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ビジネスパーソンが身につけたい睡眠の質を高める、3つの光マネジメント

水野雅浩/健康マネジメント健康マネジメント専門家

■はじめに

先日、健康経営に取り組むIT企業で、「仕事のパフォーマンスを上げる睡眠マネジメント」というテーマで講師をしました。オンラインセキュリティに取り組む企業なので、社員が健康で長く働けるよう健康マネジメントも重要視しています。一方で、コロナ禍を経て、在宅ワークやフレックスな働き方が導入された結果、生活リズムが崩れ、睡眠の質が下がったことが課題でした。

睡眠マネジメント研修の際にも、アラフィフの部長職の方から手が上がり「なかなか眠りにつけないし、途中で起きると、もう一度眠れず、うつらうつらしているうちに、朝が来てしまう」とおっしゃっていました。

企業内での睡眠マネジメントセミナーをすると、多くのビジネスパーソンが、睡眠に満足していない現状に驚かされます。今回は、仕事のパフォーマンスにも直結する、睡眠マネジメントについて、学んでいきましょう。

■アラフィフの睡眠時間が最も低い。

40~50代になると、体に大きな変化が訪れます。体力の衰え、認知機能の衰え、見た目も白髪が増え、顔にはシワが増え、まさにガクンと来るのがこの時期です。そしてその背景には、睡眠時間の低下が大きく関わっています。そしてその背景には、質の高い睡眠を取れているか、いないか、が大きな分岐点となります。

睡眠時間のグラフを見て頂くと分かる通り、全年代でもっとも睡眠時間が短いのが50代です。会社では中間管理職であり、事業拡大の要を担っている年代です。睡眠には、ココロとカラダの疲労回復の役割があります。50代の睡眠不足で恐ろしいことは、疲労回復ができず、慢性疲労になってしまうこと。

軽度の疲労であれば、1~2日休めばもとに戻りますが、慢性疲労になると一週間、長いと1ヶ月休んでもココロとカラダが元の状態に戻らなくなります。私は、「アラフィフの谷」と呼んでいすが、もっとも気をつけて睡眠ケアが必要なのが、この年代なのです。

■睡眠時間6時間が2週間続くと、脳は酩酊状態に

年齢とともに、眠れなくなるのが常だし、みんな寝ていないのだから、私も睡眠時間が短くても大丈夫。とは短絡的に考えないでください。

睡眠時間が短くなることで、気をつけてほしいのが、ただ単に疲労回復が遅れるということだけではなく、集中力、判断力、創造力などの認知機能の低下につながるということ。これはビジネスパーソンにとっては大きなダメージになります。そして、この状態が積み重なり、20年後の認知症につながるのです。

■睡眠ケアに欠かせない3つの光マネジメント

では、睡眠マネジメントとして何をすればよいのでしょうか。睡眠マネジメントには食事、運動、ストレスケアなど、さまざまなアプローチがあります。今回は、見落としがちな「光マネジメント」について学んでいきましょう。

(1)太陽の光

実は、睡眠で最も大切なのが、朝の太陽の光をたっぷり浴びること。その理由は、朝の太陽の光には、体内時計を整える役割があるから。体内時計とは聞き慣れない言葉かも知れませんが、わたしたちのカラダの中には脳を親時計として内臓や筋肉など実に350以上もの子時計が存在することが分かっています。この時計がバラバラに動いていると、体内リズムが崩れてしまいます。朝がぐったりしている、昼も集中力が続かない、夜も深夜なのに眠くならないということが起こるわけです。

体内時計がピンとこなければ、自分のカラダを会社にたとえてみると感覚がつかみやすいかも知れません。あなたの会社で社長は出社しているのに、営業、広報、財務、人事、工場などバラバラな時間で出社をしていたらお客様にも迷惑をかけますし、事業の発展など見込めるわけがないでしょう

朝シャキッとカラダにスイッチをONにするからこそ、夜OFFにすることができるのです。朝起きて顔を洗ったら、その足で、ベランダに行き、窓をあけて太陽の光を浴びましょう。眠気がスーッと引いて、全身の体内時計が正確に時を刻み始めます。

(2)夕方の光

次は、夕方の光です。これは、夕焼けをたっぷり浴びましょう。ということではありません。家の中を夕方を同じレベルまで、ダウンライトにする、ということです。

私達のライフスタイルを見ていると寝る直前まで、部屋の電気をつけ、テレビは常につけっぱなし、手からはスマホが離れることがありません。これらの光はブルーライトと呼ばれ、まさに、太陽と同じ波長を持つ光なのです。

私達の体は、ロボットのようにONからOFFに急には切り替えることができません。ラジオのつまみをゆっくりと回して音量を絞るように、ONからOFFに至る「段階」が必要なのです。それが、夕焼けの光です。

もし家の備え付けの照明機器に光調節機能がないのであれば、ホームセンターなどで間接照明などの購入をオススメします。睡眠前に、家の中をダウンライトにすることこそが、体内時計に、そろそろ眠るための準備を始めるよ。と伝える信号となるのです。

(3)月の光

最後は寝室の光です。

真っ暗にするのか、豆電球をつけるのか、好みが分かれるところです。

一般的には、動物は月の光で睡眠を取っており、真っ暗だと不安を感じると言われています。しかし、結論から言えば、自分が「不安」を感じない状態なら、どちらでも問題ありません。

■夜ぐっすり、朝すっきり目覚めるための一工夫

私が実践している、快眠と目覚めを良くするための3つの工夫をご紹介しましょう。

1)寝室のカーテンは外の光や、防音のためにも、キッチリ閉める。

2)寝室の隣の部屋のカーテンは全開で開けておく。

3)寝室と隣の部屋のドアは少し開けておく。

これによって、夜は光を遮断して、深く眠ることができ、朝になると、隣の部屋から柔らかな光が差し込みます。この朝の光によって徐々に覚醒に向かい、気持ちの良い朝を迎えることができます。私は念の為アラームもセットしていますが、今では朝の光で毎朝、気持ちよく起きています。

光マネジメントを活用した環境設定をぜひ取り入れてみてください。

■最後に

企業内での睡眠マネジメントセミナーをすると、多くのビジネスパーソンが、睡眠に満足していない現状に驚かされます。アラフィフのビジネスパーソンは、まだまだ現役で集中力、創造力、判断力をフル活用して、仕事を通じて社会貢献をしていく立場です。そのためにも脳を回復させる睡眠が欠かせません。さらに、薄目で将来を見渡すと認知症対策も必要です。人生100年時代、脳が健康じゃないと、人生を楽しむことができません。ブレインケアの第一歩は睡眠マネジメントです。ぜひ、1日3回の光マネジメントを取り入れてみてください。

健康マネジメントスクール

水野雅浩

健康マネジメント専門家

健康マネジメントスクール代表。作家・講師。予防医学の専門家。健康経営アドバイザ-。『グローバルで勝つ!30代の太らない疲れない7つの習慣』はアマゾン総合1位。企業・行政・大学で「仕事のパフォーマンスを上げる健康マネジメント」、学習塾で「子供の成績を上げる食事・睡眠習慣」をテーマに講師。著書に『親子で作る健康習慣「本番力」で受験に勝つ』がある。中央大学法学部卒業後、介護サービスに携わり10年間、人の老化と向き合う。その後の香港勤務では海外のビジネスパーソンらが実践する健康投資を目の当たりにする。日本に帰国後、12年、外資系ヘルスケア企業で商品開発の責任者を担う。1975年生まれ。福岡在住。

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