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合わない眼鏡が不調の原因に? 何を見る眼鏡なのか、はっきりさせよう

平松類眼科医
(写真:アフロ)

 2022年10月7日消費者庁から「眼鏡の不適合による体調不良等に注意! - 眼鏡は処方箋をもとに作製し、目の健康を守りましょう」とされる注意が喚起されました。*

 合わない眼鏡を作製され、その眼鏡を掛けることで頭痛、めまい、目の不調等が生じた等との情報が平成 24 年から令和4年8月末までの約 10 年間に238 件寄せられています。眼鏡が合わなければただ見にくいだけでは?と思われるかもしれませんが様々な不調の原因となります。どういう不調がおきるのか、どう対処すればいいのか眼科医が解説します。

〇どのような不調が多いのか?

 自覚症状等としては目の不調が一番起きそうな気がします。しかし実際一番多かったのは「頭痛」で 82 件でした。なぜ眼鏡が合っていないと頭痛がするのでしょうか?大きな原因として眼精疲労があります。眼精疲労というと目が疲れるだけ、と思われるかもしれません。しかし、「目の疲れ」と「眼精疲労」は違います。

 「目の疲れ」はまさに目が疲れたというもの。しばらく休む、睡眠をしっかりとる。など、休息をとることで回復します。また症状としても目の疲れであってそれ以外の症状があるわけではありません。しかし「眼精疲労」となると症状が重くなります。「目の疲れ」はもちろんのこと、体の不調をきたすのです。その代表がこの頭痛になります。頭痛以外にも肩こりやイライラ感など全身的な不調がおこります。また、眼精疲労の場合は休息をとる事ですぐに治るものではありません。1~2日目を休めた。1~2日十分な睡眠をとった。そのぐらいでは回復しないものを眼精疲労といいます。なぜそうなってしまうかというと長い期間の強い目の疲れによって引き起こされたものだからです。とはいえ頭痛ぐらいならと思うかもしれません。しかしそれにはとどまりません。

 「吐き気・めまい・気分不良など」が 78 件あります。合っていない眼鏡をかけてくらくらしたことはないでしょうか?その症状が表れて吐き気やめまい、気分不良となってしまうのです。眼鏡をかけてすぐに症状がでればだれでも眼鏡が原因であるとわかります。はたまた、眼鏡をかけてすぐにくらくらしたり、見にくければわかります。しかし、ちょっとは見にくいがそこまでつらくはない。短い時間使っている分にはくらくらしない。そのぐらい大きくない眼鏡の問題でも不調を引き起こしてしまうのです。ちなみに、わかりやすい「疲れ目、目が痛いなどの目の不調」が 70 件という数です。

写真:アフロ

〇どういう原因で不調がおきるのか?

 不調が起きる原因は「レンズの度数などが不適」が 126 件、次に「フレームの調整が不適」が 51 件となっています。つまり最も多いのはレンズの度数などの問題です。ではなぜそうなってしまうのか?眼鏡店で眼鏡を合わせる人はすべての人が何らかの資格を持っている人と思っていないでしょうか?眼鏡を合わせるための国家資格ができたのは令和3年8月13日の事です。眼鏡作製技能士という資格ができましたがその資格を持っている人はごく一部となります。もちろん資格がなくても知識がある人もいますがそうでない人も多くいます。そのために合っていない眼鏡を作るということがあるのです。合っていないメガネとしては遠くが見える度数に合わせすぎてしまうという事がよくあります。お客さんとして眼鏡店にいって眼鏡を作ると、やはり眼鏡を作って遠くを見るという方が多い。となると遠くがどのぐらい見えるかを重視しすぎて、その眼鏡で目が楽かという視点がぬけおちてしまいます。

 また、本来は眼鏡作成をいきなりするのではなく目の病気がないか眼科で検査をしてから眼鏡を作成するほうが望ましいのです。老眼と思っていたら緑内障だった。というように病気が隠れていることがあるからです。

 そこで一つの方法としては眼科にいって眼鏡の処方箋をもらう事です。処方箋をもらって眼鏡店にいけば少なくとも度数に関してはある程度合っている眼鏡にすることが可能となります。しかし、眼鏡を作るうえでは気を付けなければいけない点があります。

〇何を見るのに使う眼鏡かをはっきりさせる

 例えば老眼鏡を作るとき「老眼鏡が作りたいです」そういえば自分に合ったものができる。そう思っている人が外来でも多くいらっしゃいます。けれども残念ながら老眼鏡が作りたい。というだけでは思ったものが出来ない事があるのです。なぜでしょうか?

 それは老眼鏡を作る目的が人によって違うからです。コンピューターを使いたいから、本を読みたいから、スマートフォンを使いたいから、楽譜を読みたいから。それぞれ目的によって見る距離というのが違います。例えばコンピューターだと目から40~50cmぐらい先を見ることが一般的です。本を読むなら30cm先、スマートフォンを見るなら20cm先です。コンピューターとスマートフォンでたった30cmの違いだから問題ないだろう。そう思うかもしれませんが比率にすると2倍以上距離が違ってしまうのです。それによって必要なレンズの度数も大きく変わってしまいます。

 また遠くを見るという時も「運転で遠くを見る」のか「日常生活で買い物や歩く範囲で遠くを見る」のでは距離が違います。運転で遠くを見るようにしっかり合わせると買い物の時のちょっとしたものが見にくくなるなどして、きつく感じてしまう事があります。

 ですから自分が何の目的で何を主に見るような眼鏡を作りたいのか?というのをしっかり伝える事で思い通り、かつ不調がおこらない眼鏡を作ることが可能になるのです。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_064/assets/consumer_safety_cms205_221007_01.pdf

眼科医

医師・医学博士・眼科専門医・昭和大学兼任講師。海外および全国(北海道から沖縄まで)から患者さんが集まっている。登録者6万人以上のYouTube「眼科医平松類チャンネル」にて日々目の健康情報を発信。日経Goodayなどに連載。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等メディアにても情報発信をおこなっている。著書に「1日3分見るだけでぐんぐん目が良くなる!ガボール・アイ」「緑内障の最新治療」など多数あり、累計50万部以上。

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