいですが書体として認識する視認性が向上しています。

これ以外にもユニバーサルデザインのフォントは多くUDフォントとしてあるので是非活用いただければと思います。

1の文字も10000円と1000円では違います。一万円では上がでていますが千円では出ていません。このため視野障害があり全体の数字がわからない人がみてもすぐに一万円か千円かの判断をしやすくなります。

よく高齢者や視覚障害の人は手の感触でわかるからいいと思われがちですがそれは結構難しい事です。

例えば現在のお札でも見ていただければと思います。

千円札より五千円札、五千円札より一万円札の方が大きく作られています。

そして下側に凹凸があって

〇 千円札には一本の棒

〇 五千円札には丸

〇 一万円札にはL字型の棒

があります。

ぜひ一度自分で触って確認していただければと思います。けれども注意してもその違いには気づきにくいです。高齢になったから、視覚障害になったからとこの記号を頼りにお札を見分けるのは困難なのです。また視覚障害というと全く見えないと思われがちですが多くの視覚障害の方は視力が大きく下がっていたり、視野の欠損があるものの白杖を使わずに生活できます。

この新札をきっかけにユニバーサルデザインを一般企業や個人・学校などあらゆるところで取り入れていただいて住みやすい社会ができればと願っています。

※総務省統計局統計 No.126 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで- 1.高齢者の人口

※※佐々木洋: 人種、生活環境の異なる4地域での白内障疫学研究. 日本白内障学会誌 13: 13-20, 2001

眼科医

医師・医学博士・眼科専門医・昭和大学兼任講師。海外および全国(北海道から沖縄まで)から患者さんが集まっている。登録者6万人以上のYouTube「眼科医平松類チャンネル」にて日々目の健康情報を発信。日経Goodayなどに連載。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等メディアにても情報発信をおこなっている。著書に「1日3分見るだけでぐんぐん目が良くなる!ガボール・アイ」「緑内障の最新治療」など多数あり、累計50万部以上。

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